調査レポート

《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【ポスタービジュアル】/2022年上半期

2022-06-09更新

完成した1本の映画をどう見せるか、興味を持たせるか、“映画の顔”となる宣伝クリエティブ(予告編・ポスター)が担う役割は非常に大きく、宣伝マンの腕の見せどころ。

昨年12月に発表した“2021年下半期編”に続き、KIQ REPORTでは、宣伝プロデューサーやパブリシスト、グラフィックデザイナー、予告編ディレクターなど、映画業界で働く“映画業界人”26名に、2022年上半期(1月~6月)公開映画で1番記憶に残る【ポスタービジュアル】【キャッチコピー】【予告編】を聞いてみました。

今回は、2022年上半期、記憶に残った【ポスタービジュアル】を発表します!

《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【キャッチコピー】/2022年上半期
《発表!》業界人が選ぶ! 記憶に残る【予告編】/2022年上半期

 

〈タイトルを超えたビジュアル賞〉は、透明感のある写真が印象的な『余命10年』

 

2022年1月~6月劇場公開の映画で、1番記憶に残る【グラフィックアート(ポスタービジュアル)】を聞いた結果、最も多い票を集めたのは、小松菜奈&坂口健太郎W主演の余命10でした。

透明感のある映像美に定評がある今村圭佑撮影監督が収めた写真をもとにデザインされたポスターは、「余命」というパワーワードをも凌駕する作品独自の空気感が印象的です。フィルム写真を使用したティザービジュアル、光彩を活かした本ビジュアルともに支持を得ました。

・「切なさのなかに温かみを感じさせるような色彩・光加減が素敵」(20代男性・オンライン番組ディレクター)
・「無邪気に笑っていて日常を楽しんでいるような雰囲気なのに、タイトルが『余命10年』というギャップが印象に残りました」(30代女性・HP制作)
・「タイトルに反しての温かみ、1枚写真の力強さを感じた」(30代女性・映画宣伝)
・「強いタイトルとの対比あるビジュアル。良作感、観てみたいを思わせるビジュアル」(30代男性・映画宣伝)
・「藤井監督作品お家芸の“スチル1枚の力強さ”に加え、主演お二人の眩しい笑顔が作品の読後感を物語っていて、タイトルの切なさに反して爽やかな気持ちになれる素敵なビジュアルだと思った」(30代男性・予告編ディレクター)
・「300スクリーンを超える公開作品で、思い切ったビジュアルだったと思う。過去の難病映画にもとらわれず独自の世界観を表現していた。キャストに媚びてないビジュアルと空気感が世の中を動かしたと思う」(50代男性・宣伝プロデューサー)

20代~50代まで男女問わず支持を得ているのが印象的です。
余命、難病ものというと一定の女性層の動員が想定されますが、本作では性年代を問わない幅広い層が劇場に足を運び、興行収入30億円に迫るヒットにつながったのも、このビジュアルの影響力もありそうですね。

 

日本オリジナルデザインも!〈色彩が印象に残るで賞〉は洋画3作品

 

今回の投票では、いくつかの作品でビジュアルの色彩が印象に残ったというコメントが挙がっているのが特徴的でした。

グッチカラーで訴求力を上げたハウス・オブ・グッチ、色使いのインパクトが強いTITANE チタン、グリーン使いが印象的なニューオーダーです。

・「ピカレスク物のお馴染みの構図と、日本ローカライズで背景にグッチカラーの緑を入れたところに仕事感を感じた」(『ハウス・オブ・グッチ』50代男性・宣伝プロデューサー)
・「グッチカラーとリンクして、あの赤と緑の色が1発で記憶に残った」(『ハウス・オブ・グッチ』40代女性・映画マーケティング)

・「ビジュアルのカラーリングが強烈で、そこに映る女性が怪しげだけど、観たくなるデザイン」(『TITANE チタン』20代男性・オンライン番組ディレクター)
・「一発でやばい映画とわかる全体のインパクトと色、ポーズ」(『TITANE チタン』40代男性・グラフィックデザイナー)

・「全体の緑色が鮮やかながらも不気味かつ、ディストピアがテーマという意味で通じるものがある『マトリックス』を思い出させる。緑がイメージカラーとなっているのは本国(メキシコ)版や米国版もそうだが、日本版が最も良いデザインだと思う」(『ニューオーダー』30代男性・映画ライター)

『ハウス・オブ・グッチ』と『ニューオーダー』は日本オリジナルデザインです。洋画作品は本国デザインをそのままローカライズして使用することが多い中、日本版が評価されるのはとても嬉しいですね!

