業界人インタビュー

【ENDROLL】「キッズアニメからフィンランド映画まで」プレコグ株式会社 関 総一郎さん ~後編~

2024-06-07更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。

 

前回に引き続き今回も、エンタメ業界に特化したリサーチ・マーケティング・データ分析や、情報サービスの開発・運営などを担うプレコグ株式会社の関 総一郎さんにインタビューした内容をお届けする。

後編では、ここ数年の映画の見方や客層の変化、調査のトレンドからわかる製作者側の変化について詳しく聞いてみた。また、現在の業務において何よりも大事なことは“国語力”であるという、その訳に迫ってみた。

映画=“参加するもの”へ

娯楽の選択肢が増えた昨今、映画は“鑑賞するもの”から、“参加するもの”へと変わった!?また、SNSの発展によって調査の依頼タイミングに変化が起きていた。

KIQ:昔と比べて映画の見方や客層はどのように変化してきているのでしょうか。

関 :映画を見るスタイルがすごく変わったなと思います。昔は映画=鑑賞するもので、レコードや絵画と同列で「総合芸術」として捉えられていたと思うんですけど、今は本当に娯楽のひとつであり、“コンテンツ”になったなと。この間『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』を観に行ったんですけど、コスプレをしている人やリピーターとおぼしき人がたくさんいて、もはやファンの集いなんですよね。だから映画=鑑賞するものから、参加するもの”に変わってきているのかなと思います。

KIQ:確かに去年の『RRR』の大ヒットとかも考えると、イベント性が求められるようになってきているというのはあるかもしれないですね。

関 :だから、今って洋画のサスペンスやヒューマンドラマなどの“良質な作品”がヒットしにくくなりましたよね。その代わりにイベント性が高く、“推し文化”になじむ作品がヒットするようになってきていて、客層もそれに伴って変化してきているなと。

KIQ:なるほど。最近はどんな調査が多い傾向にあるのでしょうか。

関 :調査のタイミングが川上、つまり初期段階に移ってきているということは明確に言えます。以前は、例えば宣材物のAとBのどちらがより魅力にみえるか?といった宣伝段階の調査が多かったんですけど、今は撮影前や企画が承認される前の調査や、脚本評価をよくやっています。制作段階からマーケティング的な視点を取り入れて中身を点検しましょうというのが広く浸透してきているように思いますね。

KIQ:それは何か変わるきっかけがあったのでしょうか。

関 恐らくここ10年ぐらいで映画のヒットの仕方が変わったことが大きい要因ではないかと思います。昔は宣伝で煽りに煽って逃げ切り勝ちというパターンも正直あったと思うんですけど、そういったことができなくなりました。ヒットの要因がSNSでの口コミになるにつれて、作品の中身で勝負しなければならなくなってきたというからこそ、より早い段階でマーケティング視点が意識するようになったのではないかと思います。

数字を言葉にする。

マーケッターに必要な資質について聞いてみた。また、関さんが最近バスケットボールの試合を見に行って感じたこととは?

KIQ:関さんのように、映画にマーケティングの側面から関わりたい場合はどんな方が向いていますか。

関 :この仕事は向いてる、向いていないがハッキリしていると思いますね。必要なのは国語力と、算数力です!高度な数学能力は、それを代理してくれるツールがいっぱいあるので特段必要ないんです。ただ、1+1=2ならば、2-1=1であるというのがぱっと理解できないと、数字を扱う上ではちょっと大変かなと。これって、ぜんぜん難しことではないのですが誰でもできるかというと、意外とそうでもないんです。

KIQ:へー!それは意外です。

関 :とはいえ、一番重要なのはやっぱりクライアントと話すことなので、話すのが苦手な人はちょっと難しいかなと思います。

KIQ:クライアントと話す機会は結構多いんですか。

関 :作品のプロデューサーや宣伝担当者などいろんな立場の人に、数字で表現されたものを言葉で文章で伝える際、ある種のストーリー化が必要になります。国語力は必須ですね。算数よりも大事かもしれません。調査結果をただ渡して終わりではなく、その数字をどう解釈するのかを伝えることころまでが我々の業務ですから。

KIQ:言われてみると、関さんがデータをすごくうまく言語化してくださって、腑に落ちた経験が何度もあるので、“国語力”が必要なことに納得しました!ちなみに、休みの日もずっと映画やドラマを観られているんですか。

関 :そうですね。子供ができてからは少し頻度が減りはしましたが。

KIQ:今後のリサーチのために、意識的に様々なジャンルをチェックしたりされているのですか。

関 :昔から一番好きなジャンルはホラーなんですが(笑)、仕事に関係なく本当になんでも見ますね。キッズ向けアニメからフィンランド映画までという感じで、カバー範囲は広いです! 浅くて広いという点には自信があります(笑)

KIQ:すごい、幅広いですね!最後に、映画業界に対してもっとこうなったらいいなと思うことはありますか。

関 :映画の特別なところはやっぱり“場”にあると思っていて。そこで上映されるコンテンツは時代の流行り廃りがあってどうしようもない部分があるとは思いますが、映画館という空間をどうデザインしていくかは、業界側で主体的に決定できる部分だと思うんです。その割には、映画館って結構素っ気ないなとーいう感じがしていて(苦笑)もっと映画館自体が楽しい空間であってもいいのではないかなとは思いますね。

KIQ:確かに、長居したり、映画を見る意外で足を運んだりすることは滅多にないですよね…。

関 :そうですよね。最近よくバスケの試合を見に行くんですけど、バスケって会場で楽しませようという試みがいっぱいなされているので、気づくと会場に行くこと自体が楽しみになっているんです。だから映画館のロビーとかをもう少し楽しい空間にしてもいいんじゃないかなと。海外だとベッドで寝そべりながら鑑賞できるスクリーンもあるしもっと多様性があってもいいと思います。これは単純にいち映画ファンとしての意見ですが。

KIQ:それは同感です!

関 :大勢が集まって、みんなで光源を見つめるという映画館の価値に代わるものは今のところありません。時代を経てもその価値は変わらないと思うので、もっとやっぱり多くの人に映画館に足を運んでもらいたいですよね。

 

【ENDROLL】「“らしい” って何?」プレコグ株式会社 関 総一郎さん ~前編~

 

 

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