業界人インタビュー
【ENDROLL】「三刀流プロデューサー」株式会社WOWOW 大瀧亮さん ~後編~
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回も、『アキラとあきら』(2022)、『ゴールデンカムイ』(2024)、『ディア・ファミリー』(2024)、そして本日5月17日公開の『ミッシング』など、数々の映画のプロデューサーを担ってきた、株式会社WOWOW事業局プロダクション事業部 チーフプロデューサーの大瀧亮さんにインタビューした内容をお届けする。
後編では、実はマネージャーよりも大変な、業界人でも意外と知らないプロデューサーの様々な役割について聞いてみた。また、大瀧さんが一人で1から映画配給に挑戦した理由とは…?
★【ENDROLL】「ホリプロからWOWOWへ」大瀧亮さん ~前編~
作品は、我が子。
こんなにもプロデューサーが大変だったとは…!常に複数の作品を同時に動かさざるを得ない理由など、映画のプロデューサーだからこその苦悩について教えてもらった。
KIQ:入社されてからこれまでで一番大変だった出来事は?
大瀧:毎日が大変です…!(笑)プロデューサーってこんなに大変なんだと最初の頃は本当に驚きました。マネージャーよりずっと大変だなというのが、正直な感想です(笑)
KIQ:失礼ながら、マネージャーさんの方が大変なイメージでした…!
大瀧:そうですよね、よく言われます(笑)プロデューサーって、ある意味で各作品のマネージャーなので、とくにWOWOWが製作幹事会社の作品の場合は、映画を生み出すところから、公開が終わった後の二次利用展開まで、一番長くその作品に深く携わることになるので、例えるなら自分の子供を育てあげて、巣立ってからもずっとみているような感覚なんです。
KIQ:しかも、常に複数の作品をご担当されているわけですよね?
大瀧:はい。映画の制作は、枠と予算が決まっているものではない以上、成立するかしないかが確約されていない中で企画をスタートせざるを得ないので、縁や巡り合わせによっては制作や公開のタイミングが重なってしまうことも多々あります。
KIQ:それは大変ですね…。
大瀧:また幹事会社のプロデューサーは制作会社、現場のスタッフ、宣伝や配給会社、各出資社…と向き合う方々も多岐にわたるので、それも大変な側面ではあります。
KIQ:確かに、映画って関係者が相当な数いますよね。
大瀧:日本映画ではスタンダードな製作委員会方式では、共同事業という形である以上は、皆さんの意見をしっかりと伺いながら、皆さんが持っているリソースを最大限に引き出して、作品の成功に当てはめていくようにすることがプロデューサーの重要な役割なんです。
KIQ:プロデューサーさんって、全責任を負う人というイメージがあります…。
大瀧:そうですね、でも全ての方面に関われるというのは、ある意味ですごく贅沢な環境だなと常にに感じています。
配給営業から宣伝まで、一人でやってみた!
プロデューサーという立場だからこそのある欠点に気づいた大瀧さんは、映画の配給業務に一人で挑戦!また、業界の未来に対して危機感を抱いていることについても語ってもらった。
KIQ:今後の目標や挑戦したいことはありますか。
大瀧:今回『ミッシング』を通して、クリエイターの才能に触れる楽しさを改めて感じたので、引き続き実写のプロデューサーはやっていきたいです。素晴らしい才能を持っている方を開花させて、より新しい感動をお客さんに届けていきたいなと思っています。それ以外だと、今は配給にも挑戦しているので、そちらも頑張っていきたいなと!
