業界人インタビュー

【ENDROLL】 「創り手の気持ちを大事にしたい」 映画祭運営 久米 修人さん ~前編~

2023-01-13更新

 

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界の宝である、業界人の人と成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール~業界人に聞いてみた」。
業界に新たな風を吹き込む20代から30代を中心にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

 

今回は、認定NPO法人東京フィルメックスで、毎年10月末から11月にかけて開催される映画祭「東京フィルメックス(以下フィルメックス)」の作品と運営の担当をされている久米 修人(くめ しゅうと)さんに話を伺った。

25歳にしてフィルメックスのプログラミングに携わり、何よりもエネルギーに溢れている久米さん。
前編では、久米さんのこれまでの歩みや、業界人でも意外と知らない部分が多い映画祭の裏側を中心にお届けする。

 

★【ENDROLL】 「全力。だから、楽しい。」 映画祭運営 久米 修人さん ~後編~

中学生にして、映画専門学校の門を叩いた。

中学生の時から映画に携わりたいという強い思いがあったという久米さん。学生時代の頃から今も変わらないその“心意気”とは―。

KIQ:学生の頃からインターンとしてフィルメックスに関わっていたと伺いました。

久米:日本映画大学に通っていたのですが、そこで映画祭のサークルに入ったことがきっかけです。

KIQ:日本映画大学って新百合ヶ丘にある?

久米:そうです!よくご存知ですね! 僕はどちらかというと作り手志望で入学したんですけど、ほかの学校の子たちがどんな作品を創っているのかが気になって、他校の学生映画作品が多く観られる「東京学生映画祭」というサークルに入りました。そこで自分よりおもしろいことを創る人たちがいっぱいいるんだ!と知って、じゃあ自分は違うことをやった方がいいだろうと思い始めて…。それで、インターンや短期スタッフでフィルメックスに携わらせてもらうようになりました。学校の外で何かをするのは楽しかったです。あまりじっとしてはいられないタイプなだけかもしれないですが(笑)

KIQ:そもそも日本映画大学に入学したということは、元々かなりの映画好きとか?

久米:いろんな人から「映画好きなんだ?」って言われるけど、実はそんな感覚はないというか(笑)物心ついた頃から映画の存在を当たり前に感じていて。記憶にある限り初めて映画の仕事をしようと思ったのは中学生の時かな…。映画のことを学べる高校はなさそうだったので、高校3年間が無駄だなーと思って(笑)それで大学とか専門学校に相談しに行ったんですけど、多くの人に高校にはちゃんと行った方がいいと言われたので、仕方なく高校は普通のところに行きました(笑)

KIQ:すごい行動力ですね!なんで中学生の時にそこまで思えたんですか?

久米:よくわからないです(笑)この映画に出会ったから!というような一本も特になくて…。ただ、当時から脚本術の本とかを読んで映画の作り方を勉強したり、分析したりするのは好きでした。

KIQ:中学生で脚本術に興味を持つってすごいですね。聞いたことがない!(驚)そんな中学生が、仕方なく普通の高校に通い、念願の映画を学べる大学に進み、そこでフィルメックスに携わっていく、と。そのままフィルメックスに就職した決め手は何だったんですか?

久米:フィルメックスにお誘い頂いた時点では実は絶対に映画の仕事をしようと思っていたわけではなかったんです。というのも、映画業界で働かないと映画に関われないわけではないと思っていたので。

KIQ:確かに…。

久米:だけど、せっかくお声がけ頂いたのでやってみようかなーと思い、今に至っています。そもそもフィルメックスに携わったのは、現場というか、実際に手を動かしているのが好きだからかもしれないです。あとは、インターンをお願いできるのがフィルメックスくらいだったというのもありますね(笑)

少数チームゆえに効率化がものを言う。

 

KIQ:久米さんは今具体的にどんな業務を担当されているんですか?

