業界人インタビュー
【ENDROLL】「ミーハー気質が肝心!」株式会社KADOKAWA 三浦雅史さん ~後編~
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
今回も、株式会社KADOKAWA 映像事業局 映像営業部 映画営業課にて、劇場営業を担当されている三浦 雅史さんにインタビューした内容をお届けする。
後編では、映画公開初週の成績がその後の上映期間に影響することや、都心と地方の集客格差の問題、さらには、今後は劇場への客足が減ってしまう可能性があることなどについて聞いてみた。また、三浦さんが地方出張に行った時の忘れられない出来事とは!?
【ENDROLL】「夢を追い続けてー。」株式会社KADOKAWA 三浦雅史さん ~前編~
公開3日間で運命が決まる!?
業界関係者なら必ずといって良いほどチェックしている週末動員数。特に公開週の数字には一喜一憂しがちだが、いったいなぜそれほどに初週の動員が重要なのだろうか?
KIQ:最近は、お客さんがあまり入っていないと、公開後1ヶ月ほどで上映が終了してしまうことも多いですよね…。やはり上映期間は初週の記録が影響するのでしょうか。
三浦:そうですね、初週の数字、特に金曜公開の場合は日曜までの初動3日間で最終的な興収がいくらになるかが、大体決まってしまうと言われているんです。公開後に、後追い型で急激に興収が伸びるような作品は年に極僅かというのが現状です…。
KIQ:へー、それは知らなかったです。
三浦:毎週月曜日になると公開から3日間の数字が出るので、その結果によって2週目以降の上映回数について劇場と相談していきます。
KIQ:それは確かに公開3日間の記録がすごく重要ですね!ちなみに、映画の公開初日は劇場を回られるんですか。
三浦:基本的にメイン館の初回の上映には立ち会うようにしています。メイン館だけに限らず、例えば朝と夜では客層が違ったりするので、チーム内で都内近郊のいくつかの劇場を時間差で回ったりもします。その際に、全ての作品がそうではありませんが、女性の客層が多いと良い兆候だなと思ったりとか。
KIQ:男性より、女性が多い方が良いのですか?
三浦:女性の方が映画の感想をSNSなどに書き込みをしてくれる方が多く、かつ、1人より複数人で来場する傾向にあるので、女性がたくさん来ている作品は比較的あたりやすいと言われているんです。
KIQ:そういった部分も実際に劇場に足を運んでチェックされているんですね。
これまで長年営業をされてきて、今でも大変だなと思う瞬間はどんな時でしょうか。
三浦:良い映画だけど、なかなか集客が難しそうだなという作品を売り込む場合、編成の方たちと、どうやってお互いに気持ちよく商売できるようにするかということはやっぱり難しいですね。
KIQ:具体的にはどういった意味でしょうか。
三浦:お互いにこれまでの経験から、この作品はヒットの可能性があるんじゃないかとか、これは当てるのが難しそうだなというのがなんとなくわかっている中で、僕らはそれでも作品を売らなきゃいけないですし、一方で、編成の方は1円でも多く劇場にお金を入れないといけないので、そこをどうやって折り合い付けていこうかというのが、楽しくもあり、大変な部分でもあります。
KIQ:なるほど。
三浦:日本人は年間1人あたり1.5回映画を観るか、観ないかという国なので、もう少し国民全体が映画を観る国であったら、また違うのかもしれないですよね。1年に観る1本か2本をみんなで取り合っているという状況下での勝負なので、厳しいマーケットではあるなとは思います。
ミーハー気質が重要!
最近よく耳にする、都心と地方での集客の差が大きくなっていることについて、ある事情があることが発覚!また、これまでで一番の思い出は、出張先でずっとファンだったあの俳優に遭遇したことなんだそう!
