業界人インタビュー
【ENDROLL】「仕事道具は人柄」三映印刷株式会社 平井忠幸さん、佐瀬亮さん ~前編~
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!
今回は、東映株式会社のグループ企業で、ポスターやチラシなど映画・映像関連の宣材の印刷物を中心に、多種多様なものの制作から製品管理まで行っている三映印刷株式会社の平井忠幸さん、佐瀬亮さんにインタビュー!
前編では、業界人がいつもお世話になっている印刷会社の営業の方は、宣材物の制作から無事に劇場に届けられるまでの間、我々の知らないところでどのようなサポートをしてくれているのかについて詳しく聞いてみた。システムでは決して代替できないお2人の役目とは?また、宣材物の仕上がりはお2人のセンスにかかっていた…⁉
★【ENDROLL】「チラシと五感」三映印刷株式会社 平井忠幸さん、佐瀬亮さん ~後編~
仕事道具は人柄とキャラ
日頃お世話になりつつも、実はあまりよく知られていない印刷営業のお仕事。まずは、現在のお2人の業務内容とやりがいについて詳しく聞いてみた。
左:平井忠幸さん、右:佐瀬亮さん
KIQ:現在は具体的にどんなことをされているんですか。
佐瀬:メインはポスターチラシなど映画の宣材物の印刷です。他にも劇場用のスタンディーとかバナー、入場者特典などを制作するところから、全国の劇場に配送するところまで一貫してオペレーションの管理も行っています。
KIQ:在庫の管理なども含まれるのでしょうか。
佐瀬:はい、急遽追加で宣材物の配送などを依頼された時に「ないです…」なんてことがないようにシステム上で全ての在庫管理も行っています。
KIQ:そういった作業工程は、今はほぼシステム化されているんですか。
平井:基本的にシステムで管理されています。ただ、システムでは対応できない部分もあるのでそこが我々の存在意義ですかね。具体的には、宣材物は宣伝部さんが中心で制作しますが、劇場さんへの納品など宣材物が出来上がってから露出するまでの管理は、基本的に配給会社の営業部さんがやられています。なので、私たちの役割は宣伝部さんと営業部さんの間に入って、時には急いだ方がよいというような温度感を伝えながら、宣材物が納期までに劇場さんの元に届くように調整したり、仲介や折衷をすることです。
KIQ:なるほど。今後さらにシステム化が進んでも、そういったお仕事はなくならないように思います。でも、宣伝部と営業部は同じ会社であれば、直接やりとりした方が早いのでは?と思ったりもしますが…。
平井:例えば、続編の映画をやる場合、前作の部数のことなど宣伝部さんがすぐに分からないことでも、弊社であれば情報が蓄積されているのですぐに答えられる、ということが多いんです。そういったところでお役に立てているのかなと。
KIQ:あとはお2人だから聞きやすいということもあるのだと思います。
平井:そうであればありがたいですね、それが正に営業の仕事かなと思うので。あとは、オペレーションが自社だけで回らない時は協力会社に頼んで無茶を聞いてもらう場合もあるので、そういった面でもこの仕事は人柄やキャラが重要だと思います。
KIQ:そもそもお2人は三映さんに勤めてどのくらいになるのですか。
佐瀬:僕は中途で入社したんですが、11年目くらいですかね。
KIQ:以前も印刷系だったんですか?
佐瀬:いいえ、全く違う業界でした。なので、最初は意味のわからないワードが飛び交っていて、わけがわからなかったです(笑)
KIQ:専門用語が多いので慣れるまで大変そうですね。平井さんは?
平井:私は新卒で入社したので30年くらいになりますかね。
KIQ:そうなのですね!学生の頃から映画がお好きだったんですか?