久米:これを説明するのが結構難しいのですが…、一言で言うと、作品と運営の担当をしています。(作品の)セレクションの部分でいうとプログラミングディレクターである神谷(直希)さんが最終的に招待する作品を決定するので、僕や他のスタッフは鑑賞して、いいなと思う作品があれば、神谷さんに推薦したりしています。

KIQ:セレクションは大変なイメージがあります。

久米:そうですね、半年以上かけて一日に何本も観て選んでいきます。国内作品の場合は、プロデューサーさんや配給さん、監督自身から作品を紹介頂くことも多いですが、多くの海外作品の場合はセールスエージェントという権利元があるので、海外の映画祭に行ったときにはどういう作品を持っているかをチェックしたり、いつ頃どういう作品が観られるのか予定を組んだりもします。海外の権利者との諸々の交渉やゲストのアレンジまで含め、作品側との交渉は僕がメインで担当しています。

KIQ:すごい、幅広く担当されているんですね!

久米:うちはかなり少数のチームなので一人ひとりが多岐にわたる仕事をする必要があるんです。なので、自分の業務をどれだけ効率化できるかは常に考えていて、それが意外とやりがいだったりします。

KIQ:ここまでお話を伺っていて、「効率化」はすごく久米さんっぽいと思いました(笑)他にはどんな時に楽しさややりがいを感じますか?

久米:1年単位の仕事なので、去年と比べて今年できたことがわかりやすいので、それはやりがいになっています。あと、僕はデジタルなものに触れることが好きなので、もっとこういうツールを導入しようとか考えて、結果的に業務の効率化をはかれた時にも快感ややりがいを感じますね。

KIQ:1年単位というのは、今年の映画祭が終わったら、来年の映画祭の準備を始めるというイメージでしょうか?

久米:そうですね。準備といってもいろいろあって、自分たちですべてハンドリングできるわけではないんですけど、映画祭は基本的に支援があって成り立つものなので、頂ける支援に合わせてやれることを考えるのが事務局の仕事です。

KIQ:なるほど。その中で最近だとコロナによる変化も大きかったのでは?

久米:2020年と2021年はオンラインでの配信を実施しました。その結果、地方の方も観られるようになったというのは良かったんですけど、オンラインと配信では上映の素材も違いますし、交渉も別なので、個人的には2つの映画祭の業務をやるような感覚でした。映画祭は配給権を完全に買い取って上映するわけではないので、オンラインでやるというのは予算的にも労力的にも意外と難しいんですよ。

KIQ:オンライン配信って意外と手間がかかるものなんですね。

久米:はい。フィルメックスとしてはやはり映画館で上映したいという思いがありますが、創り手がどうあってほしいかを一番大事にしたいとは思っています。ただ、ゲストとして来日して頂けた場合は、時間をかけていろいろ紹介できたりもするので、結果的にはオンラインで登壇頂くよりも効果が全然違うなとは思いますね。人と人の関係は時間がものをいう気がするので。

 

言葉の節々にエネルギーが溢れまくっていて、お話しているとこちらもパワーをもらえちゃうような久米さん。
来週アップ予定の後編では、そんな久米さんの仕事に対する姿勢やモチベーションについてご紹介します。

 

(後編に続く・・・)

★【ENDROLL】 「全力。だから、楽しい。」 映画祭運営 久米 修人さん ~後編~

 

 

【Information】

東京フィルメックス

東京フィルメックスは2000年に創設され、新進気鋭の監督たちのアジアを中心に世界から独創的な作品を集めた国際映画祭として開催されています。アジアの優れた新進作家を紹介するコンペティション部門、映画の最先端を切り開く著名な監督の新作を紹介する特別招待作品部門など、創造性溢れる多様な作品を紹介しています。海外の国際映画祭を賑わせた話題作を、先駆けて上映するだけでなく、内外から監督や映画人をお招きして、観客との質疑応答を行うなど、交流の場を設けています。第23回東京フィルメックスは2022年10月29日〜11月6日にかけて開催された。

公式サイト:https://filmex.jp
Twitter:https://twitter.com/tokyofilmex
Facebook:https://www.facebook.com/tokyofilmex/
Instagram:https://www.instagram.com/tokyofilmex/

 

【Back number】
第1回:PRプランナー 髙 未佳さん
前編「映画館の空間、そのものが好きー」
後編「映画館と人をつなぐ役割を」

第2回:映画プロデューサー 雨無 麻友子さん
前編「映画と人が導く人生」
後編「覚悟を決めたら、やり通す」

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映画ファンってどんな人? ~ライフスタイルで映画ファンを7分析~
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