調査レポート
《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【ポスタービジュアル】/2023年上半期
KIQ REPORTでは、半年に一度、映画業界で働く“映画業界人”の記憶に残った<ベスト映画宣伝>を発表しています。
4回目の開催となる今回は、宣伝プロデューサーやパブリシスト、グラフィックデザイナー、ライター、広告代理店担当者、映像ディレクターなど、映画業界人50名に、2023年上半期(1月~6月)公開の映画で、1番記憶に残った【ポスタービジュアル】を聞きました!
完成した1本の映画を世に出すにあたり、“映画の顔”となるポスタービジュアルの存在は非常に重要で、何をどう見せるかで映画の印象、興味度も大きく変わります。宣伝マンがデザイナーと二人三脚で趣向を凝らし、生み出した1枚は、どれも思いのこもった素晴らしいものばかりです!
今回も、さまざまな視点からたくさんの作品が挙がりました! さっそく発表いたします!
<ベスト・アートワーク賞>は、独特な構図とコピーデザインでインパクトを残した『TAR/ター』
2023年1月~6月に劇場公開された映画で、1番記憶に残る【グラフィックアート(ポスタービジュアル)】を聞いた結果、次点に倍以上の差をつけ、もっとも多い票を集めたのは、アカデミー賞ほか多くの映画賞を席巻した、ケイト・ブランシェット主演の『TAR/ター』でした!
主人公を下から捉えたあまり見ない斬新な構図、主演(しかもアカデミー賞女優!)の顔を写さない点に注目が集まり、キャッチコピーにある「狂気」がしっかり感じられる点が理由に挙がりました。
★「タイトルからストーリが想像できませんが、シンプルすぎるビジュアルの奥にしっかりと狂気を感じました。パンドラの箱のような触れてはいけない何かが..」(20代男性・オンライン番組ディレクター)
★「あまり見たことのない角度から人体を撮っており、不気味であると同時に新鮮で目を引く。情報量が過多でなくシンプルなのもGOOD」(30代男性・映画ライター)
★「主演女優の顔を写さず、両手を広げてダイナミックに指揮を執る姿を下から捉える構図が新鮮で、主人公の人物像にも興味が沸いた」(40代男性・映画記者)
★「インパクトが強く、狂気が滲み出ている点に惹き付けられた」(20代女性・WEB編集)
★「画から伝わる躍動感が凄い。ケイト・ブランシェットの顔もわからない構図が思い切っていると思いました。コピーにもある“狂気”が伝わってきました」(40代女性・宣伝プロデューサー)
★「ケイト・ブランシェットなのに顔を見せない潔さと、どこか気味悪さがある感じが一度みたら忘れられない」(40代女性・WEB編集)
今回はなんと、デザインを手掛けたTOHOマーケティング株式会社の青島陽さんより受賞コメントをいただきました。
【受賞コメント】
「数ある素晴らしいポスターの中から「TAR/ター」を選出して頂き、ありがとうございます!
普段からビジュアルを作る際はコピーとデザインを合わせて提案することも多く、「TAR」は個人的にも気に入っているビジュアルなので、評価して頂けて本当に嬉しいです。」
さらに、今回のデザイン・コピー・邦題ロゴについて、それぞれのこだわりポイントまで教えてくださいました!
【デザインについて】
「真っ黒な背景と力強い写真とのコントラスト。この限りなくミニマムなビジュアルに対して、主張しすぎない書体とサイズでレイアウトし、作品の不穏な空気感、緊張感を表現しました。」
【コピーについて】
「リディア・ターという人物が緩やかに転落していく」様子を、端的な言葉で視覚的に再現できないかと考え、ターを表す2文字のキーワードをいくつか羅列するところから始めました。「狂気」の文字を1番際立たせたかったので、縦のグラデーションで配置することで「堕ちていく様」をビジュアルの一部として表現できたかと思います。」
【邦題ロゴについて】
「ターが掲げる左腕が、「栄光」、もしくは逆に「何かにすがりつく様子」を表しているようにも見えたので、その曖昧さを邦題ロゴのデザインに落とし込めないかと考え、「タ」のカーブ部分を、左腕の角度に沿うように調整し、掲げる腕の角度と文字のアウトラインがリンクする形にデザインしました。」
青島さん、おめでとうございました! 次回作も期待しております!
