業界人インタビュー

【ENDROLL】 「まるで実家のような学校。」 NCW×『少女は卒業しない』×ENDROLL  ~後編~

2023-02-24更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そしてそんな面白い人たちを業界に送り込みまくっている
映画学校があるという!

映画・エンタメ業界の宝である業界人の人と成りに焦点を当てた、KIQ REPORTの大人気インタビュー企画「ENDROLL エンドロール~業界人に聞いてみた」

 

前回に続き、映画業界に携わる人材育成を目的とした映画学校 ニューシネマワークショップ(NCW)2月23日公開の新作映画『少女は卒業しない』とコラボレーションした特別企画をお届けする。

お話を伺ったのは、NCWの卒業生 で、映画『少女は卒業しない』監督・脚本を担った中川駿さんと、同じくNCWの卒業生で、同作の宣伝を手掛ける TAIRA の川口菜生子さん、そして、NCW 主宰の武藤起一さん

『少女は卒業しない』は、廃校が決まった高校での、卒業式までの2日間を描いた物語。NCWを卒業してもそれぞれが自分の道を歩み続け、そして今もつながり、互いに刺激を与え合っているというお三方の姿は、まるで本作の続編のようであって、なんだかちょっと羨ましくなった。卒業生にとって、NCWとは一体どんな存在なのかー。 

 

★前編:「卒業から続く、新たな道。」 NCW×『少女は卒業しない』×ENDROLL 

 

NCWは実家のような存在

これまで多くの人材を映画業界に送り出してきたNCW。そこで得ることは、技術だけに限らず、人生の大きな財産になるようなものだった。


左から川口菜生子さん、中川駿監督、武藤起一さん

 

KIQ川口さんは、NCWのディストリビューターコースのご出身かと思いますが、元々は違うお仕事をされていたのですか。

川口はい。人材派遣会社でキャリアコーディネーターの仕事をしていました。元々映画は好きだったので、映画業界に入りたいなとはなんとなく思っていたんですけど、創り手になるのは難しいんだろうなと思い悩んでいたんです。そんなときに、偶然NCWを見つけて、映画宣伝というものがあることを知りました。宣伝だったら今までの自分のスキルとかも活かせるのではと、通い始めましたね。

KIQ映画好きでも、映画宣伝の存在ってなかなか知らないですよね。武藤さんは、クリエイターコースもディストリビューターコースも指導されていると伺いましたが、それぞれどのようなコースなのでしょうか。

武藤クリエイターコースは基本的に監督を目指す人のためのコースです。すなわち「つくる」事ですね。クリエイター、つまり表現者を目指すのであれば、やっぱり何を創るかということが大事なので、まずは、全員に1人10分の映画を創ってもらうんです。さらに次のステップとしては全員に脚本を書いてもらい、その中から実際に映画化する脚本をいくつか選びます。そして、その脚本を基にチームごとで映画を創ります。脚本が選ばれなかった人も、スタッフという役割で映画制作に参加するので、技術はどんどん積み重なってゆく。また、コースを卒業した後も、制作部というところに所属すれば、映画制作に関する支援をある程度受けることもできます。

KIQみんなで一つの映画を創ることで、同期の絆も深まりそうですね。

武藤はい、技術だけでなく同じ目標に向かう仲間ができると思いますね。一方で、「みせる」事を学ぶディストリビューターコースは、最終的なゴールは就職することなんです。現在うちに来る求人をみても一番需要があるのは宣伝なので、映画業界に入りたいのなら、まずは宣伝から入ることを勧めています。

KIQ監督は、NCWのクリエイターコースで学んだことで特に心に残っていることはありますか。

中川何を教わったかというよりかは、人との繋がりを得たことが大きいですかね。僕にとっては、NCWは実家みたいな存在なんですよね。何か困ったときに連絡すると助けてくれるし、これまでも作品を上映する機会をくださったりとか、結局元を辿るといつもNCWに繋がっているんです。本当にもう感謝しかないですね。

KIQNCWでは技術を学ぶだけじゃなく、未来の業界人との繋がりができるんですね。それってすごいことだし、とても素敵な場所だと思いました。武藤さんは、今回のように教え子が創った作品を、教え子が宣伝する姿をご覧になって、いかがですか。

武藤本当に嬉しいですよ。今回も久しぶりに会ったけど、会うたびに成長が感じられるのは嬉しいですね。

 

映画業界は、お茶業界を参考に⁉

最後に、この先の映画業界について伺った。すると、監督はお茶について熱く語り始めた…!

