業界人インタビュー

【ENDROLL】「今しか撮れない映画」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~前編~

2024-10-07更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

 

今回は、東京学生映画祭(通称:東学祭)を運営する、東京学生企画委員会の代表 藤﨑諄さんと広報 宮本采依さん にインタビュー!東学祭とは、日本で最も長い歴史を持ち、企画・運営も全て学生のみで行っている、国内最大規模の学生映画祭である。これまで、『EUREKA』の青山真治監督、『君に届け』の熊澤尚人監督、『君の膵臓を食べたい』の月川翔監督、『溺れるナイフ』の山戸結稀監督など、日本の映画業界を代表する多くの監督の才能を発掘してきた。

前編では、今年度の映画祭(8月16日〜18日まで渋谷ユーロライブにて開催)が無事に閉幕した直後の二人に、東学祭企画委員の立ち上げや、作品の選考・企画がどのように進められているのかについて詳しく聞いてみた。映画祭について熱い思いのある二人が考える、学生が作る自主映画の強みとは…?

 

【ENDROLL】「学生が運営する意義」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~後編~

 

大人をも巻き込む熱意

東京学生映画祭企画委員会にはどんな学生が参加しているのかや、開催日までどのような流れで準備を進めるのかについて聞いた。藤﨑さんが、大学生活と両立させながらも、映画祭の運営を3年間続けた理由は?


左:宮本采依さん 右:藤﨑諄さん

KIQ:学生企画委員会は大体いつ頃から立ち上げをはじめるのですか。

藤﨑:当年度の映画祭が終わるとすぐに来年度も参加するメンバーで、予算がいくら残ったかを確認し、それに伴って来年の映画祭日数、来年の組織体制やどんなことをやりたいかなどについて、まずはざっくり話し合いを始めます。その後、今年も開催した渋谷ユーロライブの会場使用の抽選が2月にあるので、そこで場所が確定したら、開催内容や審査員についてより具体的に固めていきます。同じ時期に、新たなメンバーの募集も開始するといった流れです。

KIQ:はじめの方は残ったメンバーを中心に進めていくのですね。委員会のメンバーは何人くらいいるのですか。

藤﨑:今年は特に少なくて10人弱でした。去年は20人ぐらいで、一昨年は30人ぐらいいました。

KIQ:今年は10人弱で運営されていたのですね…!メンバーのみなさんは、やっぱり大学では映画サークルや放送研究会に所属している方が多いのですか。

宮本:全員ではないですがそういったメンバーも多く、中には映画学科に所属している人もいます。

KIQ:お二人は映画祭の委員会をやるのは今年で何回目なのでしょうか?

藤﨑:僕は3回目です。昨年は進行部長を務め、今年は代表を務めさせていただきました。

KIQ:3回目なのですね!代表は具体的にどんなことをするのですか。

藤﨑:そもそも東学祭企画委員会は進行部と広報部で構成されており、進行部は主にゲストの選定や企画の立案、作品募集、セレクションの全体統括などを行います。広報部は協賛企業とのやりとりや広報活動が主な役目です。代表はどちらにも属さずに全体を補佐する立場で、外部の人と連絡をとったり、他の映画祭に足を運んで挨拶をしたりなど、映画祭の顔になるようなイメージです。

KIQ:だいぶ多岐に渡りますね。宮本さんは?

宮本:私は、去年は別の映画祭の運営に携わっており、また映画祭に参加したいなと思って東学祭に応募したので今年が初めでした。役割は広報部のデザイン班に所属し、主に映画祭のパンフレットや予告編の制作をしていました。

KIQ:そうだったのですね。パンフレットを拝見しましたが、これだけボリュームがあるものだと、制作するのは大変だったのではないでしょうか?

宮本:私自身、これまでこんなにちゃんとしたものを作ったことがなかったので、ソフトの使い方などが慣れておらず苦労しましたが、なんとか形にすることができました…!

KIQ:こうやって形に残るって嬉しいですよね。
東学祭の審査員には、毎年日本の映画業界で活躍されている監督がいらっしゃるイメージがありますが、審査員に誰を呼ぶかも皆で話し合って決めているのですか。

藤﨑:はい、みんなで話し合って決め、連絡も自分たちでとっています。

KIQ:お声がけした時の監督のみなさんの反応はいかがですか?映画祭のために一生懸命な学生を応援したいと思う方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

藤﨑:本当にみなさんとても優しい言葉をかけてくださいます。それこそ、今年の企画上映では小栗庸平監督の『泥の河』を上映したのですが、小栗監督は栃木にいらっしゃったので交通費ぐらいしかお出しできなかったのですが「学生と話せるなら」と、とても心よくお引き受けくださいました。また、今泉力哉監督(代表作『愛がなんだ』)は台風の影響で来場できなくなってしまった監督に代わり、急遽登壇してくださったりなど、本当に毎年多くの監督がお力添えくださいます。

