業界人インタビュー

【ENDROLL】「満席を呼ぶ方程式」デジタル広告プランナー 雫石海さん~後編~NEW

2024-11-22更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。

 

今回も前回に引き続き、エンタメに特化したデジタルマーケティング・広告代理店業やリサーチなどを展開しているGEM Partners 株式会社にて、デジタル広告プランナーとして活躍する雫石海さんに話を伺った。

後編では、愛をもって作品を宣伝する雫石さんが、与えられた宣伝費についてもどかしさを感じる理由について熱く語ってくれたことをお届けする。また、データを活用して方程式を作ることへ挑戦していることや、今後の夢についても聞いてみた。

 

【ENDROLL】「データと映画愛」デジタル広告プランナー 雫石海さん~前編~

 

制作費と宣伝費のバランス

普段の生活においても広告のチェックは怠らないという雫石さんが、今年最も印象に残った広告とは?また、代理店が感じる、宣伝費についての本音を教えてくれた。

KIQ:普段の日常生活で触れる広告もやはり注意深くチェックされるのですか。

雫石:同じような仕事をしてる方は皆さんそうかもしれないですが、広告は注意して見ます。XやTikTokを見ていても、どんなクリエイティブなのかは特に細部までチェックしてしまいます。YouTubeの広告も基本的にはスキップせずに見ますね。自分が担当していなくても、ヒットした作品はどういった宣伝をやっていたのかを研究して、活かせる部分はかしていきたいと常に考えています。今は映画の数だけはたくさんあるので、参考にできるものは無限にありますからね(笑)

KIQ:確かに、参考作品は無限にありますね(笑)雫石さん的に最近特に印象的だった広告はありますか?

雫石:結局広告としてはクリエイティブが一番印象に残る気がしているのですが、そういった意味で今年特に印象的だったのは『関心領域』です。赤を特徴的に使っていたり、文字がインパクトあったりなど、「これは一体どんな映画だろう?」と思わせつつも、ちょっと不気味な感じも出しているところがすごく良くできいるなと思いました。

KIQ:『関心領域』はすごく印象的でしたよね!私も思わず劇場に見に行ってしまいました。

雫石:すごくよかったですよね!ただ、自分の立場で言うのもあれですが、広告って映画館に来てもらうための本当に最後のワンプッシュだと思っているんです。最初の映画を知るきっかけは好きなタレントさんやインフルエンサーの方などが勧めていた、ということも多いと思いますが、そういった宣伝タイミングとうまく組み合わせて広告を打つ、ということは常に意識しています。いきなり知らない映画の広告に触れただけでは、直接的な意欲にはなりづらいと思うので。

KIQ:なるほど。

雫石やっぱり映画の興行収入は、最終的に宣伝のさじ加減で決まるところが大きいと思うんです。もちろん、過去には『カメラを止めるな』や、最近だと『侍タイムスリッパー』など、面白い映画は口コミでしっかりと話題になることもありますが、そういったヒット作は本当に一握りですよね。

KIQ:本当にそうですよね。

雫石:代理店としてもどかしいのは、宣伝費が決まってから依頼が来ることが多いということです。そのため、「こんなに素晴らしい作品なのに、これしか宣伝ができないのか…」と感じることがよくあります。正直なところ、少しでも制作費を削減して、その分を宣伝費にまわした方が、もっと多くの人に作品を届けられるのでは?と思う瞬間もあります…。

KIQ:なるほど、そういったジレンマがあるんですね。

雫石:もちろん、みなさんいろいろなしがらみがある中で予算を組んでいるのは重々承知ではあるのですが、結局お客さんに作品の魅力が伝わらないと劇場には足を運んでもらえないと思うので、もう少し宣伝費の比重を大きくした方が、みなさんにとっても良い結果になるのではないかと。

KIQ:宣伝の重要性をもっと多くの方に知っていただけると嬉しいですよね。

効果的な方程式の確立

映画館の熱気を取り戻すために、今こそ映画業界が一致団結する時だと語る雫石さんの情熱に注目!また、雫石さんがいつか叶えたい夢とは?

KIQ:今後の目標や、特に力を入れていきたいことなどはありますか。

雫石:デジタルマーケティングにおいて、データを活用するという意識がまだ十分に浸透していないと感じているので、リサーチを行い、トラッキングデータを見ながら広告にかしていくことの良さをしっかりと広めていきたいです。あと、今後はデータ使って、効果的な「方程式」を構築していきたいと考えています。こういうデータがあるから、こうすればこういう結果が出る、といった方程式を確立して、それをいろいろな作品の宣伝に活かせるようにしたいんです。そのために、日々試行錯誤を重ねています。

KIQ:その方程式ができたら、かなり効率的になりそうですね。

雫石:もちろん他社さんも同じようなこと考えているとは思いますが…(苦)あとは、やっぱり映画館を満席にしていきたいですよね。映画のあの満席の瞬間って特別じゃないですか。以前、『翔んで埼玉』を担当していたのですが、元々あの映画の期待値はそれほど高くはなかったと思うんですが、初週に池袋の劇場に観に行ったら、本当に幕間からすごい熱気があって…!あの時はしっかり宣伝が届いている感覚がして、めちゃめちゃ嬉しかったんです!

KIQ:わかります!満席っていいですよね。

雫石:あと、個人的なことで言うと、未だに脚本を書きたかったりはするんです。脚本と宣伝の両方でクレジットされる人はほぼいないのではないかと思うので、そこはいつか実現できたらなと。

KIQ:今も脚本を書かれているんですか?

雫石:時間があるときには、月に1本ほど短い作品を書いています。

KIQ:ご自身が書いた作品を宣伝する日が来るのが楽しみですね!最後に、映画業界について、もっとこうなったらいいなという思いや不満はありますか?

雫石全体的に映画鑑賞者が減っていることに、もっと危機感を持つべきだと感じています。現状、20〜30代は映画館には来ていますが、配信を含めて映画を観る人としては減っていて、一方で、50〜60代は映画館には来ないけど、配信などで映画を見る人は一定数いる、といった世代間のギャップも生まれています。コロナ禍のときは映画業界全体がひとつになって、みんなで乗り越えよう!という熱気を感じていましたが、今もその意識を持って業界全体で協力して取り組む必要があると思うんです。

※参考
特集:完全復興に向けて映画鑑賞者の現状を考える 第1回 映画館から消えた人たちは誰なのか(「GEM Standard」エンタテイメントビジネスに特化した情報プラットフォーム コラムより)

KIQ:業界全体で連携しないと乗り越えられないですよね。

雫石:そうですよね。弊社はどこの映画会社にも属していないので、ある意味で包括的に見れる立場だと思うので、その立場をフルに活用していければと思います。

 

【ENDROLL】「データと映画愛」デジタル広告プランナー 雫石海さん~前編~

 

 

【Information】

エンタテイメント業界に向けたデータ×デジタルマーケティングサービスを提供しております。
商品一覧:https://www.gem-standard.com/p/service/products
エンタテイメントの価値を最大化する情報メディア「GEM Standard」:https://www.gem-standard.com/

 

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