業界人インタビュー

【ENDROLL】「映画に、生きる。」Bela Film 代表 宇津野達哉さん ~前編~

2023-10-06更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

今回は、『ラストレタ―』(2020)の制作や、Amazon Prime「仮面ライダーBLACK SUN」(2022)や『アンダーカレント』(10月6日公開)のメイキングディレクターなど、幅広く映像制作を手掛ける、Bela Film  代表 宇津野達哉(うつのたつや)さんに話を伺った。

前編では、宇津野さんが業界に入ったきっかけから、映画を撮るためにフランスへと渡ったこと、そして、現在の仕事の内容まで聞いたことをお届けする。

 

【ENDROLL】「経験が血となる。」Bela Film 代表 宇津野達哉さん ~後編~

信じられるのは、映画だけ。

おばあちゃんの影響で洋画好きになったという宇津野さん。どのように夢だった監督の道を歩み始め、現在はどんなことをしているのだろうか。

KIQ:今は何の作品に携わっているんですか。

宇津野:今は監督として、スケートボード関係のドキュメンタリー作品を撮っているんですが、第2の青春を謳歌しているような感覚で、もう毎日が本当に楽しいです!

KIQ:それは密着ですか?

宇津野:ほぼ密着ですね。でも監督としてはちゃんと距離感を保たなきゃいけないし、冷静に俯瞰して見なきゃいけないので、この作品はメイキングと、これまでこの業界でやってきたことの一つの集大成になるのかな

KIQ:メイキングとドキュメンタリーは撮っている感覚としては、どのように違うのでしょうか。

宇津野:メイキングの場合はやっぱり本編がメインになるので、役者さんと本編のスタッフさんがいるところにうまく入り込んでいって、仲良くなって、その距離感の中で撮っていくっていう感じですかね。ドキュメンタリーは、ある瞬間は自分が現場を回せているというような感覚を実感できるので、その瞬間は良いものが撮れているなと実感します。

KIQ:なるほど。今度公開される『アンダーカレント』ではメイキングディレクターを担当していると伺いましたが、メイキングディレクターはどんな役割なんですか。

宇津野:実は、メイキングディレクターってまだちゃんと業界の中で浸透していないんです。基本的にメイキングって、“メイキングさん”と呼ばれることが多くて、その2つがどう違うかというと、メイキングが入る日数を制作会社や宣伝部と決めていくところから始めるのがメイキングディレクターです。一方で、メイキングさんの場合は、撮影期間中はずっと現場にいて、ずっとカメラを回すということが多いんですが、それだとこちらも役者さんもみんな疲れちゃうんですよね。だから、ここは撮るという日を選定して(より効率的に、より質のいい)作品を仕上げるために、できるだけメイキングディレクターとしての仕事で取り組ませていただくようにしています。

KIQ:なるほど!確かに撮影した映像全てを使うことはないと思うので、ここは撮りたいと狙っていく方がいいですね!そもそも宇津野さんがこの業界に入ったきっかけは?

宇津野:日本映画学校に通っていた時に、当時、中原俊監督がご紹介してくださったプロデューサーが学校まで迎えにきてくれて、そのまま撮影現場に連れて行ってくれたんです(笑)それ以降、現場を手伝うようになったことがきっかけです。

KIQ:そんなことがあるんですね(笑)何の手伝いをしていたんですか。

宇津野:最初の2週間くらいは撮影部のアシスタントをやって、その後は助監督を何年かやりました。

KIQ:そもそも日本映画学校に行こうと思ったのは?

宇津野:子供の頃からずっと映画監督なりたかったんです。でも、実は大学受験の時に映画について学べる大学には受からなかったので、独学で監督を目指そうと一旦は普通の大学に入学しました。

KIQ:そこから転学したということですか⁉

宇津野:はい、大学の同じサークルに俳優・モデルを目指して頑張っている友人がいて、彼を見ているうちに自分もちゃんと監督の道を目指そう!と思い始めて。それで、日本映画学校に入り直しました。

KIQ:大学での出会いが監督熱を再燃させたんですね!ちなみに、監督を目指すきっかけとなった映画などはありますか。

宇津野:フランスのレオス・カラックス監督の作品に出会ったのが大きいですかね。最初に見た時は「え、何、この映画!?」ってよくわからなかったんですけど(笑)

KIQ:その映画との出会いが、宇津野さんの人生に大きな影響を与えたんですね!

