業界人インタビュー
【FRONTIER】「配給ビジネスの勝算」KeyHolder Pictures CDO 鈴木さとるさんスペシャルインタビュー ~前編~NEW
KeyHolder Pictures
(株式会社UNITED PRODUCTIONS ディストリビューション事業部)
CDO 鈴木さとるさんスペシャルインタビュー【前編】
映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。
エンタメグループである株式会社KeyHolderの傘下で、バラエティ、映画、配信コンテンツ、CMの制作まで、ジャンルを横断した映像制作を手がけてきた株式会社UNITED PRODUCTIONS(以下UP)。
数多くの現場を通じて培ってきた制作力とエンターテインメントへの知見を強みに、同社は2025年4月1日、新たに映画配給事業へ参入。映画配給レーベル「KeyHolder Pictures」を立ち上げた。
制作会社として作品づくりの“川上”に立ってきたUPが、なぜ今、配給に挑むのか――。
CDO(Chief Distribution Officer)を務めるのは、映画業界で25年のキャリアを持ち、長きにわたり配給営業の最前線で変化を見てきた鈴木さとるさん。自称・配給オタクの鈴木さんが抱く、配給レーベル設立の経緯、そして勝算の根拠となったグループの強みと未来への戦略を、前後編に分けてお届けする。前編では、立ち上げに至るまでの背景に迫る。
ゼロからだからこそ見えた「配給」の可能性
KIQ:
まずは、これまでの鈴木さんの経歴と、KeyHolder Pictures立ち上げの経緯を教えてください。
鈴木:
1999年に大映株式会社に入社して営業部に配属されました。その後大映が角川グループに営業譲渡され、日本ヘラルド映画との合併があり、KADOKAWAへの吸収など色々ありましたが、この間2019年まで、約20年映画配給部門の営業を担当してきました。その後は、企画調整とマーケティング職を約3年半経験し、東京国際映画祭事務局(以下、TIFF)に2年間出向していました。
TIFFに出向していた時に初めてUPの森田篤社長と会食をする機会がありました。UPはドラマやバラエティ番組の制作をメインにされていて、森田社長は「コンテンツサプライヤーとして日本一を目指す」という大きな目標を掲げ、「今後は映画事業も本格化させたい」とおっしゃっていました。
KIQ:
当時はまだ配給レーベルの立ち上げは決まっていなかったんですね。
鈴木:
はい。そのときのお話の中で、特に配給に興味があるとおっしゃっていました。配給というのは、世の中的には映画が完成した後に、映画館にブッキングする仕事だと思われがちですが、実は配給会社が決まらないと企画が進まないことが多く、配給元に企画が集まってくるんです。だから、配給事業を立ち上げることで、映画の企画自体も活性化するはずだと、森田社長はそこまで研究されていました。そういったお話を聞く中で、自分としてもう一度配給業務に携わる可能性はあるのかなと感じ、そこから1年ほど頻繁に議論をさせていただき、これはやるしかない、という流れになりました。
KIQ:
長年、配給部門の営業の立場で業界の変化を見てこられた中で、立ち上げの話を聞いた時の率直な気持ちはいかがでしたか?
鈴木:
私が営業を始めた2000年頃は、シネコンが一番増えた時代でした。地域ごとにあった映画館と直取引していた時代から、中央集権型のシネコンが興行のメインになっていった中で、流通側の発言権が強くなっていきました。
そんな時代の変化の中で、私は配給オタクだったので(笑)、いろいろ調べつくしていますが、本当に数多くの配給会社が立ち上がっては、なくなっていくのを見てきました。だから、基本的に配給を立ち上げることについては慎重にやるべきだという考えがあります。よほど明快なポジショニングややりたいことがないと、成立しないと思っています。
配給ビジネスに必要な「勝ち筋」と、UPならではの条件
KIQ:
ゼロから配給事業に取り組むことに、抵抗はありませんでしたか?
鈴木:
転職する直前の2年間、TIFFでやりがいのある仕事をやらせてもらっていましたが、もう一度配給の現場で仕事をしてみたいという気持ちはありました。ただ、個人として独立して立ち上げるつもりはありませんでした。配給は、ある程度の映画のラインナップが必要で、そうなると規模の力が求められるからです。
KIQ:
規模の力というのはどういうことでしょうか?
