業界人インタビュー

【ENDROLL】 「覚悟を決めたら、やり通す」 映画プロデューサー 雨無 麻友子さん ~後編~

2022-12-23更新

 

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気付きからKIQ REPORTが新たに立ち上げた、映画・エンタメ業界の宝である、業界人の人と成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール~業界人に聞いてみた」

本企画では、特に20代から30代の、業界に新たな風を吹き込み、映画業界最前線で活躍している方々に話を伺い、現状だけではなく未来の業界の姿を模索していき、現在業界で働く人はもちろん、この業界を目指している人、エンタメ関連やマーケティング関連の業界で働く人にも刺激を与えていきたいと思っている。

 

前回に引き続き、映画『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』(12月23日公開)、映画『生きててごめんなさい』(来年2月3日公開)、さらにDMM TV配信コンテンツ『インシデンツ』(12月23日配信)や、ドラマ『Share your life?』(テレビ朝日・12月29日放送)も控える、スタジオねこの代表取締役であり、プロデューサーの雨無麻友子(あまなしまゆこ)さんへのインタビュー内容をお届けする。

後編では、新作『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』の誕生秘話から見えてきた、雨無さんの作品創りに対する思いを聞いてみた。

 

★【ENDROLL】 「映画と人が導く人生」 映画プロデューサー 雨無 麻友子さん ~前編~

 

覚悟を決めたら、自腹でも撮る。

たっぷりと語ってくださった、1本の映画が生まれるまでの裏話。そこから見えたのは、雨無さんの責任感と、とにかく熱い“作品への思い”だった。

KIQ: プロデューサーって、作品にはどのくらい関わるんですか。

雨無: 作品やプロデューサーにもよるんですけど、私は、基本的には最初から最後までやりたい派です。今度公開する『ジャパニーズ スタイル/ Japanese Style』は、本当に1から最後まで、私とアベラヒデノブ監督、俳優の吉村界人さん、女優の武田梨奈さんの4人でほぼ全部やっています(笑)

KIQ: え、4人で⁉(驚)

雨無: 3年前に、みんなで居酒屋で「何か映画を撮りたいね」と、ちょっと話したのがきっかけなんです。まず、4人でどういう作品を創りたいのかを話しました。どの企画もそうですけど、最初のコンセプトや、どんな思いでとか、何を撮りたいのかというのが発端でスタートしていくんです。今回は、どうせ皆大晦日は暇だろうから、大晦日に撮ろうと決まり、それならテーマも「大晦日」にしよう!となったんです(笑)世の中的にはハッピーな雰囲気が漂う一方で、そのノリに着いていけなかったり、ちょっと暗めな自分がいたりする…大晦日ってそういう感じあるよね、と共感しあって。そこから、いろいろなアイディアを出していきました。でも、実際に映画を撮るって、お金のこととかもあるし、結構実現させるのって難しいんですよ…。それでも、やりたい!って思いだけで走り始めて…本当に手作りで作った作品です!

KIQ: すごいですね。確かに、アイディアはあっても、実際に実現できるものというのは、本当に一握りですもんね。ちなみに、資金面はどのようにされたんですか?

雨無: ちょうどLINE NEWS「VISION」さんからご相談を頂いていたので、そことのコラボレーションということで、映画の裏側を「VISION」で流してもらうことでご協力を頂きました。あと足りない分は、実は私が出しました(汗)もう、とにかくどうにか形にしないと!と思って。

KIQ:え、ご自身で?雨無さんはどうしてそこまでできるんですか⁉

雨無: もう、覚悟ですね!やるって言ったらやるしかない!という。私も頑固なので(笑)そういう意味でいうと、この仕事は責任感がないとやっていけないかもしれません。あと今回は、監督の才能の素晴らしさも知っていたし、吉村界人さんと武田梨奈さんというふたりの俳優の力も信じていたので、そこがあれば大丈夫!という自信はありました。さすがに私も先が見えてなければやらないので。純粋に自分もアベラヒデノブ監督で、この2人の芝居が観たいなと思いましたし、とにかくやりたい!って気持ちがあるから、大丈夫!みたいな。(笑)

溢れ出る、今後の夢

これからもずっとプロデューサーをやっていきたい!と唱える雨無さん。映画を創る際に心掛けていることや、今後のビジョンについて伺った。

KIQ: 今後、こういう作品を創っていきたいというのはありますか?

雨無: 一番は、問いかけがある作品です。物語を楽しめるのはもちろんなんですけど、その先にそれぞれ観た方の生活につながる問いかけができる作品が創りたいです。これが正解、不正解とかじゃなくて、いろいろ考えらえるような。あとは、母の影響もあり昔からホラーが好きなので、ホラーもやりたいです!人をびっくりさせたりドキドキさせるのって、難しいじゃないですか!やりがいがありそうです。

KIQ: 最近は、配信サービス会社が製作する映画の勢いもすごいですが、ホラー映画は特に映画館に向いているジャンルな気がしますね。ちなみに雨無さん的には配信映画について意識されることはあるんですか?

