調査レポート

《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【ポスタービジュアル】/2022年下半期

2023-01-12更新

映画宣伝において、“映画の顔”となる宣伝クリエティブ(予告編・ポスター)が担う役割は非常に大きく、宣伝マンの腕の見せどころ。試行錯誤を重ね開発されたクリエイティブは、どれも素晴らしいものばかりです!

KIQ REPORTでは、半年に一度、宣伝プロデューサーやパブリシスト、グラフィックデザイナー、予告編ディレクター、広告代理店担当者、映画祭運営者などなど、映画業界で働く“映画業界人”の記憶に残った<ベスト宣伝>を発表しています。

3回目となる今回は、映画業界人36名に、2022年下半期(7月~12月)公開映画で1番記憶に残る【ポスタービジュアル】【キャッチコピー】【予告編】を聞きました。

まずは、2022年下半期、記憶に残った【ポスタービジュアル】です!

訴求ポイントはシンプルに!<こだわりの詰まったシンプル賞>は2作品!

  

2022年7月~12月劇場公開の映画で、1番記憶に残る【グラフィックアート(ポスタービジュアル)】を聞いた結果、最も多い票を集めたのは、『THE FIRST SLAM DUNK『ケイコ 目を澄ませて』でした。
どちらも訴求ポイントをシンプルにした結果、強く印象に残ったようです。

特に男性から支持を集めたのが『THE FIRST SLAM DUNK』

「ティザーポスターはキャラクターにまつわる1行コピーのみ、本ポスターに至ってはコピーなし、という削ぎ落とされたがゆえの作品自体の訴求力が際立っている」(30代男性・予告編演出)

「この1枚だけでテンションが上がった」(30代男性・広報)

「分かってる人にとってだけ明確で純粋なポスターというところ」(50代男性・宣伝プロデューサー)

「とてもシンプルで情報のない潔いポスター」(30代女性・映画宣伝)

“宣伝をしない宣伝”で業界を震撼させた本作は、ポスタービジュアル1枚をとっても、キャッチコピーすらない、極めてシンプルに情報が削ぎ落されたものになりました。普通の映画宣伝では考えられないアプローチ方法に、2022年多くの業界人が注目していましたね。ポスタービジュアルも記憶に残った業界人が多いようです。

 

一方、女性からの支持を集めたのは、岸井ゆきのさん主演の『ケイコ 目を澄ませて』です。

「本編を16ミリフィルムで撮影しており、その特有のザラザラ感がポスターからも伝わるのと、岸井ゆきのさんオンリーで潔くシンプルにかっこいい!」(20代女性・宣伝アシスタント)

「お洒落かつ、文字情報の入れ方が秀逸で素晴らしかった」(20代女性・宣伝アシスタント)

「岸井さんの表情が印象的で、その写真の強さを生かしたデザインが素敵」(30代女性・宣伝アシスタント)

「薄暗く、少し霧がかかったような中にケイコを演じる岸井ゆきのがこちらを見ている、というビジュアルが圧倒的存在感を発しており、“この映画を観なきゃ”と思わせる」(30代男性・動画ディレクター)

 

ちなみに今回、編集部では伝手をたどり、このビジュアルを手掛けたグラフィックデザイナー、合同会社Bonの島田寛さん、本橋真由美さんに最多の票を得た事をお伝えし、こだわりポイントなどお話しを伺ってみました!
こだわりのポイントは、「“目を澄ませて”というタイトルから、“視線”を意識しました。また、本編が16mmフィルムでの撮影にこだわり抜かれた作品なので、その空気感を出せるように努力しました」とのこと。そのこだわりは業界人にもしっかりと伝わったようです!

ちなみに「この1枚にたどり着くまでにいろいろなパターンを作って、作りまくった」そうで、最後までこだわりぬいた1枚の受賞は納得の結果です。他のパターンもSNSで発信されているので、皆さんどのバージョンが好きなのか、気になります」とのコメントもいただきました。
Bonの島田さん、本橋さんおめでとうございます!