■映画内容を的確にビジュアル化!<これぞ映画の顔で賞>は、ジャンルの異なる洋画3作品
ポスタービジュアル1枚で、映画をどう見せるか、どう注目を引くか、どうコミュニケーションをとるのか・・・そのアプローチ法はさまざまです。今回は、「どんな内容なんだろう?」ではなく「こういう映画なんだ!」というアプローチで、業界人から「映画の内容をうまく表現している」と評価された3作品をご紹介します。
11歳の少女が父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった彼女の視点から振り返るヒューマンドラマ『aftersun/アフターサン』、第95回アカデミー賞で作品賞ほか7冠に輝いた異色のアクションエンターテイメント『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、#MeToo運動につながる調査報道に基づき、社会を動かした女性たちとジャーナリストの実話を描く社会派ドラマ『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』です。
『aftersun/アフターサン』
★「旅先で貰ってきたリーフレット。親に連れていかれた映画のチラシ。私の家の押入れの奥にも眠っている、あの“小さく折られた紙切れ”には、手にした瞬間に当時の感覚を鮮明に蘇らせる不思議な力があると思う。作品の本質を的確に表現した秀逸なデザインだと思いました。」(20代女性・宣伝AP)
★「折りたたんでいた思い出の写真を再び開いたようなデザインが、映画の内容とマッチしているから」(30代男性・動画ディレクター)
★「色味、風合いも含め、とても印象に残る、記憶に残る1枚でした」(30代女性・宣伝)
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
★「映画本編の圧倒的な詰め込み感がうまくビジュアル化されていた」(40代男性・映像ディレクター)
★「予告映像とも相まって普通じゃない感を感じた」(40代男性・営業)
『SHE SAID シー・セッド その名を暴け』
★「小さく描かれている登場人物と天井まで続くような大きい窓が、強大なものに立ち向かう小さな存在という感じがして、作品をよく表していると思いました」(40代女性・パブリシティ)
宣伝は、その映画を知らない人に情報を届け、鑑賞意欲を高めるお仕事ですが、映画内容を知った上で「この作品をうまく表している」と評価されるのも、プロのお仕事ならではですよね! まさに「映画の顔」と言えるポスタービジュアルです。
誘目性が高い白+赤のカラーで記憶に残った<レッド・コンシャス賞>はカンヌ受賞の2作品!
さて、1年前に発表した2022年上半期編でも色彩が印象的なポスターを紹介しましたが、今回は「赤」に目を引かれたポスターが2作品挙がりました。どちらもカンヌ国際映画祭で受賞を果たした、是枝裕和監督作品『怪物』と、イエジー・スコリモフスキによる現代の寓話『EO イーオー』です。
『怪物』
★「『怪物』というタイトルと、背景の赤がインパクトが強く、目に入ります。キャストの写真も多すぎず良いです」(40代女性・WEB制作)
★「『怪物』のタイトルの真ん中に入った「だーれだ」のキャッチコピーが、シンプルながらタイトルとセットできちんと記憶に刷り込まれた気がします」(30代男性・マーケター)
『EO イーオー』
★「シンプルながら、真っ赤な背景にロバというビジュアルがインパクトがありました」(30代女性・ライター、編集)
赤は誘目性が高い(思わずみてしまう、意識されやすい)色だそうで(※参照)、色使いひとつで記憶に影響があるのですね。ちなみに、今回挙げられた作品の中では、前述の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、後述の『AIR/エア』も赤を基調としたデザインでした。
色の効果について調べてみると、実は色や組み合わせによっていろんな効果があるようです。これは興味深いですね・・・編集部では、近日中にぜひデザイナーさんや印刷会社の方に、そのあたりを詳しく聞いてみたいと思います!
まだまだある!業界人の記憶に残るポスタービジュアル
今回も多くの業界人の方からさまざまな記憶に残るポスタービジュアルを挙げていただきました。選んだ理由も合わせて一挙ご紹介します。今後の参考になるコメントもお見逃しなく!
『Blind Mind』
★「個人的に1枚絵のポスターの方が好みですが、3分割がデザインとしてすごく活きていて且つ、目のアップが印象的でした。邦画ですがフランス映画っぽくて好きです」(20代女性・宣伝アシスタント)
『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』
★「古いビルの中での人々は力がないように映し出されている。しかし、彼らを描くために用いられているのは、権威者などを映し出す時に使われるローアングルである。違和感で、より印象的である」(30代女性・宣伝)
『レジェンド&バタフライ』
★「英字タイトルと時代劇のマッチングは、個人的に好き」(50代男性・リサーチ)
『FALL フォール』
★「一眼で面白さが伝わるシンプル IS ベストなビジュアルだと個人的に思うので」(40代男性・デザイナー)
★「見ただけでなんとなくどういう状況か想像がつくが、どうやってピンチを乗り越えるのか気になったから」(20代男性・WEB制作)
『茶飲友達』
★「顔が見えない高齢女性、温かみのあるコピーと色合いで、でもよく見ると下着?ぽく、『何の話なんだろう?』と気になって検索させられました。ポスターを入り口にまんまと公式サイトまで行って情報を取りに行かされました。とても上手なクリエイティブの導線だと思いました」(40代男性・宣伝プロデューサー)
『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』
