プロが見たこの映画

宣伝担当が語る『映画 えんとつ町のプペル』がヒットすると思う理由④:最終回

2020-12-24更新

最終回:宣伝プロモーションは一方通行なのか?

宣伝はこちら側の情報をお客様に伝えていくことであり、一方通行になりがちである。「相手がどう思っているか?」は、広告の反応で読み取るしかなく、その感情はコントロールできないと思ってきた。しかし、西野さん(西野亮廣:製作総指揮・脚本・原作)のコミュニケーションを見ていると、そうではないと思えてくる。本ブログは映画宣伝の目線で、今まで経験したことがない西野さんの戦略を、あくまで私の主観で感じたことを述べている、事実と違うこともあるかもしれないが、ご理解いただきたい。

感情を押し付けず、共感を得る

宣伝コミュニケーションをとる時は、「共感してもらうこと」を期待しながらコミュニケーションをする。「そうだよね」と言ってもらいたい、だから一生懸命に伝えようとする。映像を通してだったり、コピーだったり、誰かの口を借りて伝えていくのだが、なかなか思った通りには伝わらない。西野さんは話しの達人である。お笑いで舞台に立たれているのだから、当然なのかもしれないが、同じ話を何度聞いても飽きることなく、同じ感情になるのだ。

取材をしていると、同じ質問が繰り返される。「どうしてこの映画を作ったのか?」、「どうしてテレビから軸足を抜いたのか?」、「どうして絵本を書き始めたのか?」、「どういう思いで作ったのか?」。一番最初聞いた時、何かお笑いのネタの一つを聞いた感じがした。話が完成されており、リズム良く語るからだ。話が上手過ぎるのもあるが、感情を押し付けて来ないことに気づいた。だから、何度聞いても飽きないのかもしれない。
「こう思って欲しい」という感情を押し付けられたら、きっと「またか」となってしまうと思うのだが、そうはならない。何度でも聞いていたくなり、毎回同じ気持ちになれる不思議な感覚である。これは、感情を押し付けない話し方が生み出す「余白」なのかもしれない。聞く側の感情に余白を残してくれるから、安心して聞くことができ、考える余裕ができる。この絶妙な距離感こそが、相手の心を開かせ、結果、共感してもらえるのではないかと思っている。

人は本当に感動した時、涙は静かに流れる

「映画 えんとつ町のプペル」を見ると感動する。Filmarksでもcinemacafeでも満足度は100%で、オススメ度も100%であるから、それは間違いない。ここにも、西野さんが作り出す絶妙な距離感があるように思う。普通は「絶対に面白いよ」と人に勧めるのは勇気がいること。相手が満足するかどうかは、人によるからだ。だが、このアンケート結果は「誰が観ても感動するに違いない」と感じている数字なのだ。それは、観客との絶妙な距離感を保ち、ここでも感情の余白を残してくれているからではないだろうか?押し付けられた感動ではなく、自分の心の中の何かが刺激される感動、だから誰もが楽しめる。
「ここで泣いてください」という押し付けられる感動は時にtoo muchになることもあるが、プペルはそうではない。「大人も泣ける」と宣伝文句として使っているので「どれだけ大泣きするのか?」と思うかもしれないが、アンケート結果にも出ていることだが、号泣している人、何回も泣いている人、ウルっときた人など、泣き方もそれぞれなのだ。感動するポイントも、感情移入するキャラクターも違うのだ。自分の感情が動く場所で自由に感動できる、だから気づくと涙があふれ、静かに流れ出す。自分の心が映画に重なり、懐かしく、切なく、嬉しい気持ちに出会えるのだ。

■動画:『映画 えんとつ町のプペル』完成披露試写会〜届いた想い編

 

西野亮廣の中にいるルビッチ

完成披露試写会の夜、いつもより緊張しているように見えた舞台袖から会場を見る西野さん。8年間、今日の日を信じて前に進んできた男は何を思うのだろうか。その姿はルビッチと重なる。「信じて信じて信じ抜き、その先に何が見えるのか?あるかもしれないしないかもしれない、でもやってみないとわからない。」
そして上映終了。彼が信じてきた作品は、スタンディング・オベーションで終えた。そして舞台挨拶、彼はルビッチのセリフを借りて想いを伝えた。何度も聞いてきた作品に対する想いだったが、いつもと間合いが違った。そこに少しだけ感情が見えた気がした。

一人でも多くの人に観て欲しい。宣伝をやっていると当然こういった感情になる。構想8年、制作期間4年に対して、宣伝期間は1年と短いが、凝縮された一年だった気がする。「もっと広がれ、もっと伝われ。」そんな思いしかない。宣伝マンは決して前に出ることなく、制作者の想いをお客様に届け、最後の仕上げをしていく仕事。

今回プペルを通して、いろんなことを学ばせてもらった。固定概念を捨て、相手に情報を届ける様々な手法を学んだと思う。学んだだけでは終われない、だから絶対にヒットさせなくてはならないと思っている。

■動画:『映画 えんとつ町のプペル』完成披露試写会〜届けたい想い編

映画 えんとつ町のプペル』宣伝担当

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© 西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

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