宇津野:高校生の頃はよく学校をサボって、実家のある千葉から渋谷のTSUTAYAとか、早稲田松竹などのミニシアターに行ったりして、とにかく映画を見まくっていました!もう、映画しか信じられない!と思っていましたね(笑)

 

事故を転機に、フランスへ!

宇津野さんは、20代前半で思い切ってフランスへと飛び立った。その背景には数々の驚きのエピソードがあった!

KIQ:一時期フランスに行かれていたと噂で聞いたのですが…(笑)

宇津野:はい(笑)映画学校を卒業して2年目ぐらいの時に、交通事故に合って大怪我をしてしまい助監督の仕事を辞めざるを得なくなったんです。でも、リハビリとかをやっている時に改めて自分の事を見つめ直してみると、「やっぱり自分は映画が好きだ!」と思って。それで、元々行きたいと思っていたフランスに行こう!って(笑)

KIQ:言葉通り、怪我の功名ですね!映画を撮るために行ったということですか。

宇津野:そうですね、最終的には向こうで映画を撮るのが目標でした。

KIQ:フランスに伝手などがあったのでしょうか。

宇津野:実は、助監督の仕事を辞めている時に、1日だけガレット屋(フランス料理)でバイトしたことがあって(笑)そこで偶然出会ったのが、フランスのある映画監督の美術をやっている方の息子さんだったんです!それで「俺、フランス行きたいんだけど」って相談したら、「もしこっちに来たら紹介してあげるよ」って言ってくれて!その口約束だけを頼りに行きました。

KIQ:え、1日のバイトで出会ったフランス人の方との口約束だけで!?

宇津野:はい(笑)実際にフランスに行ったらその人が本当に会ってくれて、映像関連の会社を紹介してくれたんですけど、面接に行ってみたら清掃員からならOKって言われてしまって…。さすがにそれはちょっとなと思い、まずは3ヶ月間語学学校に通いながらいろいろ考えてみることにしました。

KIQ:じゃ、フランス語が話せない状態で行ったんですか。

宇津野:はい、全く(笑)

KIQ:すごい行動力ですね!フランスにはどのくらいいたんでしょうか。

宇津野:3年ぐらいいました。語学学校が終わってからも、時々また学校に行ったり、バイトしたりして。

KIQ:フランスでも映画館にはよく行っていたんですか。

宇津野:めっちゃ行きました!それこそ、向こうのミニシアターにアジア人が毎日来てることが珍しかったようで、よく会う老夫婦がディナーに招待してくれて。家に行ったら地下にフィルムがたくさん保管されていたり、それを映写機にかけて見せてくれたり、ディナーの終わりにはピアノ演奏までしてくれて。何だこれ!みたいな(笑)

KIQ:まるで映画の中の世界みたいですね!ちなみに、向こうで映画を撮る夢は叶ったのでしょうか。

宇津野:一応実現できました。フランスでは映画産業を支援している「国立映画映像センター」(CNC(セー・エヌ・セー))という機関があるんですけど、そこから助成金をもらうための選考に何度か挑戦して、3年目にやっとCNCとパリ第8大学(Paris 8 université)の助成金を獲得することができたんです。

KIQ:そういった助成金があるんですね。

宇津野:はい。それを元手に『À moi seul』という短編を1本作ってカンヌに応募してみたら、カンヌ国際映画祭短編部門に参加するところまではいくことができました。

KIQ:すごいですね!そのままフランスで撮り続けようとは思わなかったんですか。

宇津野:それも考えはしたんですけど、一旦日本に戻って日本でも短編をちゃんと撮ろう!と思ったので帰国しました。

 

後編(10/13掲載予定)では、宇津野さんが監督だけでなく、多方面から映像制作に携わっている理由を聞いてみた。また、日本の映画業界が抱える問題について率直に語ってくれた内容をお届けする。

【ENDROLL】「経験が血となる。」Bela Film 代表 宇津野達哉さん ~後編~

 

 

【Information】

『アンダーカレント』(10月6日公開)
家業の銭湯を継いで、夫の悟とともに順風満帆な日々を送るかなえ。しかし突然、悟が失踪してしまう。途方に暮れていたかなえだったが数日後、堀と名乗る謎の男が「働きたい」とやって来て、住み込みで働くことになった堀とかなえの不思議な共同生活が始まる。

監督:今泉力哉
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太 他
(C)豊田徹也/講談社 (C)2023「アンダーカレント」製作委員会

 

 【Back number】
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