KIQ:就職した当初と比較して、業界の変化を感じる部分はありますか。
三浦:いろいろなことの二極化が進んだなと思います。1つは、業界自体はコロナ禍から客足も興収も順調に回復してきているものの、内訳としては特大ヒットする作品とそうではない作品の二極化がますます進んだなと。あと、都心と地方での集客差も拡大したように思います。
KIQ:都心と地方の差は、最近すごく良く耳にします。
三浦:一部作品を除いてですが、10年前と比べると宣伝費は減っている傾向にあると感じています。そうして減らした結果、どこにシワ寄せが来るかというとローカル(地方)なんですよね。ローカルの宣伝にかける予算がないことで、テレビCMが流せなかったりするため、結果としてローカルの方々がミニシアターで上映されるような規模の作品に触れる機会がどんどん減ってきてるなというのは感じています。
KIQ:そういった事情があったのですね。
三浦:あとは、劇場に関しても、ミニシアターが減ったのに対してシネコンのスクリーンの数は増えているので、その二極化もコロナをきっかけに加速されたなと。
KIQ:そう考えると、やはりコロナの影響は大きいですよね。
三浦:そうですね、コロナ以降の一番大きな変化で言うと、やっぱり配信がより浸透したことでしょうか。今は劇場から配信までのスキームがコロナ前と比べて格段に早くなっているので、興行とのバランスをうまく保つ必要があると感じています。「どうせすぐに配信するから劇場で見なくていいよね」にならないように、劇場でしか味わうことができない体験や旨味を作品毎に考え抜くことが肝要かなと思います。
KIQ:最後に、これまでで一番思い出に残っているエピソードはありますか?
三浦:以前、出張で名古屋にあるシネマスコーレという劇場を訪れたときに、偶然その日にシネマスコーレを作った若松孝二さんを描いた『青春ジャック 止められるか、俺たちを 2』(2024)の撮影をしていて、俳優の井浦新さんがいらっしゃっていたんです!僕、人生で一番好きな映画が『ピンポン』(2002)で、昔からすごく井浦新さんのファンでして。それを支配人の方に伝えたら、井浦さんにご挨拶する機会をいただきまして…!井浦さん、本当にすごく良い方でした!
KIQ:すごい偶然ですね!仕事を通じて好きな俳優さんにお会いできるのは、素直に嬉しいですよね。
三浦:やっぱりミーハーの気質があるとより楽しさを感じることのできる業界ではあると思うので、ミーハーでよかったなと思いました(笑)
KIQ:(笑)他にも何かモチベーションになっていることはありますか。
三浦:他社の配給会社の方に「あの映画が良かった」と自分の会社の作品を褒められたりとか、仕事で頼られたりした時は嬉しいです。営業をしていなかったら、こんなに業界の中で横の繋がりを持つことはできなかったと思うので、営業をやっていてよかったなと思います。
【ENDROLL】「夢を追い続けてー。」株式会社KADOKAWA 三浦雅史さん ~前編~
【Information】
『密輸 1970』7月12日(金)公開
『モガディシュ 脱出までの14日間』のリュ・スンワン監督が衝撃の実話から着想を得て作り上げた海洋クライム・アクション。
舞台は、1970年代の韓国の漁村クンチョン。海が化学工場の廃棄物で汚され、地元の海女さんチームが失職の危機に直面し、リーダーのジンスクは海底から密輸品を引き上げる仕事を請け負うことに。ところが税関の摘発に遭い、ジンスクは刑務所送りとなり、親友チュンジャだけが現場から逃亡。その2年後、チュンジャは、出所したジンスクに新たな密輸のもうけ話を持ちかける…。巨額の金魂を巡り、騙し騙されの騙し騙されの大乱戦がはじまる!
監督:リュ・スンワン
出演:キム・ヘス、ヨム・ジョンア、チョ・インソン、パク・ジョンミン、キム・ジョンス ほか
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『Re:ゼロから始める異世界生活 劇場型悪意』
ライトノベル MF文庫Jの大人気小説「Re:ゼロから始める異世界生活」のアニメーションシリーズ。
3rd season 2024年10月放送開始。
第1話90分SPを8/30(金)より全国劇場にて先行上映決定!
原作小説38巻は好評発売中。
声の出演:小林裕介、高橋李依、新井里美、岡本信彦 ほか
(C)長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活3製作委員会
『ヒットマン』9月13日(金)公開
『6才のボクが、大人になるまで。』を手がけたリチャード・リンクレイター監督の最新作。
プロの殺し屋を演じ70件以上を逮捕に導いた人物の実話を基にしたクライム・コメディ。
ニゲイリー・ジョンソンは、大学で勤務する傍ら、偽の殺し屋に扮し依頼殺人の捜査に協力していた。そんなある日、支配的な夫との生活に傷つき、追い詰められた女性・マディソンが、夫の殺害を依頼してきたことで、ゲイリーはモラルに反する領域に足を踏み入れてしまうことになる。
監督:リチャード・リンクレイター
出演:グレン・パウエル、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ ほか
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【Back number】
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