KIQ:配給するのは、WOWOWさんのこれまでの作品ですか。
大瀧:はい。WOWOWで過去に放送した音楽コンテンツやドラマなどを再編集して、映画館に持っていくということをやっています。というのも、映画館の大スクリーンに映し出すことで得られる映像体験や、映画館でだったら見たい!というお客さんも必ずいらっしゃるだろうなと思ったんです。それが想像以上に軌道に乗ってきていて、弊社映画事業の一つの柱になってきているので、今後はこちらの可能性も広げていきたいなと。
KIQ;なるほど。そもそも配給はどういうきっかっけで挑戦しようと思われたんですか。
大瀧:映画業界って、それぞれの局面でそれぞれのプロフェッショナルが担っているという分業制のため、プロデューサーだけをやっていると、どうしても見える景色って局所的になってしまったりするんです。でも、それはすごくもったいないな!と思い、4、5年ぐらい前に配給を自分で一から始めてみたんです。
KIQ:映画の興行会社に「この作品を一緒にやりませんか?」と提案するなど、いわゆる配給営業も大瀧さんご自身でされたのですか。
大瀧:はい。シネコンはもちろん、地方のミニシアターにも1館1館電話をかけて営業をしました。宣伝もやってみようと思い、自分でリリースを書いたり、取材日を仕込んだり、舞台挨拶の台本書いたりなどもしてみました。
KIQ:本当に全ての業務をお一人でやられたんですね、すごい…!
大瀧:特に作品が完成して以降は、プロデューサーは監修業務がメインになってくるので、配給・宣伝の皆さんの業務がどれだけ大変なのかは、ちゃんと知っておいた方がいいだろうなと思いまして。そうすると、相手の立場もよりわかることができるかなと。
KIQ:最高のプロデューサーさんですね!最後に、映画業界に対してもっとこうなればいいのなと思うことはありますか。
大瀧:弊社でも若い映画作家さんを応援する賞などに協賛したりしているんですが、賞をもらっても20〜30代前半の方がすぐに活躍できる場が、まだなかなかこの映画業界には用意できていないなと思うので、それは今後業界全体で考えていかないといけないと思っています。
KIQ:新人の方に挑戦できる機会を与えることは、どうしても賭けになってしまう部分もあると思うので、民間の企業ではそれをやる資金面での余裕がなかなかないのが現状ですよね…。
大瀧:そうですね、民間でやるには限界があるように思います…。
KIQ:そうすると、いま是枝裕和さんらが声をあげて設立を目指している「日本版CNC」のように、業界全体で若手をサポートできるような仕組み作りが必要なんでしょうか。
大瀧:そうだと思います。あとは、国からの支援などもあると、才能のある若手のクリエイターたちの作品をシネコンで上映するなどの機会を作ってあげることができるのではないかと思います。
★【ENDROLL】「ホリプロからWOWOWへ」大瀧亮さん ~前編~
【Information】
『Vaundy one man live ARENA tour“replica ZERO”』5月10日(金)より期間限定で公開
令和の音楽シーンを牽引する代表的アーティストとなったVaundy。そんな彼が2024年1月21日(日)に実施したアリーナツアーのファイナル公演・代々木第一体育館でのライブを再編集。アルバム制作期間やアリーナツアーを帯同して撮影された未公開舞台裏ドキュメンタリー映像も初公開!
ライブ映像だけでなく、アルバム『replica』にも収録された”ZERO”や”replica”の制作秘話や、楽曲やライブパフォーマンスの背後にあるVaundyの核となる部分を垣間見ることができる。
出演:Vaundy
配給:WOWOW
(C)WOWOW (C)SDR
『ミッシング』5月17日(金)公開
ある日突然いなくなった愛する娘・美羽。美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、次第に心を失くしていく。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に——。
監督・脚本:吉田恵輔
出演:石原さとみ、青木崇高、中村倫也 ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
©︎2024「missing」Film Partners
(※吉田恵輔の「吉」は、正式にはつちよし)
『ディア・ファミリー』6月14日(金)公開1970年代、生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は 「余命10年」を突き付けられてしまう。絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が作ってやる」と立ち上がるが、医療の知識も経験も何もない。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる―。
監督:月川翔
出演:大泉洋、菅野美穂、福本莉子 ほか
配給:東宝
(C)2024「ディア・ファミリー」製作委員会
【Back number】
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