KIQ:みなさん手を差し伸べてくださるのですね。お二人のお話を聞いていると、大学と映画祭を両立することはすごく大変なのではないかと思ったのですが、なぜ藤﨑さんは3年間やり続けようと思ったのですか。

藤﨑:初めて委員会に参加した時に、何百本という応募作品を観て、こんなすごい作品を作る学生がいるんだ!と知ることができたり、素晴らしい作品にたくさん出会えたりしたことがすごく楽しかったからです。2年目は、自分の企画を通すことができて、大変でしたがそれもとても満足感があったので、今年もやりたいと思いました!

KIQ:なるほど。宮本さんは映画祭を終えた今、来年も参加したいと思われますか?

宮本映画祭の運営を2年間やったことで見えてきたこともあり、映画祭の運営は大変ですがその分の達成感も大きくて、何より楽しいので、現時点ではできれば来年もやりたいなと思っています。

重視するのは、作り手の想い。

毎年200本以上ある応募作品を委員会のメンバーで鑑賞し、1次審査から2次審査へ進む作品を選定するという。全員が映画制作の知識があるわけではない中で、どのように選定しているのか聞いてみた。また、学生映画ならではの魅力について熱く語ってくれた。

 

KIQ:映画祭の運営の中で一番苦労することや大変だなと思うのはどんなことですか。

藤﨑:一番大変なのは応募された作品を全て観てセレクションすることです。 今年はこれまでで一番応募数が多くて270本ほどあったので、それらを最終的に10本くらいまでに絞るのはなかなか大変でした。東学祭では1作品につき3人以上は必ず観ることにしているのですが、今年は委員会の人数も少なかったので…。

KIQ:選ぶ基準みたいものはあるのですか。

藤﨑:過去には大体の基準を決めていた時もありましたが、今年は特に全体での基準は設けていません。メンバーの全員が映画を学んでいるわけではないので、技術がどうというよりかは、作品を見た時にメッセージ性ややりたいことがすごく伝わってくるかなど、個人の感覚を重視して決めています。

宮本:そうですね、自分たちが観た時にどういう印象を受けたかということを、一番大切にしてみんなで決めていきました。

藤﨑絶対に多数決では決めないようにしているんです。全員で話し合って納得したうえで進めるようにしており、最終的に上映作品を決定するのは合宿で行っているのですが、朝から晩まで熱く話し合うのが恒例になりつつあります。

宮本:今年の合宿も先輩方が朝までずっと話していて、その熱量に圧倒されました…!

藤﨑:最後の一本を決めるために、2時間以上かかったりもします(笑)

KIQ:合宿で熱く語り合う光景は、まさに青春ですね…!!普段、映画館で見る商業映画と比べて、お二人が感じる学生映画の特徴はどんなところでしょうか。

藤﨑:やっぱり学生映画の場合は、個人的な話や身近な話をテーマにする人が多いです。作風としては、最近は会話重視の落ち着いた作品が比較的多い印象です。

宮本:私も同じく、学生の中にある想いや、より個人のパーソナル的な部分をテーマにした作品が多いなと感じました想いを伝えるための表現方法が人それぞれ異なり、本当にすごいなと感動しました。

KIQ:個人の経験や、想いを込める方が多いのですね。学生ならではの強みってありますよね、純粋な気持ちでただ撮りたいものを撮るってすごく素敵なことだと思います。大人になるとそうはいかなくなってきてしまう部分も多いので…。

藤﨑:今年、最後の授与式の時に三島有紀子監督(代表作『しあわせのパン』)が、誰に言われるのでもなく、ただ撮りたいから撮っているというのは素晴らしいことだから、撮り続けて欲しいといったことを仰っていたんです。その言葉を聞いて、本当に好きなことを撮れるというのは学生だからこそできることなんだなと改めて感じました。

 

後編では、今年の映画祭について振り返ってもらった。藤﨑さんがずっと悩んでいると語る、映画祭後の受賞した監督に対するサポートとは?そして、学生が業界の大人たちに求めていることは…?

【ENDROLL】「学生が運営する意義」東京学生映画祭 藤﨑諄さん・宮本采依さん ~後編~

 

 

【Information】


東京学生映画祭とは、「東学祭」の名で知られる、日本で最も長い歴史を持ち、企画・運営も全て学生のみで行っている学生映画祭である。これまで、『EUREKA』の青山真治監督、『君に届け』の熊澤尚人監督、『君の膵臓を食べたい』の月川翔監督など、日本の映画業界を代表する多くの監督の才能を発掘してきた。
公式HP:https://tougakusai.jp/
公式X:https://x.com/tougakusai  @tougakusai

 

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