業界人インタビュー

【ENDROLL】 「映画と人が導く人生」 映画プロデューサー 雨無 麻友子さん ~前編~

2022-12-16更新

 

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気付きからKIQ REPORTが新たに立ち上げた、映画・エンタメ業界の宝である、業界人の人と成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール~業界人に聞いてみた」

本企画では、特に20代から30代の、業界に新たな風を吹き込み、映画業界最前線で活躍している方々に話を伺い、現状だけではなく未来の業界の姿を模索していき、現在業界で働く人はもちろん、この業界を目指している人、エンタメ関連やマーケティング関連の業界で働く人にも刺激を与えていきたいと思っている。

 

第2回目は、映画『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』(12月23日公開)、映画『生きててごめんなさい』(来年2月3日公開)という2本の映画、さらにDMM TV配信コンテンツ『インシデンツ』(12月23日配信)も控える、スタジオねこの代表取締役であり、映画プロデューサーの雨無麻友子(あまなしまゆこ)さんに話を伺った。

1つの作品の誕生から、終わりまでを導いていくプロデューサー。そんな大役を若くして担い、すでに数々の作品を世に生み出してきた雨無さんは、一体どんな人物なのか―。とことん掘り下げていく。

 

人柄によって拓かれてきた道

とにかく人との出会いを大切にし、持ち前の社交性でどこまでも人とつながる雨無さん。若くしてプロデューサーになったのは、これまでの出会いによって導かれたからのようだ。

KIQ: 20代、しかも女性のプロデューサーというのは、業界でも珍しいように思います。なぜプロデューサーになろうと思われたんですか?

雨無: きっかけは、大学時代に参加した学生映画祭です。日本学生映画祭(※1)の代表をしていたとき、上映する作品の関係者と関わる機会が多くありました。そのつながりで、松本花奈監督(『明け方の若者たち』『脱脱脱脱17』)や甫木元空監督(『はだかのゆめ』『はるねこ』)など、いろんな映画監督や業界の方と出会うようになりました。そのうち、この業界って変わった方が多くておもしろいなーと思い始めて(笑) 「なんとかこの人たちの作品を創りたい!」「もっと、こうしたらいい作品になるんじゃないかなぁ」と、気づいたら考えるようになっていたんです。

KIQ: すごいですね、学生時代からすでにプロデューサーの頭角が…!

雨無: 就活の時期に「映画は創りたいけど、監督としてではないしな…」とかいろいろ悩んで、映画祭でお世話になっていた斎藤工さん(俳優)や松永大司監督に相談したことがあります。その時に工さんにも松永監督にも「プロデューサーに向いている」って言ってもらって。

KIQ: すごいですね。雨無さんのどういうところがプロデューサーに向いていると思われたんですかね?

雨無: 人と人をかけ合わせたり、何かと何かをかけ合わせたりしながらイベントを作ったりするところを評価して頂けたからではないかと思います。当時、工さんにも「この監督、おもしろいですよ!」と紹介したりしていたので。

KIQ: なるほど。ちなみに、普通に映画会社に就職するというのは、選択肢になかったんですか?

雨無: 一応、大手配給3社は受けましたが全部落ちてしまって…(笑) もし受かっていたら、全然違う人生になっていたかもしれないですね。でも、今が本当に楽しいので、結果的にはこうなってよかったなと思います!

 

KIQ: そもそも雨無さんの映画史はいつから始まったのでしょうか。

雨無: 私の映画史の始まりは…(笑)、高校生の時ですかね。それまでは、そこまで映画好きというわけではなかったのですが、高校生の時にたまたま映画のおもしろさに気づくタイミングが重なったんです。
例えば、私の通っていた高校では英語のシャドーイングを洋画で行ったり、『ガタカ』で化学の勉強をしたりなど、映画を教材として扱う授業が多かったのでそのおかげで初めて勉強が楽しくできました。
また、カナダに短期留学した時には、ホストファミリーが週5で映画を観るほどの映画好きで(笑)よく映画館に行ったんです。よく覚えているのは、“ドライブインシアター“と言って車で映画を見る施設がカナダでは浸透しているのですが、『奇人たちの晩餐会』を観ながらみんなで一緒に笑って…という経験をして、映画は言葉がわからなくてもみんなで楽しめるんだ!と感銘を受けたり。そういうことがあって、徐々に映画に興味を持ちはじめました。

KIQ: そこから学生映画祭につながるわけですね。

雨無: そうなんです。大学生でも、映画関係者とつながりが持てる機会はないかなーといろいろ調べていく中で、学生映画祭を見つけ出しました。実際に行ってみたら、みんなすごい熱量で楽しそうだったので、私もやってみたい!と思って参加しました。今でも活動していて、委員も募集していると思うので、大学生で興味ある方はぜひチェックしてみてほしいです。

 

