業界人インタビュー

【ENDROLL】「学生が運営する意義」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~後編~

2024-10-11更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。

 

今回も前回に引き続き、東京学生映画祭(通称:東学祭)を運営する、東京学生企画委員会の代表 藤﨑諄さんと広報 宮本采依さんにインタビュー!東学祭とは、日本で最も長い歴史を持ち、企画・運営も全て学生のみで行っている、国内最大規模の学生映画祭である。これまで、『EUREKA』の青山真治監督、『君に届け』の熊澤尚人監督、『君の膵臓を食べたい』の月川翔監督、『溺れるナイフ』の山戸結稀監督など、日本の映画業界を代表する多くの監督の才能を発掘してきた。

後編では、映画祭でしか生まれない特別な瞬間について教えてもらった。また、藤﨑さんがずっと悩んでいると語る、受賞した監督たちの映画祭後の支援についてや、大人たちに手を差し伸べて欲しいことについても掘り下げた。ぜひとも、彼らの熱い思いを受け止めて欲しい…!

 

【ENDROLL】「今しか撮れない映画」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~前編~

 

映画祭でしか生まれないものー。

映画祭だからこそ生まれる出会いや繋がりについて熱く語ってくれた。そして、二人が映画に惹かれた理由は?


左:宮本采依さん 右:藤﨑諄さん

KIQ:そもそも、お二人が映画を好きになったきっかけは?

藤﨑:親が映画好きで、小学生の頃からよく映画を観せられていたのですが(笑)、チャップリン(チャールズ・チャップリン)の作品などをよく観ていましたね。

KIQ:小学生でチャップリンですか!?ご両親はきっと生粋の映画好きですね!

藤﨑:それこそ中学生の時に初めて親に連れられてユーロスペースに行ったことをよく覚えています。それまではあまりミニシアター系の作品を観たことなかったのですが、その時に改めて映画のおもしろさを知り、本格的に映画にハマるきっかけになりました。

KIQ:宮本さんのきっかけは?

宮本: 私はコロナ禍が大きかったです。それまではテレビの金曜ロードショーで観る程度でしたが、コロナにより半年間ほど高校が休校になった時に、偶然レンタルショップで借りて来て観た映画がすごく面白くて!それから、いろんな作品を観るようになり、どんどん映画にハマっていきました。

KIQ:コロナがきっかけだったのですね。他の映画祭にも足を運んだりするんですか。

藤﨑:はい、いろんな映画祭に足を運ぶようにしています。僕は去年、東京フィルメックスで学生審査員やらせていただいたのですが、『スモーク』のウェイン・ワン監督がいらっしゃっていて、少しお話をさせていただくことができたりとか、和歌山で行われている田辺・弁慶映画祭にも少し参加させていただき、そこでも自主映画を撮っている監督の方々といろいろお話ができたりなど、すごく良い刺激を受けました。そのことは、今年の映画祭を行ううえで、とても良い経験になったと思っています。

KIQ:お話を聞いていると、藤﨑さんは映画祭の雰囲気など、映画祭そのものがとてもお好きなのではないでしょうか。

藤﨑:そうですね、映画祭の場でしか生まれない何かに惹かれるんです。毎年コンペティションの上映後には40分ほどトークを行うのですが、審査員の方と学生監督の会話を聞いていると、そこから何かが生まれているような感覚があるんです。あと、今年の企画では「東学祭出身監督特集」を行い、常間地裕監督(代表作『この日々が凪いだら』)が来てくださったのですが、常間地監督が『なみぎわ』(第30回 入選)を出品した時の審査員が、今回も審査員を務めてくださった三島監督だったんです!さらに、「オープニング特別企画」では、堀内友貴監督の『また春が来やがって』(第32回 観客賞・審査員特別賞(城定秀夫監督))を上映したのですが、当時上映した時にも今泉監督とトークショーをしていたりと、映画祭を通じて再会や、新しい出会が生まれている瞬間を間近で見れることがすごく良いなと思います。

KIQ:なるほど。すごく素敵なお話をありがとうございます!宮本さんは映画祭のどんなところがお好きなのですか。

宮本:私は映画祭自体も好きですが、それを作り上げるまでの過程もすごく好きなんです。この映画祭を通じて自分も何か制作したいと思うきっかけにもなればいいなと思っていて、そういったことの一部になれていることがすごく嬉しいですし、やりがいも感じています。

