業界人インタビュー

【ENDROLL】 「考えるな、感じろ。」松竹株式会社 映像戦略室 亀井稜さん ~前編~

2023-05-19更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界の宝である、業界人の人と成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界に新たな風を吹き込む20代から30代を中心にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

今回は、松竹株式会社 映像本部 映像統括部 映像戦略室の亀井稜(かめいりょう)さんに話を伺った。

入社してから2年間は歌舞伎座で勤務していたという亀井さん。前編では、歌舞伎の魅力と現在の業務について、そして、映画業界に進むことを決意する決め手となった大学時代のボランティア活動について話を聞いた。

★【ENDROLL】 「インド映画愛が止まらない。」松竹株式会社 映像戦略室 亀井稜さん ~後編~

「考えるな、感じろ!」でハマった歌舞伎

配属される前は、歌舞伎について全く知らなったという亀井さんだが、今では月に一度は鑑賞するほど歌舞伎の虜になったという。

KIQ:今は松竹さんに入社されて何年目ですか?

亀井:4年目です。弊社では、入社してから4年間は2年ずつ2つの部署を経験するというジョブローテーション制度を設けているため、初めの2年間は歌舞伎座の業務を担当し、その後、今の映像戦略室に異動しました。

KIQ:歌舞伎座での業務って、どんなことをされるんですか?

亀井:最初の1年間は、劇場のコロナ対策やお客さん対応など、いわゆる表周り・接客業を担当していました。ちょうどコロナ禍真っ只中の時に配属されたのですが、歌舞伎座が再開場した時には、コロナ対策をどうするかなどを最前線で見ることができたのは、良い経験でした。後半の1年間は、いろんなところに行って団体観劇の営業を行うチケットセールスを担当していました。

KIQ:もともと歌舞伎には興味があったのですか?

亀井:いえ、正直、配属されるまでは歌舞伎について全く知らなかったです…。なので、初めは本当に歌舞伎の基本的なことから学びました。あと、お客さまとコミュニケーションをとるために屋号なども必死に覚えましたね。そうしたら、見事に歌舞伎にハマりまして(笑)今では毎月鑑賞に行っています!

KIQ:歌舞伎って、ちょっと難しそうなイメージがあるのですが、魅力はどんなところですか?

亀井:僕もはじめは全然理解できなかったです。でも、例えば、アート系の映画とかって「考えるな、感じろ!」みたいなところがあるじゃないですか。ある日、そういう目線で歌舞伎を観てみたら、歌舞伎の美しさに気づいたんです!歌舞伎座の舞台はとにかく大きいし、お金もかかっているので、圧倒的に豪華絢爛なんですよ。映像戦略室という映像作品に関わる部署に異動した今は、歌舞伎を観ながらこの作品を映像化したらどうなるのかなとか、魅力を感じた歌舞伎俳優さんにはこんな映像作品に出演したらどうかなとか、そういう視点でも観るようになりました。あとは、やっぱり400年続いているエンタメって、普遍的な面白さがあるんですよね。本当にすっごく歌舞伎はおすすめです!ぜひ一度観てみてください!

KIQ:すごく歌舞伎に興味が湧いてきました!今は具体的にどんな業務を担当されているのでしょうか。

亀井:今は主にマーケティング関係の調査をする部署にいます。あまり詳細はお伝えできないのですが、企画段階の調査から、公開後の松竹作品の満足度調査、映画業界全体の調査など、とにかくいろいろな調査を行っています。そうして得た映画業界全体の知識を各部門にフィードバックしたり、各部門が抱えている課題を一緒に考えたりということもしています。

KIQ:歌舞伎座での業務とはまた大きく異なりますね。どんな時にやりがいを感じますか。

亀井:例えば、ある作品が予想以上にヒットした時に、なぜヒットしたのかを様々なデータや松竹が持っているツールを駆使して調べると、その作品の深いところがわかってくるし、いろいろなことが見えてくるんです。それはすごく面白いです。元々、自分の好きなことに対しては気持ち悪いくらい調べちゃうタイプなので(笑)、今の仕事を毎日とても楽しんでいます。

KIQ:数字を読み解くのは大変そうですね。

亀井:すごく難しいです。ぱっと見て、これが高い、低いというのは誰でもわかると思いますが、他の調査の結果をかけ合わせたり、組み入れたりすると、またその数字の意味も違ってきたり、いろいろな見方ができてくるので、そういう複合的な視点を踏まえた読み解き能力をもっと高めていきたいなと日々感じています。

子どもたちの映画を観る目が、僕を業界へと導いた

亀井さんが映画業界に進むことを決意したのは、大学時代のボランティア経験があったからだという。その素敵な体験談には、こちらも聞き入ってしまった。

KIQ:そもそも、なぜ映画業界に入ろうと思われたのですか?

