業界人インタビュー

【ENDROLL】「物語の中にある誰かのリアル」映画ライター アナイスさん ~後編~NEW

2025-06-16更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

今回は、Real Soundを中心に映画コラム記事を執筆するだけでなく、視聴者参加型のWeb番組「共感シアター」など映像系メディアでも活躍し、KIQ REPORTの「映画ファンが好きな 映画評論家・ライターランキング!」にもランクインする映画ライターのアナイス(ANAIS)さんにインタビュー!

大学時代に、“映画”に焦点を当てて歩み始めたアナイスさん。後編では、大学を出てから今に至るまで、映画ライターとしてのキャリアを深掘りしていく。

★インタビュー前編「映画に揺れて、生きてきた。」

バークレーが私のアナザースカイ

KIQ: 映画ライターデビューは大学生なんですね。

アナイス: 学生時代にも映画の内容を伝えて興味を持ってもらうことは好きでした。そして「ELLEgirl」で映画紹介をしていくうちに、映画宣伝に目を向け始めました。映画を伝えるということをしたかったんですよね。それで大学にいてもしょうがないと思い、2年通ったのちにバンタンデザイン研究所の映画宣伝コースに進みました。そこは1年で卒業したんですけど、就職は当時インターンをしていたファッションメディアの会社に編集者として入社しました(笑)。生きていくには、これまで知見をためていたファッションしかなくて。その中でもカルチャー寄りのことをしようかなって、模索していた時期でした。

KIQ: なるほど。

ただ、その時は“インフルエンサー”やInstagramの存在が大きくなっていた時期で、人がおススメしているものばかりを媒体で取り上げるという編集方針が自分には合いませんでした。また、ベンチャーだったので社内体制の変化も激しく…ここにいても仕方ないと感じて退社し、少しの間また別のファッションメディアをお手伝いすることになりました。そっちはもっとドメスティックなブランドに特化したメディアで。その後ciatr[シアター]という映画メディアに入り、それまでのメディア編集の経験を活かしつつ宣伝会社さんに連絡を取ったり記事を書いたり編集をしていました。

KIQ: そうだったんですね!

アナイスそして、2019年にciatrを退社した後はアメリカで数ヶ月間過ごしていたんですけど、コロナの直前に帰国して。以前から執筆の依頼をいただいていたリアルサウンド映画部に入りました。編集の仕事をしつつ、自分でも1日に1本くらいのペースで原稿を書いていたんですよ。他のメディアからの発注も個人で受けていたので、在籍していた2年くらいは超仕事していました。

KIQ: とても忙しそうですね。

アナイス: 忙しかったです。仕事しかしていなかった。編集業務に追われすぎて、鬱々としていた時期もありました。2022年の1月ごろが本当にしんどかったです。それから少しして退社して編集からは離れ、再びライターとして寄稿する形で仕事をしています。

KIQ: 映画を観る時間も必要ですし、時間の使い方がすごく難しいですよね。

アナイス: 基本的に家で仕事をしているので、日中は作品を基本何かしら流しています。ご飯を作ったり顔洗ったりお風呂入りながらアニメを観て、少し落ち着けるタイミングで映画を観たり。

KIQ: それぐらいしないと全然追いつかないですよね。

アナイス: まあ(笑)でも、単純に私、観るのが好きなんですよね。だから仕事も、自分が「書きたい!」って思ってやっていることだし。基本的に自分がやりたいからやっていることしかないですね。編集業務も楽しかったけど、やっぱり「書いていきたい」って気持ちになって。そう生きていく覚悟みたいなものを決めたのは、先ほど話したアメリカに行ったタイミングだったと思います。

KIQ: どうしてアメリカに行こうと思ったんですか?

アナイス: ciatr[シアター]を退社して、会社に行かなくて良くなったし、単純に「私、日本にいなくていいな」って思ったんですよね。ずっと海外で暮らしたい気持ちはあったので、一旦アメリカに行こうって。

KIQ: アメリカのどこに行かれたんですか?

アナイス: サンフランシスコのバークレーです。母がバークレー大学に通っていた時期があったので、彼女のルーツを辿る意味合いもありました。映画の勉強もできましたね。フィルムアーカイブの図書館もあって、資料もたくさんあった。古本屋には映画本が買いきれないほど売っていて、天国でした。あとは、単純に英語環境に身を置けたことで、ミックスである自分のもう一つの側面をもう少し大切にできた。当時25歳だったんですけど、その時点での“素の自分”……私ってこういう人間だよなって再確認ができて、そんな自分で過ごせた時間がすごく心地よかったです。アイデンティティの面でもその時間が自分にとって大きくていつか『アナザースカイ』やるならここだなって思っています(笑)。

物語の中にある誰かのリアル

KIQ: では最後に、映画業界を盛り上げていくために、考えている理想やビジョンはありますか?

アナイス そんな大それたことは考えていませんが、映画が昔ほど観られなくなっている現状についてはどうにかならないか……とは考えています。だからこそもっと「観たい!」って思わせる映画紹介をして、劇場での物語との出会いを増やすきっかけの一つになれるように、頑張りたいですね。

KIQ: たしかに、そうですね。

アナイス 私はそれこそ中学の時とか、TSUTAYAの恋愛映画を棚の端から端まで観ていた頃があって。自分に似たシチュエーションの人の物語を探して、その度に彼らはどう行動を取ったのか、会話の仕方とかコミュニケーションの例を知りたくて観ていたんです。恋は多きタイプだったので(笑)映画はフィクションだけど、そこから学んだことはたくさんあります。

KIQ: 中学生のときから、映画を“学びの場”として捉えていたんですね。

アナイス これは持論なんですけど、映画の物語はフィクションじゃないですか。でもそれを書いている人がいて、その人は絶対に実体験か聞いた話を繋げていると思うんですよ。そう考えたらノンフィクションじゃない?って。そのフィクションの中にあるノンフィクション性みたいなものを私は信じているし、それが物語の力だと思っています。私のやっていることは、単純に私自身が何か言葉を残していることでしかないけど、その言葉が誰かの心に残ったら嬉しい。

よく「言語化してもらった」って言ってもらうこともあって、そんなふうに物語に触れた後に私なりにそれを言語化した原稿を通して、腑に落ちていただいたり、視点が増えたりするお手伝いができたら個人的にはとても嬉しいです。物語について考えることの楽しさが伝われば、また作品を観たいと思ってもらえる。作品との出会いは、新しい考え方の出会いとも思っているので、それが個人ごとに増えていけば……もっと“優しい”世界に近づけそうですよね(笑)

KIQ: 今後も動画などで伝えていくことにも力を入れていく予定ですか?

アナイス はい。書くことは好きだから続けていきますが、話すことも好きだし、元々『王様のブランチ』のLiLiCoさんみたいになりたいって思っていたので、見て聞いてくれる人がいるのであれば頑張りたいですね。発信することは好きなので、動画も力を入れていきたいですね……関係各所、ご連絡お待ちしております(笑)。

 

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