業界人インタビュー

【ENDROLL】「ホリプロからWOWOWへ」株式会社WOWOW 大瀧亮さん ~前編~

2024-05-10更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

 

今回は、『アキラとあきら』(2022)、『ゴールデンカムイ』(2024)、『ディア・ファミリー』(2024)、そして来週5月17日(金)公開の『ミッシング』など、数々の映画のプロデューサーを担ってきた、株式会社WOWOW事業局プロダクション事業部 チーフプロデューサーの大瀧亮さんにインタビュー。

前編では、大瀧さんが業界に入る決め手となった体験から、芸能事務所に就職し、現在のWOWOWに転職するまでの歩みについて詳しく聞いてみた。また、今回『ミッシング』をプロデュースすることになった背景や思いについても伺った。

8対2からの逆転劇

WOWOWに入社されてから今日まで、既に10本の映画をプロデュースしてきたという大瀧さんに、オリジナル作品と原作のある作品をプロデュースするおもしろさについて、それぞれ聞いてみた。

KIQ: WOWOWさんにはどのくらい勤めていらっしゃるんですか。

大瀧: 10年ほどになります。

KIQ:現在は映画のプロデュースを主にご担当されているんでしょうか。

大瀧:はい。入社したときからずっと映画のプロデュースに関わっていて、これまで10本くらいのプロデューサーを担当してきました。

KIQ:映画の企画や脚本を読んだ際に、これはぜひやりたい!と決め手になる部分はどういったところなんですか。

大瀧:今回の『ミッシング』に関しては、過去に吉田恵輔監督の『空白』(2021)を劇場で見た時に思わず号泣してしまい、作品で描かれている「折り合い」というのも私の個人的なテーマともリンクして、吉田監督と仕事がしたい、この才能に間近で触れたい!と思ったのが一番初めのきっかけでした。いざ動き出してみたら、既にスターサンズの河村光庸さんのもとで吉田監督の次の企画が始まっていると聞いて、企画の概要と当時の脚本を読ませていただいたんです。そのときにメッセージ性にとても惹かれて、これはやりがいがありそうだ!と思い、手を挙げました。

KIQ:吉田監督の作品に携わりたいというのが起点だったのですね。大瀧さんは『ゴールデンカムイ』もプロデュースされていますが、原作のある作品と、『ミッシング』のようにオリジナル作品では、どんなおもしろさの違いがあるのですか。

大瀧:原作がある場合は、既に世の中に作品のコアファンがいるという、ある程度地盤があるところに作品を投ずることになるので、どこまで原作に対して愛情とリスペクトを持って準備ができるかが重要になります。とくに『ゴールデンカムイ』は、プロデューサー、並びに現場のスタッフみんなで原作を読み込んで、細部までとことん忠実に再現することにこだわりました。

KIQ:そこまでこだわられたのですね!

大瀧:それが功を奏してか、情報解禁をした時には8対2でネガティブな意見の方がずっと多かったんですが、公開した後は殆どのお客さんがポジティブに転じてくださり逆転することができたんです…!それはすごく気持ちの良い作業で、原作ものをやる楽しみの一つだなと思いました。

KIQ:大逆転ですね!一方で、オリジナル作品の面白さは?

大瀧:オリジナル作品の場合は、あたり前ですが世間は作品について何も知らないので、宣伝を通して感じられる世間の反響が、毎回すごく新鮮で楽しいです。それと、今もオリジナル脚本の企画をいくつか開発しているんですが、監督や脚本家と一緒にゼロから物語を作ったり、ネタを放り込んでいったりすることはやっぱり面白いですね!自分のアイディアが採用されたときには、自分も作品のコピーライトの一員になったような気がして、嬉しくなります(笑)

ここには、無限の可能性がある。

上京をきっかけにエンタメ欲が爆発した大瀧さんがとった行動とは?そして、今こうしてWOWOWで映画のプロデューサーをしていることは、偶然ではなく必然だったかもしれない…!?

KIQ:そもそも業界に入ろうと思ったきっかけは?