平井:昔からすごく好きでした。出身は山形県なのですが、地元の映画館によく2、3本立ての映画を観に行ったり、東京で上映している映画を雑誌でチェックしたりしていました。
KIQ:お2人にとって、今の仕事の魅力ややりがいはどんなところでしょうか。
佐瀬:映画館に行って自分が携わった宣材物が飾られているのを見るとやっぱりちょっと嬉しくなりますよね。あの人、自分が印刷したチラシを手に取っているなーとか。印刷しているだけなんですけどね(笑)
平井:僕も同じで、自分がやった結果が目に見えて形になるからですかね。過去にある作品で電車ジャックをした時に偶然その電車に乗ったことがあったのですが、自分が印刷した宣材に囲まれるのは悪い気はしなかったですから(笑)あれは感激でした。
機械にセンスはない
公開日までに前売り特典が届かないというハプニングが発生した際に、佐瀬さんがとった驚きの行動とは!?また、気になる印刷の色調整がどのように行われているのかについて教えてもらった。
KIQ:今までで一番大変だったエピソードは?
佐瀬:前売り特典を公開日までに劇場に届けることができない、という連絡が公開日の前日に来たことがあって。しかも場所が沖縄だったんですよ!その時は、気づいたら空港にいて、沖縄まで届けに行きました(笑)
KIQ:えー!それは大変でしたね。前売り特典とか入場者プレゼントって宣材というよりは商品なので、確かに届かないとまずい!と焦りますよね。
佐瀬:そうなんですよね。
KIQ:印刷会社さんはものが出来上がったら終わりではなくて、そこからもちゃんと期日までに届くのかや、届いた商品に問題がないかなども気にしなければならないんですね。
平井:はい、そこの手離れが悪いんですよね…。
佐瀬:そのプレッシャーは結構ありますね。
平井:他社で作った商品を弊社から運搬するだけでも、送り主が弊社になるのでクレームが入る場合もありますし…。だから、始めから絶対に何かあると思ってやっています。何かあるのは当たり前で、それをどうフォローできるかという考え方ではないと、いちいち気をもんでいたら前に進まないので。
KIQ:この記事を通して、そういった苦労も伝わるといいですね!
平井・佐瀬:(笑)
佐瀬:あともう1個大変だったエピソードとしては、どうしてもデザイナーさんの求める色が出ないことがあったときに、作業者の方と翌日明るくなるまで作業をしたことがありました。PCの画面上で色の調整をしていくんですけど、パンフレットなどのページものの場合は写真の量も多くなるので、ものすごく時間がかかるんです。
KIQ:え、朝まで!? そもそも入稿からの工程の流れはどのようになっているのでしょうか。
佐瀬:まず、データで入稿がされたらPCの画面上で色を整えます。その後、実際に印刷して実物を見ながら再度データを調整して…を繰り返し、最終的に印刷でバランスを見ていく感じですかね。
KIQ:先ほど仰っていた作業者の方というのは印刷所で作業をしている方ということでしょうか。
平井:そうです。作業者は印刷機のインクの分量も調整できるので、それが変えられる範囲であれば作業者の方で調整するのですが、これはもう元のデータ自体を調整しないとどうにもならないって時は、機械を止めてデータを戻し、佐瀬の方で再度データ修正をします。やっぱり基本的に画面で見るのと紙に落とし込むのは別物なので。
KIQ:では、色合を最終的に調整しているのは機械ではなく“人”なんですね!
平井:そうですね。
KIQ:それってデザイナーさんによっては、例えば「もう少し赤を濃くしてほしい」と具体的に言う人もいれば、「もう少し温かみのある感じにしてほしい」とか雰囲気で伝える方もいらっしゃいますよね?そういう場合はどのようにイメージを汲み取るのですか。
佐瀬:そこはデザイナーさんによってそれぞれこだわりがあったりもすると思いますが、この方が言う“温かみのある感じ”はこう色だろうなというのは、お付き合いの中で段々わかってきたりしますね。
KIQ:それはつまり、最終的には平井さんや佐瀬さんの感性や感覚、美的センスに任せられているということですね!
後編では、長年映画業界と関わってきたお2人だからこそ知る、ここ数年の映画の宣材物の変遷について聞いてみた。また、今改めて考えるチラシの存在意義とは?
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