鈴木:
この業界では「2勝8敗だ」といわれたりもしますが、個人で立ち上げていきなり3連敗となると、あっという間に立ち行かなくなります。競争の厳しい世界を生き残るためには、なるべく打席に立ち続けなきゃいけない。そのためには、それなりの資本力がないといけません。「1本こけたからもうやめた」という体制だと、配給会社は継続していけないんです。そういうところは森田社長とよく話していました。
KIQ:
そのなかで、UPさんの強みが見えたということですね。
鈴木:
強みがあると感じました。1つは、先ほど言った通り資本力があること。あとはエンタメ感度の高い社員が多いということです。映画会社出身者がいたり、元々映画ビジネスをやりたかった番組制作者がいたりします。映画だけでなく、テレビやネットのコンテンツに詳しい方が多く、しかも最前線でバリバリと仕事をしています。
KIQ:
始めるにあたり、すでにメンバーが揃っていたんですね。
鈴木:
そうです。もう1つは、グループ会社も含めたエンタメリテラシーが高い点も大きいです。IPを展開することの魅力やリスクといった共通言語がすでに整っていると思います。そして、これが一番大事なことですが、森田社長を筆頭に非常に熱意に満ち溢れています。資本、人材、熱意が揃っているのであれば、成功する可能性があると思いました。
KIQ:
グループのシナジーがあるのも強いですね。
鈴木:
そうですね。KeyHolderグループは、映像・音楽・ライブ・ゲーム・デジタルコンテンツなど、エンターテインメント領域を横断して事業を展開しています。例えば、乃木坂46さんやSKE48さんといったアーティストIPを含め、IPをどう育て、どう広げていくかという視点がグループ全体に根づいています。
KIQ:
配給だけではなく、横の繋がりで、IP展開の可能性も念頭に入れていらっしゃると。
鈴木:
「KeyHolder Pictures」という配給レーベルにはグループの知見を活かしながら、映画を起点としたIP展開に挑戦していきたいという思いを込めています。KeyHolder Picturesは、単に完成した作品を預かる配給ではなく、企画段階から関わり、グループの知見も活かしながら作品の可能性を最大化する配給レーベルでありたいと考えています。
KIQ:
制作部門がある点も強みが増すポイントでしょうか。
鈴木:
大きな強みだと思います。特にUPには映画好きな人も多いですし、ドラマ、映画、バラエティと、心を込めてものづくりをしている人が制作部門に大勢いることは重要だと思います。配給はUPにとっては新規事業ですので、当然事業の説明が必要な場面は多いですが、経理や総務、法務を含めて、説明すればすぐに事業構造を理解してくれる体制になっているのが大きいです。
後編では、具体的な配給ラインナップの戦略として掲げる「ホラー」や「ドキュメンタリー」への思い、そして映画業界の未来に対する考えを伺う。
<後編(1/9UP予定)へ続く・・・>
【Information】
KeyHolder Pictures 配給第1弾作品
『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』

2026年1月9日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開
“コヤガタケ”と呼ばれるほど山小屋が多く存在する八ヶ岳。本作では、そんな八ヶ岳を山岳写真家である菊池哲男と巡っていく。さまざまな想いを抱えながら「小屋を営むもの=小屋番」の道を選んだ人々。コンビニも車もない、自然と真正面から向き合う過酷な日常を選んだ理由とは?登山を楽しむ人々を支え、時には死とも遭遇する小屋番という仕事。山小屋の生活は不便さを感じさせる一方で、忙しなく行き交う情報社会に疲れ、何もかもが身近に手にできてしまう現代を生きるわたしたちに対して「暮らしそのものの在り方」さらには「人生の在り方」への新たな視点をそっと提示してくれる。
監督・撮影・MA:深澤慎也(TBS ACT)
プロデューサー:永山由紀子
出演:菊池哲男(山岳写真家)
ナレーション:東野幸治 一双麻希
エグゼクティブプロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:須永麻由 小池 博
協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子 和田圭介
進行プロデューサー:鈴木秀明 尾山優恵
製作:TBS 配給:KeyHolder Pictures 宣伝:KICCORIT
2026年/日本/85分/5.1ch/16:9 ©TBS
公式HP:koyaban.com
公式X:@koyaban _movie
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