業界人インタビュー
【ENDROLL】「カメラという凶器を手に。」映像プロデューサーの楢本皓さん ~後編~NEW
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回は映像制作会社「STUDIO VIEW」に所属する、映像プロデューサーの楢本皓さんにインタビュー!
後編では、キャリアやメイキング映像を撮ってきたからこそのカメラとの向き合い方について詳しく聞いてみた。
仕事はいつも自分で作った。
KIQ: VP(ビデオパッケージ)の仕事をしていた時代から今に至るまではどういう経歴なんですか?
楢本:いろんなことを並行してやっていましたね。メイキングの仕事をくれた会社がVPもやっていたのでそれを手伝ったりとか、その会社に出入りしているディレクターに誘われて仕事をしたりとか……一回も企業に就職していなかったんですよね。
KIQ: いきなりフリーランスだったんですね。
楢本:そう。まあ、そんな感じでいろいろやっていたんですけど、過去にドキュメンタリーを配給してくれた会社からの依頼で、『檸檬のころ』っていう榮倉奈々さん、柄本佑さん、谷村美月さん、平川地一丁目の林直次郎さんが出演する、岩田ユキ監督のデビュー作のメイキングを撮ることになりました。
そしてドラマの仕事が終わった後にメイキングを編集することになって、参考資料としていろんな映画のメイキングを人に頼んで借りまくって観ていたんですけど、そのときに『タイヨウのうた』のDVDを観て、これがよくできていたんですよ。主演のYUIさんに日記を書かせていたんですよね。それを見て「これだ!」と思って、『檸檬のころ』でも榮倉さんとかに「日記を書いてください」って書いてもらいました。そうやってメイキングを作っていました。
KIQ: なるほど。
楢本:また『檸檬のころ』の撮影が終わったあたりで深夜ドラマの監督に話が決まったのですが、その条件が下請けの会社を用意するという条件だったんですね。それ以前からフリーでやることの限界を感じていたので、以前からVPでお世話になっていた制作会社の社員になることになりました。
『檸檬のころ』の仕事の途中にはフリーから会社員になっていたのですが、当時宣伝用のナビゲーションDVDという商品があって『檸檬のころ』でも制作を任せていただいたんですけど、それをビデオメーカーの担当プロデューサーがすごい褒めてくれて。それをきっかけにその方から続けて仕事がもらえるようになって。会社員にはなっていたけど、他社の人からお仕事をいただいているというか、会社に所属しながら案件を自分で取ってくるって生活をしていました。だから会社から仕事をもらったことがなくて。自分で受けたものを会社に持ってきて、会社マターとしてやっていたんです。
KIQ: すごいですね!
楢本:ただ、一人で全部はやれないわけですよね。特にメイキングとかって、撮影をして編集して納品するまでのスパンが1、2年あるんです。だから、撮影をしたら必ず自分で編集までできるかっていうと、そうでもなくて。
KIQ: そんなに期間があるものなんですね。たしかに一人で全部を請け負うのは難しいこともありそうですね。
楢本:だから学生の頃の友達の一人が女性だったんですけど、女の人が現場でメイキングカメラを回すって当時メジャーじゃなかったから、「いいじゃん!」って思って、女性だけを束ねて現場に行ってもらおうと思ったんです。撮影現場は女性が担当して、編集は別ラインで僕がやるとか。そのやり方を提案していろんな仕事をやれるようになりました。
KIQ: 素敵ですね。
楢本:実績を積んでいくうちに、ビデオメーカーの仕事の営業がしやすくなったんです。それでほかのビデオメーカーとも取引ができるようになって、メイキングを作ったり撮影を頼まれたり、という時代がありました。その会社には4、5年いたんですけど、その会社も「ゆくゆくは映画を作りたい」って言っていて、その頃はまだあまり実績はなかったけど、あるビデオメーカーさんから「1本、制作会社として一緒にやりましょうか」みたいな話がをいただいて、そこの会社でホラー映画を作りました。それが多分、プロデューサーとして初の仕事でした。
カメラは凶器
KIQ:メイキングのお話に戻りますが、メイキングを撮ることの面白さって、どういうところにありますか?
楢本: 唯一言えるのは、若い頃にドキュメンタリーをやっていてよかった一番のポイントがあることですかね。
KIQ:というと?
楢本: やっぱりカメラって凶器なんですよ。本編用の撮影でもメイキングの撮影でも、カメラってめちゃくちゃ怖いし、人はカメラを怖がるんですよね。人にカメラを向けることが非常に怖いことだって認識した上で、向けているかどうかっていうのは重要かもしれないですね。だから本当は向けちゃいけないものを向けているくらいの思いで現場に入った方がうまくいくと思います。
KIQ:なるほど。今の映画界について思うことはありますか?
楢本: ないですね。こうなればいいなというのはありますけど、不満とかはあまりないです。この中で生きていくのがゲームのルールだと思っています。ゲームチェンジャーになる気はまったくなくて、ゲームのルールの中でどう生きていくかの方が今は興味があります。だから業界的な不満はまったくないですね。
KIQ:ありがとうございます。最後に、学生さんなどこれから映像制作を始める方がしておいた方が良い心構えや、できると良いことなどはありますか?
楢本: 多分今の若い方の方がもっと先を行くと思うんです。我々の常識と違うものを生み出せると思うので、自分のやりたいことを素直に信じてやってもらった方がいいと思います。
★「大分のゴジラ少年、襲来」映像プロデューサーの楢本皓さん ~前編~
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