業界人インタビュー

【ENDROLL】「十人十色の言葉」映画・音楽パーソナリティ 奥浜レイラさん ~後編~

2023-12-01更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」

前回に引き続き、今回も映画の舞台挨拶やSUMMER SONICなどの音楽イベントのMCに加え、ラジオパーソナリティやライターなどマルチに活躍している奥浜レイラさんにインタビューした内容をお届けする。

後編では、奥浜さんが最近映画の感想を述べることについて感じていること。そして、これまで女性MCとして活動してきた中で感じてきたことや、現在の映画宣伝の仕方について抱いた違和感について率直に語ってくれた。

 

★【ENDROLL】「黒子と個性」映画・音楽パーソナリティ 奥浜レイラさん ~前編~

映画の感想は自由でいい

奥浜さんが携わった作品の感想投稿をチェックする際に、MCやライターとして「しまった!」と思うこととは?

KIQ:MCの魅力ややりがいはどういったところですか?

奥浜:舞台挨拶とかトークイベントをきっかけにその作品を知ってくれる人もいると思うので、作品がヒットすると、ヒットはもちろん全く私のおかげじゃないんですけど、ただその作品に携わる端の方の一員として、作り手の方々のお手伝いができたかなって思えた時が嬉しいです。

KIQ:では、携わった作品の興行収入やSNSでの反応は結構チェックしますか?

奥浜:しますね。観客の方がどういう言葉でその映画の感想を書くのか気になるので。その時に、これは他のライターの方とも話すんですが、自分が舞台挨拶の中で作品の感想を述べる際に使った表現と同じ表現を誰かの投稿の中に見つけると「あっ!しまった!」って思うんです…。

KIQ:それはどういう意味でしょうか?

奥浜:本当はその人が感じたことを率直に書いてもらうのが良いと思うのですが、私が強めの言葉や表現を使ったから、その方の感想が私の言葉に引っ張られちゃったかもって。少し考えすぎかも知れませんが。

KIQ:そのように思われるんですね。でも、例えば自分のモヤモヤしていた感情をうまく言い表してくれた!と思って、同じ表現を使ったということもあると思いますよ。

奥浜モヤモヤでも、それをそのまま書いてもらえればいいのに!と。もっと映画の感想は自由でいいんだよなーって最近すごく思うんです。例えば、過去に関わっていた作品で賛否両論いろんな感想が出た映画がヒットしたことがあったんです。その時に、人ってもちろん面白い映画を観たいと思って映画館に行くんだけど、他人がマイナスに感じた部分にも興味をひかれて、自分はどう思うのかを確認しに行くようなところもあるんだろうなって

KIQ:なるほど。確かに、私もものすごく評判が悪いと逆に気になって観に行ったことがあります(笑)

奥浜:え、そんなに⁉って気になりますよね(笑)だから、他人の感想に引っ張られずに、モヤモヤのままの感想でも、マイナスな感想でもいいから、とにかくその人が感じたままを自由に書いてもらう方が、映画の多面的な魅力の発見に繋がるのではないかと思ったんです。

性別で括らず、個性で捉えて 

奥浜さんが感じる、現在の映画業界に潜む問題について赤裸々に語ってくれた。その内容には、こちらも幾度となくハッとさせられた。

KIQ:最近昔と比較して感じる業界の変化とかってありますか。

奥浜:やっぱり、コロナ禍を経てどういう作品にお客さんが集まるかというのが二極化したなと思います。以前は大作を観る人の中にも、制作費や宣伝的に中規模の作品を観に行く人たちがいて、その一方で、インディペンデント系の作品が好きだけど中規模の作品を観に行く人たちもいました。ですが、今は中規模の作品に人が集まりづらくなっているなというのは感じますね。

KIQ:劇場での上映機会も大作によって奪われてしまっているというのもあるかもしれないですね。

奥浜:そういう中規模な作品をどうやって届けようかなというのはすごく考えますね…。

KIQ:他にも、業界に対してもっとこうなったらいいなと思うことはありますか。

奥浜:ちょっと真面目な話になりますけど、女性の喋り手ジャーナリスト、ライターさんが、顔出しをして映画を語ることにまだハードルを感じます。同じようなミスをしても男性だったらスルーされるのに、女性だと厳しく指摘されたり、話と全く関係のない服装や容姿についての揶揄もあります。変わりつつある今でも、評論“、言論の場において女性は能力や勉強が足りないというようなすり込まれたイメージを引きずっている気がするんですよね。

KIQ:そういう偏見ってまだあるんですね…。

奥浜:ありますね。もちろん全員ではないですけど。だから、とても仕事のできる女性の監督やライターさん、喋り手の人たちと一緒にお仕事をすると、こういう方々がもっと表に出て喋れたらいいのに…と思うんです。

KIQ:そういった偏見を持っているのは、どういった方が多いのでしょうか。

奥浜:うーん、それって性別年齢問わず、女性に能力がないと偏見をすり込まれて育ってきたことの影響が大きいと思っていて。表に出てくる女性が少ないと、この仕事は女性には向かないのだろうって思ってしまう人も多いと思うんです。

KIQ:私も業界に入る前は男性が圧倒的に多いというイメージがありましたが、実際は活躍されている女性がすごく多くて驚きました。

奥浜:そうですよね。女性に向かない職場ではないってことを見せていく必要があると思います。そのためには、働く環境、つまり映画作りから変えていかなきゃいけないとも思うので、こんなイチMCが言ったところで難しいとは思うんですけど、そこに協力できるような映画人でありたいなと。

KIQ:偏見を変えるってなかなか難しいですよね。

奥浜:多分みんな気づいてないだけで、私も含めて全員が無意識に偏見を抱いてしまっていることってあると思うんですよ。でもそのイメージを作ったのはメディアとか、例えば、誰かが「あの人は女性だから運転が下手なんだ」って言ったことがずっと記憶に残っていたりとか…。

KIQ:確かにそういうのも言われてみたら偏見ですね…。

奥浜:そのイメージを変えるためには、「女性も千差万別で、その職業への適性は性別ではなくて個人の特性による」ってことを伝えていかなきゃいけないと思います。そして、女性の監督や脚本家が女性の物語を、その人個人の視点で描いていくことも大切だと思いますし、その作品の作り手と近い経験をし、似た景色を観てきた聞き手として、どう社会に伝えていけるかを考えています。

KIQ:なるほど。

奥浜:今でも「女性だからこの作品のことよく知らないでしょ?」とか言われたりしますし(苦笑)それに関連して宣伝で1個改善した方がいいなと思うのは、例えばこういう作品は女性が劇場に足を運びやすいだろう、というような固定概念を1回全て見直した方が良いかなと。女性にもアクションが好きな方はいますし、ゴア描写に抵抗がない方もいる。そういう思い込みを全部見直す時期に来ているような気がしていて。

KIQ:同じ性別でも人によって趣味嗜好は大分変わりますもんね。

奥浜:アップデートや見直しって時間が必要ですし、前例がないことに踏み込むのは本当に大変だと思うんですけど、でもきっと今後のことを考えたら良いことの方が多いんじゃないかなと思っています。

 

★【ENDROLL】「黒子と個性」映画・音楽パーソナリティ 奥浜レイラさん ~前編~

 

【Information】
12月8日公開『彼方の閃光』劇場パンフレットにて、眞栄田郷敦さんと半野嘉弘監督のインタビューを担当。
月刊誌『GINZA』カルチャーページで新譜レビューを執筆中。

 

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