業界人インタビュー
【ENDROLL】「お寺育ちのヨーロッパ志向」 MOTTO 谷川和子さん ~後編~NEW
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回は有限会社KICCORIT(キコリ)でSNS運用を担当するMOTTO(モット)に所属する谷川和子さんにインタビュー!
前編に続き、後編では谷川さんの映画遍歴や働きがいについて詳しく聞いてみた。
実家はお寺、母はヨーロッパ志向
KIQ: ご自身を「シネフィルではない」とお話しされていましたが、本当にやりたいことを考えた時に映画の仕事が挙がるほど映画がお好きになったきっかけは?
谷川: 完全に母の影響ですね。彼女がすごく映画好きで、VHSにテレビ放送されていた映画を録画したものが家にズラッとありました。夜に部屋を暗くして家族みんなで映画を観る習慣もあったし、TSUTAYAに行くのも母との日課でした。中学生になった頃はカッコつけて自分で選んで映画を借りていました。あと、私外国人のイケメンが好きだったんですよね(笑)年末に出るイケメンカレンダーとか持っていたし、ああいうのをスクラップしてイケメンを全部並べて部屋に貼り付けていました。
KIQ: すごい!(笑)
谷川: あと、母が必ずアカデミー賞を録画していたんです。それを観る文化もあったんですけど、私ってなんかカッコつけていたんでしょうね、ただのイケメンというより、スピーチがカッコよかった人がカッコいいって思っていたんです(笑)その時に好きになったのが、ガエル・ガルシア・ベルナルでした。
KIQ: センスがいい!
谷川: 2003年のアカデミー賞で彼がプレゼンターとして登壇していて、反戦を語っていたんです。「素敵!」ってなって、それからガエルを調べて彼の出演作を観ていました。あとメキシコとかスペイン系の濃い顔がかっこいいな……ってなって、映画でもイケメン外国人が出ているものばかり観ていました(笑)アカデミー賞も私は多分“最近のイケメン探し”として観ていたんです。だからシネフィル向けのアート系作品とか昔の映画とかは観てこなくて。海外に興味を持ってイケメンを探すためとか、「こういう恋愛いいなあ」ってラブコメを観るために映画を観ていたら、ヨーロッパに辿り着きました。『プライドと偏見』とか、ああいうのも結構好きで。あとは母が結構ヨーロッパ寄りの思考だったので、家でもイギリス映画をよく観ていました。
KIQ: そこでレオナルド・ディカプリオとかもっとメジャーな俳優の名前が出ないのが面白いですね。
谷川: カッコつけていたんだと思います。母が捻くれ者だったので、ミーハーじゃないところに行くタイプとか、そういう血を多分引き継いでいるんですよ。母がアメリカのハリウッド映画をあまり観なかったし、マーベルも観なかったから私も映画業界に入るまでそういう作品はほとんど観たことがありませんでした。
KIQ: 早く就職活動を終わらせて海外に行きたいと前編で話されていましたが、それもやはりヨーロッパに行きたかったんですか?
谷川: はい。大学入った後も1年休学してイギリスに行っていました。ジェイン・オースティンの『傲慢と偏見』やシャーロット・ブロンテの『ジェーン・エア』やエミリー・ブロンテの『嵐が丘』などの作品で描かれる女性のように自立して強く生きなきゃ、自分の足で立たなきゃって感化されましたし、イギリス作品はああいう女性が好きで観ていた節もあります。
KIQ: 家族でイギリス映画を観たり、イギリス的な文化に興味があったりとお家がヨーロッパ志向だったんですね!
谷川: まあ、実家は長野のお寺なんですけどね(笑)
KIQ: ええ!? ギャップがすごい!(笑)
谷川: 私は3人兄妹の末っ子でもありましたが、あまり“お寺の教育”みたいなものもなく自由に育ててもらいました。仏の影響とかも特に受けていないし(笑)ただ、お寺のお手伝いとか、夏にはお経を読むとかはしていましたよ。
映画が、私の存在価値をくれる。
KIQ:映画業界に戻って少し経つということですが、悩んでいた以前と比べて今はどうですか?
谷川: もちろん悩んだりしますが、楽しいです。そしてまたやり続けなきゃ分かんないって感じもあります。ただ自分の中でいろんな時間や期限に追われている気持ちもあるので、手探り状態でずっと続けていくわけにはいかないし、色々と整えていかなきゃと焦る気持ちもあります。でもやはり映画はいいですね。本当にやりがいがあるので、そこに対してコミットできる生き方が定着したらいいなって思っています。
KIQ: 忙しい業界ではありますから、特に女性は色々考えることが尽きないかもしれませんね。
谷川: 悩みますよね。答えもわからないし。でも、ずっと悩んでいても時間は経ってしまうんですよ。1年とか一瞬で過ぎちゃうし、そのロスが私の中で今すごくもったいないと感じています。だから悩み続けるけど後悔はしないように行動していかないと、って。なんか私たち女性がこういう仕事やプライベートの選択を迫られたり、身体のことで悩まされたりするのは本当にやめてほしいです(笑)。
KIQ: 大変なことばかりですけど、それでも今の仕事にどんなやりがいを感じますか?
谷川: やはり映画好きっていうのは根本にありますよね。好きなことができるって、やはり楽しいしそれが何かのために、誰かのためになっているとか、その接点を感じられると自分自身の存在価値を感じることができます。そこが私にはやりがいだし、そうじゃないと仕事って楽しくないんじゃないかなってことを違う業界に行って思いました。自分自身が生きていると感じられる時間でもあるので、そこは決して今後もなくしていきたくないですね。
KIQ: 他の業種を体験したからこそ感じる、映画業界とほかとの相違ってありますか?
谷川: キコリの人たちがそうなのかもしれませんが、やはり仕事に対して思いや情熱を感じます。でもそれって、別にどういう生き方も正解じゃないですか。仕事として割り切って働くのも正解だと思う。ただ、自分が一緒に働くならどんな人が良いかっていうと、仕事に何かやりがいを感じたり、面白がったりしている人と一緒に働けると自分もとても気持ちよく働けて、仕事が倍楽しくなると思いましたね。そういう場所に身を置いて働きたいと感じました。もちろん仕事のきつさもありますが、それでも離れるとやはり物足りないというか、ちょっとつまんないなあって思う。でも面白いことをやるために頑張りすぎると、だんだんバランスが取れなくなってくる。ここは映画業界ならではのもどかしさなんじゃないかなと思います。
KIQ: 最後に、今後ご自身の仕事で目標にしていることを教えてください。
谷川: MOTTOはまだまだ未完成のチームなのでまずはしっかりと完成形にしていくこと、そしてMOTTOだからお願いしたい、MOTTOがいて良かった、助かったと言われる存在になりたいです。また今後の長期目標でいうと、今多様な働き方が増えている中で、映画業界で働きたいという気持ちがあるにも関わらず、何かしらの理由で働くのが難しくなった人もいると思うんです。そんな色々な制約がある人が、力を発揮できるそんな場所になれればと思っています。
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