雨無: 配信は配信で、CGとか丁寧に作られているし、好きな作品ももちろんありますけど、やっぱり私は劇場が好きです。そもそも、映画館で観ることを前提にされているものと、家でスマホとか小さい画面で観ることを前提としているものとでは、作り方がちがいますよね。私は劇場という空間で、雑念を消して自分と対話するように観る時間って、他とは感覚が違う特別なものだと思うので、劇場は無くなってほしくないなとすごく思います。
だから、今後は海外の劇場で公開する機会を広げいくというのもありだなと、最近は思うんです。例えば、海外との合作とか。どこかに企画を出して、マッチして…というような場って、案外開かれているんです。そうして、海外で資金を集められれば、日本だけでなく、海外の劇場でも上映されるので、結果的に売上も増えるし。

KIQ: 海外との合作、おもしろそうですね。一方で、今、日本の映画業界の中でもっとこうなったらいいのになぁと思うところはありますか。

雨無: うーん、シームレスにできないことですかね。古いしきたりとか、暗黙の決まりとかって結構あるじゃないですか。そういう固定概念を壊したくても、壊せない時は悔しいです。それ、本当にそうなの?一回見直そうよ!と思うことは正直ありますね。

KIQ: すごくわかります!変えるのって結構大変ですよね…。

雨無: 特に私は、作品のイメージや方向性を認識合わせする機会がなく映画製作が進んでいくのが、すごくいやなんです。本当にスタッフのイメージは揃っている?って。だから、私の場合、認識合わせは必ずやるようにしています。できるだけ早い段階で、みんなで一丸となって創っていきたいというのはありますね。

KIQ: 全員が同じ方向を向いている方が創りやすいし、売りやすいですよね。

雨無: まちがいなく!でも、現実的にはなかなかみんなのスケジュールが合わなかったり、企画費が払われなかったりして、難しいんですよ…。A24とかは、そういう一貫性があるのがすごいなーと、いつも思いますね。企画に時間をかけて、資金面と脚本のやりたいことも調整して、ちゃんと届いて100年以上観てもらえる作品をつくっていくために、これからも精進します。

 

★【ENDROLL】 「映画と人が導く人生」 映画プロデューサー 雨無 麻友子さん ~前編~

 

【Information】

ジャパニーズ スタイル/Japanese Style12月23日公開
監督:アベラヒデノブ
出演:吉村界人、武田梨奈

「大晦日が舞台で、実際に大晦日に撮影したドキュメンタリー的な要素もある新感覚な映画です。“ジャパニーズスタイル”は英語で袋とじの意味で、袋とじを開く展開が待っています。大晦日から新年へのお楽しみ袋としてぜひ、開けてもらいたいです。吉村界人さんや武田梨奈さんのお芝居のぶつかり合いが素晴らしく、さらにアベラヒデノブ監督の描く台詞・キャラクター・状況が絶妙で…!コメディでもあるので、ぜひたくさん笑って頂けるとうれしいです!」(雨無)

 

生きててごめんなさい2023年2月3日公開
監督:山口健人
企画・プロデュース:藤井道人
出演:黒羽麻璃央、穂志もえか

「なかなか他にはない変化球でかつ等身大の恋愛映画です。息苦しい現代社会の中でのある恋人ふたりの、依存したり、嫉妬したり、夢とのバランスで悩んだり…でもふたりだからそれができる、そんな物語です。人によってすごく刺さるか、刺さらないかが分かれるようで、ぜひ映画を観た後にいろいろな方と話していただきたいです」(雨無)

 

インシデンツ DMM TV 配信コンテンツ 12月23日配信
企画・プロデュース:佐久間宣行
監督:住田崇

「地上波で流せない豪華な新番組です!放送禁止用語も満載のめちゃくちゃ面白いコントが観られるのはここだけかと思いますので、ぜひご覧ください」(雨無)

 

『Share your life?』テレビ朝日系 12月29日深夜24:10〜
監督:松本花奈

「大切な家族に寿命を分けられるとしたら?年末に大切な家族と見て頂きたい作品に仕上がりました。10分なので気軽に観られるかと思います。ちょっと不思議であたたかな物語を美しく松本花奈監督が映し出しています。」(雨無)

 

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【Back number】
第1回:PRプランナー 髙 未佳さん
前編「映画館の空間、そのものが好きー」
後編「映画館と人をつなぐ役割を」

 

 

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