大瀧:学生の頃から映画は好きだったんですが、地元は映画館が一つしかないような京都の山奥だったので、大学時代に上京をした時にはこんなにも映画館の選択肢があることにすごく驚いて…!毎週末、映画館に通っているうちに、もっと近くでエンタメに触れたいと思い始め、エキストラに参加するようになったんです。

KIQ:へー!どんな作品に出演されたんですか。

大瀧:『それでもボクはやってない』(2007)などの現場には参加してみました(笑)そこで映画制作現場や俳優さんを目の当たりにしたことで、この業界に入りたい!と強く思うようになりましたね。

KIQ:映画好きにとって撮影現場ってすごくワクワクしますよね!以前は、ホリプロさんに勤められていたとのことですが、業界の中でなぜ芸能事務所を選ばれたんですか。

大瀧:当時は、とにかく早くこの業界に入りたい!と思っていたので、専門的な知識や資格がなくてもすぐに就職できるとしたらマネージャーかなと思ったんです(笑)あと、俳優さんの近くにいたらいろいろな撮影現場を見られるだろうなという期待もありました。

KIQ:ホリプロさんでは、ずっとマネージャーをされていたんですか。

大瀧:はい。在籍していた8年間はずっと藤原竜也さんを担当していたので、映画やドラマ、舞台、CM…と本当に色々な現場を経験させてもらうことができました。その結果、もっと作品の真髄に関わりたい!作品を作る側になりたい!と、逆にハングリー精神が芽生えてきてしまい、転職を考えるようになりました。

KIQ:そういった経緯だったんですね。転職するにあたってWOWOWさんを選ばれた理由は?

大瀧:当時の自分から見たWOWOWは、ドラマも映画も音楽もスポーツもある総合エンターテインメント企業でした。なので、映画のプロデューサーが一番やりたいと思いつつも、もし他の部署に異動になったとしても楽しめそうだなという点が決め手になりましたね。

KIQ:確かに、御社は本当に幅広いジャンルの番組を放送されているので、そこで働くとなると色々な可能性が期待できそうですね

大瀧:それと、個人的な思い入れとしては、中学生の時に実家が入っていたWOWOWで『EUREKA ユリイカ』(2001)を観たときにすごく衝撃を受けまして。それが自分の映画体験の原点になったので、今その会社で働いていると思うと、すごく感慨深いものがあったりはします。

KIQ:すごいご縁ですね!

大瀧:当時は想像もしていなかったですが(笑)でもそれ以上にWOWOWを選んで本当に良かったなと感じるのは、映画を作るうえですごく自由度があることなんです。

KIQ:自由度があるというのは?

大瀧映画を制作するにあたり、組む会社やクリエイターに縛りがないんですなので、『ゴールデンカムイ』のように超大作もできれば、『ミッシング』のような骨太な人間ドラマのジャンルにもチャレンジすることができるんです。

 

後編では、想像以上に大変なプロデューサーの役割や、大瀧さんが今後力を入れていきたいと考えている配給事業について語ってくれたことをお届けする。
(※吉田恵輔の「吉」は、正式にはつちよし)

 

【Information】

Vaundy one man live ARENA tour“replica ZERO”』5月10日(金)より期間限定で公開
令和の音楽シーンを牽引する代表的アーティストとなったVaundy。そんな彼が2024年1月21日(日)に実施したアリーナツアーのファイナル公演・代々木第一体育館でのライブを再編集。アルバム制作期間やアリーナツアーを帯同して撮影された未公開舞台裏ドキュメンタリー映像も初公開!
ライブ映像だけでなく、アルバム『replica』にも収録された”ZERO”や”replica”の制作秘話や、楽曲やライブパフォーマンスの背後にあるVaundyの核となる部分を垣間見ることができる。
出演:Vaundy
配給:WOWOW
(C)WOWOW (C)SDR

 


ミッシング』5月17日(金)公開
ある日突然いなくなった愛する娘・美羽。美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、次第に心を失くしていく。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。
その先にある、光に——。
監督・脚本:吉田恵輔
出演:石原さとみ、青木崇高、中村倫也 ほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
©︎2024「missing」Film Partners

 

ディア・ファミリー』6月14日(金)公開1970年代、生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は 「余命10年」を突き付けられてしまう。絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が作ってやる」と立ち上がるが、医療の知識も経験も何もない。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる―。
監督:月川翔
出演:大泉洋、菅野美穂、福本莉子 ほか
配給:東宝
(C)2024「ディア・ファミリー」製作委員会

 

【Back number】
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