業界人インタビュー

【ENDROLL】「業界の存在危機」ぴあ編集部 中谷祐介さん ~後編~

2024-02-09更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」

 

今回も前回に引き続き、ポスターやチラシなど映画宣伝ビジュアルを制作しているぴあ株式会社ぴあ編集部 中谷祐介さんにインタビュー。

後編では、映画好きの若者へ向けたアドバイスや、業界の存在危機を感じた出来事について熱く語ってくれたことをお届けする。また、“映画とメディア”について中谷さんがいま感じていることとはー。

 

【ENDROLL】「映画の人格」ぴあ編集部 中谷祐介さん ~前編~

 

人生を伴走できる監督

中谷さんに好きな映画ジャンルと監督について伺うと、どちらも思いがけない答えが返ってきた!

KIQ:中谷さんは全てのジャンルにお詳しいというイメージがありますが、苦手な映画のジャンルとかってあるんですか。

中谷:苦手なジャンルは……ないと思います。というのも、ジャンルって何だろうっていつも思うんですよ。だって、『カーズ』以外は全部人間ドラマじゃないですか。『カーズ』を人間ドラマだというのはちょっと苦しいけど、それ以外は大体、人間が出てくるわけですし(笑)

KIQ:確かに!!(笑)

中谷:そう考えると、皆さんもジャンルで好き嫌いを判断せずに、もっと気軽にいろいろ観てみると、意外に好きになったりするかもしれないですよね。

KIQ:ちなみに、中谷さんの好きな監督は?

中谷:好きな監督っていっぱいいるから答えるのは難しいんですけど、自分と同じ時代を走っている監督は特別ですかね。自分が生きている間に新作をリアルタイムで観ることができる監督を何人作れるかは、映画ファンにとっては一つの財産だと思います。監督がどんどん変化していくのを、自分も変化していきながら追いかけていけることはお金では買えない財産で、映画を何本も観ることよりずっと価値のあることではないかと。

KIQ:それ、すごく素敵ですね!中谷さんにとってはどなたになるのでしょうか。

中谷:僕にとっての日本の同時代監督は、黒沢清監督、塚本晋也監督、是枝裕和監督なんですけど、彼らの映画を観ることは、世界の名作を観る、名監督の映画を観るのとはまた違った想いがあります。だから、若い映画ファンの方もぜひ「自分と伴走してくれる同時代の監督」を見つけてもらいたいです。

『RRR』をヒットさせたのは誰?

『RRR』が大ヒットしたことを通じて、中谷さんは業界の存在の危機を感じたという。今、業界人が考えるべきこととは…?

KIQ:今の映画業界に対して、何かこうした方がいいとか不満に思うことがあれば教えてください。

中谷:あまりないですけど、映画ファンとしてはカンヌやベルリンなど世界の映画祭で賞を取っていたり、評価されていたりする映画が日本で公開されないことがあるので、そこは何とかしてほしいですね。

KIQ:それって、例えばカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを取るような作品って、少し小難しいので日本でヒットさせることが難しかったりするじゃないですか。そういうことも原因なんですかね。

中谷:でも、過去には『パラサイト 半地下の家族』のような海外で評価された映画も日本でヒットしていますし、海外で大ヒットした映画でも日本ではあまり当たらない場合もありますし。

KIQ:そうすると売り方次第なのでしょうか。

中谷:うーん、どうですかね。僕は映画の宣伝や配給の人間ではないので、いち映画ファンとしての意見になってしまうのですが、一つ言えるのは、お客さんの方が僕ら業界人よりも、その作品の魅力をわかっていたというケースはあると思います。というのは『RRR』がヒットしたのは劇場での公開がもう終わりかけていた頃でしたよね。あの件って、業界人全員が改めて考えた方がいいと思うんですよ。

KIQ:えっ!?

中谷:あの時って世間では、『RRR』がめちゃくちゃ面白いらしいけど、上映回数が減っているし、上映劇場も少ないって言われていましたよね。でも、口コミが広がっていって、新たに観客が来たから、結果的に上映回数や上映を再開する劇場が増えてきて、映画がヒットしたわけじゃないですか。つまり、メディアは公開前に『RRR』の魅力をうまく観客に伝えられなかったし、映画館はもう客は来ないだろうという理由で公開回数を減らしていたということなのかもしれないですよね。

KIQ:そうですね…。

中谷:そう考えると、『RRR』をヒットさせたのは、日にお金を払ってわざわざ映画館に行った人たちですよね。それを「口コミで大ヒット!」って、我々は簡単に書くけれど、そんな簡単なことじゃないよね!?と思うんです。なので、この件は「メディアも配給も宣伝もこの映画の魅力に気づけなかった」って言われてもおかしくないことだと。良い映画と良い客と映画館があれば、それでいいって言われてしまうかもしれない。

KIQ:仰る通りですね…。もしかしたら、既にそういう世の中になりつつあるのかもしれませんね。

中谷:結果として映画館に足を運んだ人たちの情熱と熱い声で『RRR』はヒットしたわけですから、それは本当に良かったと思うんですけど、業界人は改めてこのことを1回考えなきゃいけないんじゃないかなぁと思います

今、メディアで映画の何を伝えるか

ここ数年でメディアのあり方は随分と変わった。メディアとしての「ぴあ」の変遷を近くで見てきた中谷さんは、映画とメディアについて何を感じているのだろうか。

KIQ:ぴあさんは最初雑誌が創刊されて、その後「ぴあ映画生活」という口コミを中心としたWEBサイトができましたが、それも終了となり、現在はアプリがメインになっていますよね。中谷さんから見てこの数十年のメディアの変化や、メディアと映画の関係ってどう変わってきたと思われますか。

中谷:口コミがある以上、メディアが嘘をつくことが難しくなった時代であるというのは一つあると思います。でもその一方で、毎日みんな忙しいし、他に考えなきゃいけないことがたくさんあるわけだから、1個1個のことに労力をかけて考えていられないのも事実だと思うんです。その時に、どうやってその人たちに情報を伝えるのか?はいつも考えます。

KIQ:なるほど。

中谷:だから、「お忙しいでしょうから、わかりやすくしておきました」と言うこともあるだろうし、「お忙しいとは思いますが、これは時間をかけて考えなきゃいけない複雑な問題なんですよ」って言わないといけないこともあると思うんです。世の中にはどれだけ複雑であっても、時間をかけて考えなければならない問題が確実にあると思うので。だから、誰もがSNSなどを通して何でも言えるようになってきた以上、メディアは「楽しいですよ」「良いですよ」だけではもう通用しない気がします。だって、それはX(旧Twitter)を見ればいくらでも書いてありますし、実際にお金と時間を使った人の声は正直ですから。

KIQ:ではご自身がぴあさんで何かの特集を組む際も、そういったことを意識されているんですか。

中谷:僕が考えていることはたかが知れているんですが、こういうふうに映画を観るともっと面白いかもしれませんよ、とか、作ってる人たちはこういうこと考えてますよ、ということを伝えることはできるで、そこは続けていきたいと思っています。あと、僕が常に忘れないようにしようと思っていることは、一番映画に対して情熱を持っているのは、やっぱり休日にわざわざお金を払って映画館に行く人たちだということです。これは絶対に忘れちゃいけないことだと思っています。だから仕事や家事や学校などで毎日、大変な想いをしている人が記事を読んで、この映画を観に行ってみたい、映画館に行ってよかったと思ってもらえたらと思っています。

 

【ENDROLL】「映画の人格」ぴあ編集部 中谷祐介さん ~前編~

 

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