学生が運営する意義

入選した学生監督たちのその後をどう支援していくのか。次世代の才能を育てるための課題に迫った。また、“学生映画祭を学生がやる意義”について教えてくれた。

KIQ:今年の映画祭が終わり、来年に向けての課題やこうしていきたいと思うことはありますか。

藤﨑:一番難しかったのは広報です。上映した1本1本の作品が本当に素晴らしかった分、もっと広められればよかったなと。あと、濱口竜介監督(代表作『ドライブ・マイ・カー』)と今泉監督と横浜聡子監督(代表作『いとみち』)のトークショーなど、自分でもよくこんなプログラムを組めたなと思うほど、今年もとても良い企画が組めたので、それももっといろんな人に知っていただきたかったです。

KIQ:広報に心残りがあるのですね。

藤﨑:はい。あと、出身監督特集では小泉徳宏監督(代表作『ちはやふる』シリーズ)が学生時代に第14回東京学生映画祭でグランプリを取った『文金高島田二丁目』を上映することになったのですが、上映するにあたり小泉さんに連絡をしたら、今手元にデータがないとのことだったので、東学祭のアーカイブから頑張って引っ張り出してきて、mini-dvをデジタルデータにしていたものをDVDに焼いて上映したんです。なので、今後はうちが上映しない限りはもう映画館では見られないようなプレミアなんですよね。こんな貴重な機会はないからこそ、もっと多くの人に観てもらいたかったです…!

KIQ:そういった東学祭にしかないとても貴重なアーカイブたくさんがあるのですね!それはすごく大きな財産ですね…!
映画祭を運営するにあたり、映画業界で働く大人に手を差し伸べてもらえたらなと思うところはありますか?

藤﨑:既に協賛など助けてくださる方はたくさんいらっしゃるのですが、入選した作品について、映画祭後にも上映してもらえる機会をいただけたらありがいなと思います。去年の2月には、テアトル新宿とコラボして「東京学生映画祭×テアトル新宿 東学祭オールナイト上映会」を実施したのですが、そうやって定期的に何かを行う機会をいただけたらありがたいです。

KIQ:なるほど。

藤﨑:映画祭が終わった後のセカンド上映支援みたいなものが課題だと思っています。うちでは、なかなか十分な資金を確保できないですし、賞金も多くは出せないので…。入選した監督が、何か次につながるような機会を作りたいというのは、ずっと思っているんです。監督に対する助成金など、どんな形でも良いのでそこを支援いただけると大変嬉しいです。

KIQ:そうですよね、評価をもらったら、次のステップへと繋げられる支援や制度を作ってあげられるといいですよね。自主映画といってもある程度の費用はかかりますし。

藤﨑:そうですね、中には百万円単位でかけている監督もいたりします。毎年10何本を入選作品として出して、それを撮った学生に「入選監督」という肩書きをつけて送り出してはいますが、そこから本当に映画制作だけで食べていける人はあまり多くはないですし、映画祭として、このまま授賞だけして送り出していくことが良いことなのだろうかとすごく悩んでいます。とくに今年は応募作品数も多く、やっぱり映画を撮りたい学生はたくさんいるんだなというのをすごく実感したので、もう少し若い人が、これから映画で食べていけるような体制がきちんと作っていければいいなと思いますし、受賞した人が一本で終わるのではなく、次に繋げられる体制が整えられればありがたいなと思います。

KIQ:そこは映画業界でも考えていくべき課題ですね。

藤﨑:たしか過去に川本三郎さんが、同世代の作家を支援することが大事だと仰っていたことがすごく心に残っていて、僕はそれをやろうと思って映画祭をやっているところもあるんです。だから、学生映画祭を学生が運営しているということは、自分的にはすごく意義があることだと思っています。そこから、監督もそうですし、運営している私たちも何か次に繋げていくことができれば良いなと思います。

 

【ENDROLL】「今しか撮れない映画」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~前編~

 

 

【Information】


東京学生映画祭とは、「東学祭」の名で知られる、日本で最も長い歴史を持ち、企画・運営も全て学生のみで行っている学生映画祭である。これまで、『EUREKA』の青山真治監督、『君に届け』の熊澤尚人監督、『君の膵臓を食べたい』の月川翔監督など、日本の映画業界を代表する多くの監督の才能を発掘してきた。
公式HP:https://tougakusai.jp/
公式X:https://x.com/tougakusai  @tougakusai

 

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