★「超大ヒットしていた公開当時の想い出が蘇った。肩より上しか見えなかった公開時のビジュアルより、上半身が見えることでより愛の物語が強調されているように感じた」(40代女性・SNS担当)
『#マンホール』
★「メインキャスト全員集合ビジュアルをいつまでも続けてしまう邦画の悪い流れを勢いよくぶち破っていて潔いと思いました」(30代女性・宣伝スタッフ)
『エゴイスト』
★「はじめて見たときに美しいと感じたので」(30代女性・マーケター)
★「シンプルだけど愛の強さを感じるし、キャストを推している感じがしない。これに限らず、シンプルに内容を表しているポスターに惹かれます」(20代女性・ライター)
★「可愛い二人の笑顔のカットなのに、切なさが滲み出ていた」(30代女性・宣伝)
『バンバン!』
★「銃を持ったイイ男とイイ女。もうそれだけで最高じゃないですか。もしこれで背景が爆発してたら額に入れて飾るレベル」(40代男性・編集)
『Sin Clock』
★「バックミラーに写る表情というのがオシャレ」(30代男性・印刷営業)
『いつかの君にもわかること』
★「子供の目線とコピーを見た時に泣ける」(30代男性・印刷営業)
『ICE ふたりのプログラム』
★「目を引いたから」(40代女性・宣伝&パブリシティ)
『映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)』
★「詰め込み重視のビジュアル多い中で潔い。世界観が出てて良い」(40代女性・デザイナー)
『Winny』
★「昨今ありふれた邦画作品のビジュアルとの差異、1シーンを切り取ったビジュアルの中に作品の内容も表れていて、ビジュアルの勢い、強さがあり印象的だった」(30代男性・宣伝)
『シン・仮面ライダー』
★「数少ない部屋に飾りたくなるようなポスター。かっこいい!」(50代男性・リサーチャー)
『わたしの幸せな結婚』
★「目を引いたから」(40代女性・宣伝&パブリシティ)
『ザ・ホエール』
★「良くも悪くも極めて印象的だった。なんとも言えない主人公の表情が興味深かった」(30代女性・マーケティング・リサーチ)
★「インパクト抜群、賞レースにかかったのもありますが、業界外の友達ともこのビジュアルですぐに話が通じた」(30代女性・映画宣伝)
『AIR/エア』
★「ビシッと目立っていた」(50代男性・宣伝P)
『聖地には蜘蛛が巣を張る』
★「まず、アーティスティックな雰囲気が伝わってきて、作品の質も高いんだろうなと感じます。また、このタイトルからして、この女性の表情が何を意味するのだろうと想像が膨らみ、映画への興味が湧きました」(50代女性・ライター)
『ヴィレッジ』
★「何か不穏な雰囲気がポスターから伝わってきました。デザイン面では、能舞台の日本らしい写真と、大きなロゴが見切れたデザインがとても目にとまりました」(40代男性・イラストレーター)
★「能舞台が背景にあるのが斬新、かつキャスト陣の表情や雰囲気も異様で、いい意味で不気味な印象とインパクトがありました」(30代女性・宣伝アシスタント)
★「1枚絵の画の強さと、タイトル・キャッチコピーなど文字の置き方の構図が素晴らしく、作品の世界観をひと目で感じられるポスターでした」(40代女性・宣伝)
『ガーディアンズ ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
★「シンプルでおしゃれ。ファッションっぽい。音楽が素敵というイメージと相まってとてもファショナブルでカルチャー度の高い(でもハードルは高くない)雰囲気を醸し出していた」(40代男性・宣伝ディレクター)
★「世界観がよく分かる、そして何より明るい!」(40代女性・デジタル広告)
『最後まで行く』
★「かっこいいなと思いつつ、横画像をそのまま縦ポスターに使用してるので(90度ずれてるので)、純粋にわかりづらいなと思ってしまい、印象に残りました」(20代女性・宣伝)
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
★「スタイリッシュな1枚絵で作品の売りが伝わっている」(50代男性・宣伝プロデューサー)
★「余計なものがなくただただおしゃれ。タイトルの入れ方も独特でいい」(30代女性・営業)
★「曇り空と主人公の足の様子で、作品の浮遊感がよく表現されているから」(20代男性・海外セールス)
『M3GAN/ミーガン』
★「1度目が合ったら忘れられない」(40代女性・WEB編集)
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
★「綺麗。MCUの中で最も軽薄なくせに一番鬱々としたテーマを持つ『スパイダーマン』の中でも一番クリエイティブで図抜けてるアニメシリーズの新作ということで注目していました。まるで日本アニメのような透過光をいかした重量感のない綺麗なイメージのビジュアルと、重量級の『運命』コピーの組み合わせがはまってる感じがします」(50代男性・宣伝プロデューサー)
『マルセル 靴をはいた小さな貝』
★「とにかくかわいい!!!文字が多すぎるのでもっとマルセル見せてほしいと思いつつ、一目でキュンとしました」(30代女性・プロデューサー/広報)
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
★「インディの目を隠した顔がドーンとあるのがカッコよかったです」(40代男性・ディレクター)
投票にご協力いただいた皆様、ありがとうございました!
次回は、ポスタービジュアル以外に2023年上半期、記憶に残った宣伝施策を発表します!
【業界人が選ぶ!記憶に残る宣伝クリエイティブ】
【ポスタービジュアル】
2021年下半期
2022年上半期
2022年下半期
【キャッチコピー】
2021年下半期
2022年上半期
2022年下半期
【予告編】
2021年下半期
2022年上半期
2022年下半期
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