 

最高のデザイン評価!?〈部屋に飾りたいで賞〉はこの作品!

 

作品の認知・意欲を上げるのはポスタービジュアルの最大の役割ですが、『逆光』『カモンカモン』はそのデザインが高く評価され「部屋に飾りたい」という意見が挙がりました。

・「部屋に飾りたいポスター。アーティスティックで好きです!」(『逆光』20代女性・宣伝アシスタント)

・「部屋に飾りたい」(『カモンカモン』50代男性・宣伝プロデューサー)

デザイナー冥利に尽きる得票ではないでしょうか!

 

まだまだある!業界人の記憶に残るポスタービジュアル

今回も様々な記憶に残るポスタービジュアルを挙げていただきました!作品規模に関わらず多様な作品が挙がるのは、さすが業界人の皆さんですね。記憶に残った理由と合わせて一挙ご紹介します!


さがす
・「タイトルとビジュアルのバランスが良い」(50代男性・宣伝プロデューサー)


名付けようのない踊り
・「写真のインパクトが最高、田中泯さん最狂」(40代男性・宣伝ディレクター)


フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
・「ウェス・アンダーソンならではのおしゃれなクリエイティブで、このビジュアルを見て映画が見たいと思ったから」(20代男性・宣伝アシスタント)


大怪獣のあとしまつ
・「大怪獣とタイトルに入っているのに、怪獣の怖い顔や全体が載ってなかったので「怪獣ものなの?違うの?何なの?」と二度見しました」(40代女性・SNS担当)
・「お客さんが何を求めてるか、どういう打ち出しにすれば劇場に足を運んでくれるか、というコンセプトが明確にあらわれてる良いビジュアルだと思う」(30代女性・映像制作)


KAPPEI カッペイ
・「コピーが飛ばし過ぎて記憶に残っています。キエエエー!」(40代男性・宣伝プロデューサー)


アネット
・「これどういう状況!?と興味を持った」(30代男性・映画記者)


N号棟
・「一撃で不気味な雰囲気が伝わってくる。でっかいタイトルも込みでカッコイイポスターだと思う」(40代男性・映画サイト編集)


死刑にいたる病
・「阿部さんの焦点が合っていないような死んだ目に狂気を感じ、ゾッとした感覚を覚えています」(20代女性・パブリシスト)
・「阿部サダヲさんの優しげだが得体の知れなさが出ていて強く惹かれたから」(30代女性・映画宣伝)


トップガン マーヴェリック
・「まさか続編が観れるとは思わなかったので、カタルシスしかないです」(40代男性・番組ディレクター)


メタモルフォーゼの縁側
・「女子高生と老婦人が、世代が違うが同じ好きを楽しんでいる感じがポスターからも伝わってきた」(20代男性・WEB制作)

 

次回は、映画業界人の記憶に残った【キャッチコピー】を発表します!お楽しみに!

 

前回の2021年下半期編に引き続き、今回もシンプルながらインパクトを残すビジュアルが多い印象で、さらに色彩が記憶に残るビジュアルが挙がりました。
以前、KIQ REPORTではシンプルなクリエイティブが多くなってきた理由として、ポスタービジュアルへの接触頻度が高いオンライン、特にスマホを意識しているのではないかと分析するコラム(【プロが見たこの映画】宣伝ディレクターが語る「スマホで光るポスタービジュアル」)を紹介しましたが、今回挙がった色彩で印象を残すというのも、スマホを介したコミュニケーションに有効ではないでしょうか?ポスタービジュアル1枚で何を伝えるかも重要ですが、客層の接触ポイントも考慮した印象の残し方も重要といえそうです。

 

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