 

オシャレなのにどこか不穏・・・〈ギャップで不気味さ倍増で賞〉はホラー・スリラー3作品

    

2022年下半期に作品としても話題を集めたホラー・スリラー3作品のポスタービジュアルは、いずれも“オシャレだけど不気味”というインパクトで記憶に残ったようです。
作品ジャンルをストレートに訴求するのではなく、ギャップを利用して違和感を残すことで、印象づけることに成功しました。

スタジオA24が手掛けたホラーX エックス、同じくA24が北米配給権を獲得したネイチャースリラーLAMB/ラム、ジョーダン・ピール監督の最新スリラーNOPE/ノープです。

「シンプル!わかりやすい!インパクト!タイトルにちなんで“X”の文字を構図に取り入れるお洒落さと不気味な色合いが嫌でも目に入る」(『X エックス』20代男性・オンライン番組ディレクター)

「女性のクロスした脚がXの文字になっているのと同時に、映画のセクシーな、または不気味な展開を想像させる」(『X エックス』20代男性・映画ライター)

「おしゃれな装飾と不穏な雰囲気のバランスが印象的だった」(『LAMB/ラム』20代女性・デジタルマーケティング)

「のどかな要素と、殺伐とした風景、主人公の表情にギャップがありただならぬものを感じる」(『LAMB/ラム』40代女性・WEBサイト編集)

「絵が分かりやすくて強い」(『LAMB/ラム』50代男性・宣伝プロデューサー)

「不穏な空気がビジュアルからも感じつつ、惹かれてしまうオシャレさがある」(『NOPE/ノープ』20代女性・デジタルプロモーションプランナー)

一際目を引く『LAMB/ラム』の主人公が羊を抱きかかえる絵画調のポスターは、A24が開発したビジュアルをグラフィックデザイナーの大島依提亜氏が再構築したデザイン。近年映画ファンの間で注目を集めるA24ですが、今後は宣伝クリエイティブでも目を離せなくなりそうです。

 

ポスター=アート作品!〈もはやひとつのアート作品賞〉はこの作品!

    

今回もアーティスティックなビジュアルに票が集まりました。

世界的ベストセラー小説を映画化したザリガニの鳴くところ、フィンランドの画家を描く伝記映画魂のまなざし、1980年代の日本を舞台としたサバカン SABAKANをご紹介します。

「美しく、冷たい。ボートが向かう先に待ち受けるものへの想像が膨らみます。ポスターが文学でした」(『ザリガニの鳴くところ』40代男性・リサーチャー)

「アート性が高いが、主人公女性のストーリーもしっかりと感じさせてくれる」(『ザリガニの鳴くところ』50代男性・宣伝プロデューサー)

「創り込まれたビジュアルのインパクトと作品の興味のポイントとが合致していて、素晴らしいと思いました!!」(『魂のまなざし』50代男性・宣伝)

「缶詰のラベルに見立てているところがおしゃれで、目に留まった」(『サバカン SABAKAN』40代女性・SNS担当)

『ザリガニの鳴くところ』は、「ポスターが文学」という最高の賛辞が寄せられながら、映画内容への期待度もきちんと高めており、最高なポスタービジュアルとなりました。

 

まだまだある!業界人の記憶に残るポスタービジュアル

今回も様々な記憶に残るポスタービジュアルを挙げていただきました! 日々業界で働いていても気付かなかったポスタービジュアルもあるのでは!? 記憶に残った理由と合わせて一挙ご紹介します!


わたしは最悪。
「『わたしは最悪。』なのに、笑顔で颯爽と走っている姿がインパクト大で記憶に残った」(20代女性・WEB編集)

 


WANDA/ワンダ
「個人的に色使いが好きなのと、洋服の雑誌風のビジュアルが目を引いたから」(20代女性・オンラインパブリシティ

 


裸足で鳴らしてみせろ
「映画の雰囲気をちゃんと表現できている」(20代女性・俳優)

 


野球部に花束を
「久々にポップで素敵なビジュアルだと思いました。楽しそう!」(40代男性・宣伝プロデューサー)

 


復讐は私にまかせて
「作品の持つ荒々しさと純情さを出せていて、タイトルのフォントもぴったりなものを見つけていて素晴らしい」(20代男性・映画祭プログラマー)

 


さかなのこ
「海をあしらった青い背景に、ほのかなライティングでピントは人物に合わせながらも、 衣装と上部の魚たちがカラフルさを添えているようなバランスが素敵です。人物の真っ直ぐさに合わせるように中央揃えになっているテキスト。フォントも級数も嫌らしさがなく、空気を壊していません。タイトルの黄色が絶妙な黄色で、丁度いい。 作品の持つ優しさが上手に表現されながら、分かりやすさもきちんと備わっていて素晴らしいと思います」(20代男性・映画祭プログラマー)

 


グッバイ・クルエル・ワールド
「タランティーノ感、レトロ感」(50代男性・映画プロモーション)

 


百花
「表情、色合い、雰囲気が良い」(30代男性・印刷営業)

 


マイ・ブロークン・マリコ
「印象的かつ良い表情で記憶に残り、素敵だと思いました」(30代男性・宣伝)

「主演女優の目や表情の印象が強い画に、全面に手書き風のロゴがのっているのがとても記憶に残っています」(40代女性・WEB編集)

 