 

KIQ映画『少女は卒業しない』では主人公たちの世界の全てだった学校との別れを描いていました。当たり前だった場所から卒業して、でも、その人たちの人生は、その先の道は続いていくという前に進む全ての人を後押しするような力を感じました。皆さんが今その身を置く映画業界も今まさに激動の、変化の時にいると思います。この先映画業界がこうなっていくと良いなと思うことはありますか。

中川そうですね…、最近ふと思ったことで言うと、実は僕は今緑茶にハマっているんですけど、緑茶って、静岡茶とか宇治茶とか色々種類があるじゃないですか。だけど、それって宇治茶だったら宇治の茶葉だけを使用しているわけではないんですよね。なぜなら、宇治だけで作ろうとすると、その時の気候などに左右されて毎回味が変わっちゃうんです。だから、常に安定した質の高いお茶を提供できるように他の茶葉もブレンドしているんです。

KIQへー!知らなかったです!

中川意外と知らないですよね。その一方で、シングルオリジンというものがあって、それは単一品種、単一農園という、その農園から採れた同じ品種の茶葉しか使わないというものなんです。なので、もちろん気候とかによって味がバラバラだし、年によって出来の善し悪しも異なるんですけど、その変化を楽しめるという良さがあって、この間まで僕はシングルにハマっていたんです。でも、最近は個性にちょっと飽きてきてしまって(笑)、またブレンドに戻りつつあるんです。つまり、何が言いたいかというと、お茶業界にシングルというものが誕生したことで、ブレンドの良さもより楽しめるようになり、お茶業界全体が盛り上がってきたんですよね。

KIQ面白いですね!

中川これを映画業界に置き換えると、ブレンド=商業映画、シングルオリジン=インディペンデント映画になると思っていて。商業映画も創れるポテンシャルのある人が、もっと自主制作映画的な作品を創るとか、いろんな選択肢が増えていくと、業界全体に多様性が生まれて、盛り上がっていくのではないかと思うんですね。

武藤それは本質を突いていると思いますね。商業映画がヒットしないと映画産業は伸びないわけですよ。でもその一方で、商業映画をヒットさせるために独自の作家性を失くしてしまう人ってたくさんいるんです…。だけど、それでも商業映画でオリジナリティを持ち続けている人が生き延びている。だから、それができる人が業界の中で生き残らなきゃいけないと思うし、結局それは本人だけではどうにもならない部分もあるので、プロデュースする側とか、周りの人たちがもっと支えてあげるようになっていくことも重要だと思いますね。

川口なるほど。確かに、映画の宣伝もまさにそうですね。ずっと受け継がれてきた基本的な宣伝手法があって、もちろんそれもしっかりとやりつつなんですが、今までになかった新しい宣伝手法や、その映画のターゲットのために絶対にやった方が良いと思う施策なんかを積極的に試していくそうすることによって、業界全体に新しい何かが芽生えて、盛り上がっていくような気がしますね。

 

NCWを卒業後、現在は映画の創り手として、宣伝マンとして一つの作品に携わっているお二人。その姿は、まるで『少女は卒業しない』の未来を描いているようだった。

互いに進む道は違えど、未来のどこかで交わった時に「NCWの卒業生である」ということで心が通じ合う瞬間があるに違いない。NCWは未来の業界人を担う技術だけでなく、その後の人生において、心の拠り所になるものを与えてくれる場所なのだー。

 

【ENDROLL】 「卒業から続く、新たな道。」 NCW×『少女は卒業しない』×ENDROLL  ~前編~

 

 

【Information】


●『少女は卒業しない』2月23日(木)公開
直木賞作家・朝井リョウの同名連作短編小説が遂に映画化。廃校前の高校を舞台に、4人の少女の“最後の卒業式”までの2日間を描いた物語。世界のすべてだった”学校“と”恋“に、さよならを告げようとする少女たち…。新たな青春恋愛映画の金字塔が誕生した。

監督・脚本:中川駿
出演:河合優実、小野莉奈、小宮山莉渚、中井友望 ほか

©朝井リョウ/集英社・2023映画「少女は卒業しない」製作委員会

原作:朝井リョウ『少女は卒業しない』(集英社文庫刊)

公式サイト:https://shoujo-sotsugyo.com/
公式Twitter:@shoujo_sotsugyo
公式Instagram:shoujo_sotsugyo

 

●映画学校 ニューシネマワークショップ(NCW)
ニューシネマワークショップ(NCW)は東京都新宿区早稲田町にある、映画業界に携わる人材育成を目的とした映画学校。運営は株式会社フラッグ。1997年に開校以来、映画制作のノウハウを教える「映画クリエイターコース」、配給・宣伝を教える「映画ディストリビューターコース」の2つのコースのほかに、映画俳優をめざす人のための短期集中の俳優ワークショップも開催している。2023年で27年目を迎え、映画監督は54人、宣伝・配給をはじめ映画業界へはこれまでに550名以上 のOBを輩出している

公式サイト:https://www.ncws.co.jp/
公式Twitter:@NCW_JP
公式Instagram:ncw_jp
公式Facebook: newcinemaworkshop

 

【Back number】
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