新たな一歩を踏み出したのは、自分が創りたい作品を創るため

責任も大きく、決して楽な仕事ではないプロデューサー。だけど、雨無さんは、本当に楽しそうに仕事の話をする。
その理由に迫ってみた。

KIQ:  プロデューサーの仕事内容って多岐に渡りますよね。

雨無: そうですね。最初の就職先で、『亜人』のラインプロデューサーなどを担当された岡林修平さんという方にいろいろ勉強させて頂きました。学生時代から、私はいろいろな現場で美術とかエキストラなどの手伝いをしていたんですけど、いろんなつながりから岡林さんを紹介頂いて、そのまま入社したという感じです。岡林さんは、良い意味で無茶ぶりがすごかったので(笑)、成長スピードは速かったと思いますね。いつも「最後は責任をとるから、やってみて!」と言ってくれて。

KIQ: 素敵な上司ですね! でも、現在は退職されて、「スタジオねこ」を立ち上げられていますよね? 会社を立ち上げるって、すごく大変なことだと思うのですが、そこまでしても独立したかったのはどんな理由があったのでしょうか。

雨無: 3年ほど勤めて、その間にいろいろ経験はできましたが、関わる作品は会社が選ぶ部分がどうしてもあって…。やっぱり自分が選んだ作品や企画自体をやってみたいなと思って独立しました。

KIQ: そうすると、今は基本的に“雨無さん”に対して仕事の依頼がくるということですよね?それって、これまで雨無さんが築きあげてきた人脈が大きく影響しそうですね。

雨無: そういう部分はあると思います。過去の付き合いから、その後仕事の相談を頂いたり、相談したりですね。今制作している12月29日放送の単発ドラマ(テレビ朝日)はかつてのインターン先の先輩が共同プロデューサーで、松本花奈監督の作品ですし。

KIQ: そうやって、フリーの人たちが企画ごとに集うというスタイルって、何だかいまどきですよね。

雨無:  確かに! 旅一座みたいな(笑)

KIQ:  雨無さんのお話を伺っていると、本当にお仕事を楽しんでいらっしゃるのが伝わってくるのですが、雨無さんにとって、プロデューサーの一番のやりがいってどんなところなんでしょうか?

雨無:  嬉しい瞬間は、舞台挨拶とか、お客さんが劇場から出てくる顔を見た時ですかね。お客さんに映画を観てもらってやっと、完成した!と思うので、その瞬間が嬉しくて、もう大変だったことは忘れますね。
あとは、昔一緒に仕事をした方々が、今はこんな仕事をやっているんだとか、人の人生を見られることも楽しいです。長くやっていればやっているほど、楽しいことが増えてくる感じはしますね!

KIQ:  本当に人がお好きなんですね!雨無さんの周りに人が集まってくる理由が、なんだかわかってきました。

 

次回は、最新作『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』の、ここでしか聞けない驚愕的な誕生秘話から、日本の映画業界への思いや今後の夢まで、たっぷりお届けします。

※1)日本学生映画祭…東京学生映画祭・TOHOシネマズ学生映画祭・京都国際学生映画祭のグランプリ作品を一挙に上映する国内最大の学生映画祭

 

(後編に続く・・・)

【ENDROLL】 「覚悟を決めたら、やり通す」 映画プロデューサー 雨無 麻友子さん ~後編~

【Information】

ジャパニーズ スタイル/Japanese Style12月23日公開
監督:アベラヒデノブ
出演:吉村界人、武田梨奈

「大晦日が舞台で、実際に大晦日に撮影したドキュメンタリー的な要素もある新感覚な映画です。“ジャパニーズスタイル”は英語で袋とじの意味で、袋とじを開く展開が待っています。大晦日から新年へのお楽しみ袋としてぜひ、開けてもらいたいです。吉村界人さんや武田梨奈さんのお芝居のぶつかり合いが素晴らしく、さらにアベラヒデノブ監督の描く台詞・キャラクター・状況が絶妙で…!コメディでもあるので、ぜひたくさん笑って頂けるとうれしいです!」(雨無)

 

生きててごめんなさい2023年2月3日公開
監督:山口健人
企画・プロデュース:藤井道人
出演:黒羽麻璃央、穂志もえか

「なかなか他にはない変化球でかつ等身大の恋愛映画です。息苦しい現代社会の中でのある恋人ふたりの、依存したり、嫉妬したり、夢とのバランスで悩んだり…でもふたりだからそれができる、そんな物語です。人によってすごく刺さるか、刺さらないかが分かれるようで、ぜひ映画を観た後にいろいろな方と話していただきたいです」(雨無)

 

インシデンツ DMM TV 配信コンテンツ 12月23日配信
企画・プロデュース:佐久間宣行
監督:住田崇

「地上波で流せない豪華な新番組です!放送禁止用語も満載のめちゃくちゃ面白いコントが観られるのはここだけかと思いますので、ぜひご覧ください」(雨無)

 

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【Back number】
第1回:PRプランナー 髙 未佳さん
前編「映画館の空間、そのものが好きー」
後編「映画館と人をつなぐ役割を」

 

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