RRR
「激しさとド迫力感がポスターからも感じられ、音楽が聞こえてきそうです。 鑑賞後に改めてポスターを見ると、劇中のスローモーションがポスターにも作用して、2人の主人公がゆっくりと動いているように錯覚してしまいそう」(20代男性・映画祭プログラマー)

「青と赤をバックに躍動する男性二人、そんなオーバーな、と思うものの、決して本編と解離していない!力強さに圧倒されました」(30代女性・宣伝/配給)

 


ヒューマン・ボイス
「ポスターをデザインした方の手の込んだタイトルロゴの大変さを伺えるのと、全体の色彩感が好き」(40代男性・デザイナー)

 


未来惑星ザルドス
「空飛ぶ巨大神像ザルドスのインパクト一発に賭けているところ。あとロゴのカッコよさ」(40代男性・WEB編集)

 


ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー
「圧倒的王者感」(40代男性・映像ディレクター)

 


母性
「闇の深い作品をエンタメとして広く見せるためのカラー採用。単純に目を奪われる綺麗なビジュアルでした。見守るようで首に手をかけるように見える姿。愛と、殺意がうまく出た特写ビジュアルだとも思いました」(20代女性・デジタルマーケティング

「母親が背後に立ち、子の首を絞めるようなポーズに気味の悪さを感じました」(40代男性・映画記者)


アバター ウェイ・オブ・ウォーター
「13年ぶりの新作。当時の青のインパクトを思い出しつつ若いキャラクターで目がキラキラしているので新しい物語の期待感もあった。青っていうアバターカラーが圧倒的に目立つ」(40代男性・宣伝ディレクター)

KIQ REPORTが全国の15歳以上の男女9,100名の映画ファン(半年に1本以上劇場で映画鑑賞をする人)を対象に調査した結果、45%の人が「映画館でチラシコーナーは必ず立ち寄る」と回答しており、中でも月に1本以上劇場で映画鑑賞する映画ヘビーファンは63%が該当するという結果が出ました。多くの作品が並ぶ中、限られたスペースで作品の魅力を訴求するためにも、やはりインパクトを残すビジュアルが欠かせませんね。

また、同じ映画ヘビーファンに聞いたところ、約半数の47%が「映画のチラシをコレクションしている」と回答しました。鑑賞前に魅力を伝え、鑑賞後には思い出に残っていくポスタービジュアルは、デジタル化が進む中でも、宣伝マンと映画ファンとの重要なコミュニケーションツールだと改めて感じさせられます。

 

次回は、映画業界人の記憶に残った【キャッチコピー】を発表します!お楽しみに!

 

【関連リンク】
《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【ポスタービジュアル】/2022年上半期
《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【キャッチコピー】/2022年上半期
《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【予告編】/2022年上半期

 

【調査概要】
調査時期:2022年12月19日(月)〜2022年12月26日(月)
調査手法 :インターネット調査(FastAsk利用)
調査対象:計9,100名 (15〜69歳 男女)
調査定義:映画ヘビーファン=月に1本以上劇場で映画鑑賞する人/映画ミドル=2~3ヶ月に1本程度劇場で映画鑑賞する人/映画ライトファン=半年に1本程度劇場で映画鑑賞する人

(C)I.T.PLANNING,INC.(C)2022 SLAM DUNK Film Partners (C)2022 映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINEMAS (C)2022 Over The Hill Pictures LLC All Rights Reserved. (C)2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JOHANNSSON (C)2022 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved. (C)Finland Cinematic (C)2022「SABAKAN」Film Partners (C)2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VAST – SNOWGLOBE – B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA (C)1970 FOUNDATION FOR FILMMAKERS (C)2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF (C)2022「野球部に花束を」製作委員会 (C)2021 PALARI FILMS. PHOENIX FILMS. NATASHA SIDHARTA. KANINGA PICTURES. MATCH FACTORY PRODUCTIONS GMBH. BOMBERO INTERNATIONAL GMBH. ALL RIGHTS RESERVED (C)2022「さかなのこ」製作委員会 (C)2022「グッバイ・クルエル・ワールド」製作委員会 (C)2022「百花」製作委員会 (C)2022映画「マイ・ブロークン・マリコ」製作委員会 (C)2021 DVV ENTERTAINMENTS LLP.ALL RIGHTS RESERVED. (C)El Deseo D.A. (C)1974 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPOLATION (C)Marvel Studios 2022 (C)2022映画「母性」製作委員会 (C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

不明なエラーが発生しました

映画ファンってどんな人? ~ライフスタイルで映画ファンを7分析~
閉じる

ログイン

アカウントをお持ちでない方は新規登録

パスワードを忘れた方はこちら

閉じる