亀井:子どもの頃から映画が好きで、大学時代も映画や舞台ばかり観ていたんです。それで、大学1年生の時に、都内のとあるミニシアターで、あるチラシを見つけまして。それが、途上国の映画館がない地域の子どもたちに、移動映画館で映画体験を届ける活動をしている、NPO法人 ワールドシアタープロジェクトのチラシだったんです。その時、教職免許を取って教員になるか、映画業界にいくか迷っていたりもしたので、活動内容にすごく興味を惹かれて、まずは体験ツアーに参加することにしたんです。

KIQ:へー!そんなボランティア団体があるのですね。

亀井:そうなんです。実際にカンボジアへ行って、現地スタッフと一緒に小学校にスクリーンと発電機とスピーカーを持ち込んで、映画上映をしました。

KIQ:どんな作品を上映するんですか?

亀井:ラインナップはまだまだ少なくて…。カンボジアはクメール語なんですけど、子どもたちは字幕を追えないんです。なので、吹き替え版を作るんですけど、それもお金はかかるので。今上映できる作品のなかで子どもたちに人気なのは、やなせたかしさん原作の『ハルのふえ』や、宮崎駿さん脚本・高畑勲さん監督の『パンダコパンダ』などです。

KIQ:『パンダコパンダ』!私も子どもの頃に観て大笑いした記憶があります(笑)

亀井:カンボジアの子どもたちもすごく笑ってくれました!その笑顔を見ているとこっちが楽しくなるんですよね。実は僕、それまで映画って、結局自分が楽しければいいやっていう、独りよがりなものというイメージがあったんです。でも、ボランティアに参加して、初めて映画を届ける側になって、子どもたちが本当に『ニュー・シネマ・パラダイス』のように目をキラキラさせて映画を観てくれる姿を見た時に、映画って人のためになるんだなって心から感じたんです。それで、映画業界に進むことを決意しました。本当に良い経験だったので、ツアー後に団体メンバーになり、今でもその団体の活動を続けています。

KIQ:今も定期的にカンボジアに行っているんですか?

亀井:それが、コロナの影響でなかなか現地には行けていなくて…。ただ、カンボジアの場合は、私たちが「映画配達人」と呼んでいる現地スタッフの方々が定期的に上映してくれています。でも、僕もそろそろ行きたいなと思っています!

KIQ:じゃ、大学時代はその活動に全てを捧げて?

亀井:それだけというわけではなく、他にも、TIFF(東京国際映画祭)の広報インターンチーム・学生応援団にも参加していました。TIFFは関わる前から観客として通っていたんですが、ボランティアの経験を経て、今度は自分が携わる側に挑戦したいなと思って応募しました。

KIQ:TIFFの学生応援団ってどんなことをされるんですか?

亀井:会期中のメイン業務は、作品を観て、学生応援団のブログサイトやInstagramなどに学生の立場からレビューをアップすることです。他にもTIFFを若い人たちに知ってもらうために自分たちに何ができるかを考え、いろいろなことをしました。ある時には、同期にミュージカルサークルに所属しているメンバーがいたこともあり、野外上映をしている会場でフラッシュモブをする企画が立てられました。僕は、全く踊れもしないダンスを披露して恥ずかしい思いをしたという、今では良い思い出が残っています(笑)

KIQ:楽しそうですね(笑)映画宣伝についても学べそうです。

亀井:そうですね、宣伝の面白さとか、宣伝がないと映画は知られないということはTIFFを通してすごく学べました。

 

後編では、インド映画の魅力と現在の映画業界について、亀井さんが熱く語ってくれたことをお届けする。

★【ENDROLL】 「インド映画愛が止まらない。」松竹株式会社 映像戦略室 亀井稜さん ~後編~

 

【Information】

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