業界人インタビュー
【ENDROLL】「演出とは気配り」株式会社日テレイベンツ 足立実央さん ~前編~
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回は、日本テレビグループの総力を駆使して、テレビ番組の制作発表や映画・配信作品のPRイベントなど、様々なイベントや式典の企画・制作を手がける株式会社日テレイベンツの足立実央さんにインタビュー。
前編では、足立さんのこれまでに歩みに加え、イベントの企画の手順や、演出のアイディアはどう生み出すのかなど、イベント制作の裏側について詳しく聞いてみた。足立さんがイベント作りにおいて大切にしていることとはー。
★【ENDROLL】「新次元のフォトセッション」株式会社日テレイベンツ 足立実央さん ~後編~
島根にいる親に届けたい
足立さんが業界に入ったきっかけとは?また、目新しいことが求められがちなイベントの演出において、日々どのようにアイディアの種になる情報をインプットしているのか聞いてみた。
KIQ:業界に入ったきっかけは?
足立:2003年に新卒で日本テレビエンタープライズという番組制作の会社に入社しました。なので、もう20年くらいになりますかね。
KIQ:新卒の時からこの業界に勤められているんですね。なぜ映像業界を志望されたんですか。
足立:子供の頃からずっとテレビマンになりたかったんです。出身が島根なんですけど、島根から出て、島根にいる親にも届く仕事をしたいと思った時に「テレビしかない!」と勝手ながら思ったんです。
KIQ:入社してから今日まで、どんなご経験をされてきたのでしょうか。
足立:初めは資料や映像を探すなど番組のAD的なことをやって、3年目の時に部署異動でイベント制作の部署に移り、日本テレビのイベント制作などを担当していました。その後、日本テレビグループの再編によって現在の「日テレイベンツ」という社名に変更になり、今に至ります。
KIQ:現在のメインの業務はイベント制作ですか?
足立:そうですね、今のチームは9割くらいが映画や配信作品など映像作品のイベント制作を行なっています。他のチームだとお役所のイベントや日本テレビのイベントなど、会社としては様々なイベントの企画・制作をしてます。
KIQ:映像作品のイベント制作って、依頼を受けたらまずはどんなことから取り掛かるのでしょうか。
足立:基本的には初めにオリエン(オリエンテーション)を受けます。そこで、どういう作品か、ターゲットは誰か、どういう売り方をしていきたいのかなどを聞いて、イベントとしてそれにどう最短距離で近づけるかを考えるところから始めます。もちろん合わせて作品も鑑賞します。
KIQ:イベントの演出方法って最先端の技術を使ったりとか、これまで誰もやったことのない真新しいことを求められがちな印象を受けますが、そういった情報はどうやってインプットされているんですか。
足立:今流行ってるものは、社内の若い世代の子たちが教えてくれるというのもありますが(笑)、結構みんなイベントで使えそうだなと思うことは街中とかで日々考えてると思います。例えば、少し前に社内で話題になっていたのが、ちょっと古いかもしれないですけど「プリントラテ」と言って、撮った写真をラテアートとしてプリントできるというものです。私は最近それを知って「すごい!やりたい!」と思っていたら、既にアニメ系とか韓国アイドル系の界隈では知れ渡っているもののようで…(苦笑)残念ながらそれは採用には至りませんでしたが、そうやって面白いことを発見したときにはお互い積極的に情報共有してます。
引用元:ラテプリ公式HP|株式会社バレル(Barrel,Inc.)
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演出とは、気配りである。
盛大で華やかに行われるイメージのあるイベントだが、その裏側には足立さんたちの努力や苦労があった。足立さんが今でも大切にしているという上司の言葉とはー。
KIQ:イベント制作の過程で一番大変というか、苦労する部分は?
足立:やっぱりイベントのアイディアを出してから、やることが具体的に決まるまでが一番大変ですね。方向性さえ決まってしまえば、あとはゴールに向けて良いチームを組んで全力を尽くすのみ!というか。
KIQ:アイディア出しは、御社が全て行うんですか。
足立:案件によっては作品の宣伝会社さんも含めて一緒に考えることも多いです。できれば早めに一緒に話せると嬉しいなとは思いますね。というのも、やっぱりアイディアは多い方がいいですし、宣伝とイベントでそれぞれアイディアを持ち寄って一緒に考えられると、よりベストなものが生まれやすくなるのかなと。
KIQ:確かにアイディアはたくさんある方がいいですよね。御社は、宣伝が「こんな感じで良い感じにまとめてください」と渡したピースを、どうやったら面白く見えるのか具体的な演出を考えて、うまくパズルを完成させるところが本当にすごくプロだな!といつも感じています。
足立:ありがとうございます(照)
KIQ:そのあたりのアイディアとか妄想力みたいなものはどうやって生み出していくんですか。
足立:ベタですけど、社員だけでなく美術さんなどの関係者を含めてみんなで集まってブレスト(ブレインストーミング…複数人で意見を出し合い、新たなアイディアを多く集めること)は結構行いますね。とはいえ、そこで「面白い!」って盛り上がったアイディアを宣伝側に提案したら、全然駄目だったみたいなこともよくありますが…。
KIQ:あと御社の魅力は、ステージ作りはもちろんですけど、そこに至るまでのケータリングや控え室の準備など、演者だけではなくスタッフも含めて全員が気持ちよくイベントができるような気配りが行き届いてるところがさすがだなと。
足立:みなさんが少しでも気持ちよく、楽しい気持ちでイベントができたらいいなというのは常に考えていますね。例えば、控え室に置くお菓子ひとつをとっても作品のモチーフに近いものを選ぶとか。あと、過去には演者さんの似顔絵を書いたポップを作って置いておいたら、演者さんがそれを撮ってSNSにあげてくださったこともありました。
KIQ:すごい!それも作品を認知してもらうのにすごく効果的ですよね。そうすると、イベント制作には気配りができる人が向いてるのでしょうか。
足立:相手のことを考えられる人というと大袈裟かもしれないですけど、そういった方が向いてるとは思います。私がイベントの部署に来て間もない頃に、上司から“演出とは何か”を学んだことがあって。その上司が言うには「演出とは、例えばコーヒーカップを物撮りするように言われた時に、コーヒーカップの横に麻袋を置くとか、コーヒー豆を並べてみるということまで考えることが演出である」と。その言葉がすごく記憶に残っていて、今でも大事にしています。
後編では、仕事が楽しいと語る足立さんに、その理由を詳しく聞いてみた。また、足立さんが今最も変えたい!と思っているある演出とは?
★【ENDROLL】「新次元のフォトセッション」株式会社日テレイベンツ 足立実央さん ~後編~
【Back number】
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