プロが見たこの映画

オンライン番組ディレクターが語る 「これぞ和・フー(風)『ジョン・ウィック:パラベラム』トンデモ日本で観る映画」

2023-08-09更新

伝説の殺し屋ジョン・ウィックが世界中の殺し屋から狙われる『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)。
キアヌ・リーブスが俳優として、復活の狼煙を上げた『ジョン・ウィック』シリーズは、早くも3作目に突入。本作は、裏社会の掟を破ったジョンの逃亡がメインに描かれる。

本シリーズの代名詞とも言える過剰なまでのアクションも大幅にアップデートされ「ガン・フー」「カー・フー」に続く「本・フー」「ナイ・フー」「ドッグ・フー」まで登場する。(ちなみに「○・フー」とは、○とカンフーを組み合わせた拳法のことである。)

 


ジョン・ウィック:パラベラム』

そんな見どころ満載の本作には、日本人なら反応するであろうきゃりーぱみゅぱみゅなシーンがある。
ニューヨークの片隅に佇む寿司屋で、裁定人がジョンの暗殺を依頼するシーン。暗殺者が寿司職人にして最強の忍者集団ということから劇中曲に、きゃりーぱみゅぱみゅの大ヒット曲「にんじゃりばんばん」が使われている。
『ジョン・ウィック』の世界観で「にんじゃりばんばん」・・・
寿司屋の内装含め、この日本風な景観には違和感を覚えるが、この感覚は今に始まったことではない。
俗に言う「トンデモ日本」である。

洋画特有のトンデモ日本描写は、これまでのハリウッド映画にたびたび登場する。

 

・『ブレードランナー』(1982)
・『ブラック・レイン』(1989)
・『キル・ビル』(2003)
・『デイ・アフター・トゥモロー』(2004)
・『インセプション』(2010)
・『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013)
・『GODZILLA ゴジラ』(2014)
・『デッドプール2』(2018)
・『パシフィック・リム:アップライジング』(2018)
・『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)
・『マトリックス レザレクションズ』(2021)
・『ブレット・トレイン』(2022)
etc.

 

上記は、割と最近の作品であるが、80年代以前の映画にもトンデモな日本は描かれている。筆者的には、2004年に製作されたディザスター映画『デイ・アフター・トゥモロー』のトンデモ加減がお気に入りである。
このような実際の光景とはかけ離れた「トンデモ日本」の背景には、日本ロケの問題が大きく関わっている。

日本での映画撮影は規制が多く、撮影時間やロケ費用の問題の他、行政が撮影に非協力的なケースもある。
高倉健氏や松田優作氏など豪華な日本人キャストで話題になった『ブラック・レイン』では、日本ロケでの多数のトラブルにより監督のリドリー・スコットが激怒
「二度と日本では映画を撮らない」
と言い放った有名なエピソードがある。
これにより当時のハリウッドでは「日本は規制が多く、映画ロケがまともにできない環境の国である」という悪評が広まった。


『ブラック・レイン』

2015年に製作された大泉洋氏主演のゾンビ映画『アイアムアヒーロー』では、大規模なカーアクションや特殊効果の必要から多くのシーンがお隣の韓国で撮影されている。
その理由は『ブラック・レイン』同様、日本国内で撮影できる環境や手法が限定されるからだ。
韓国では爆発物などの規制が日本とは大きく異なるため、ハリウッド映画に近い規模で撮影ができる。補足すると韓国は国策として映画を作っているため、日本との差は明らかである。
この差を埋めるにはまず、防衛費の増額や海外に税金をばら撒くなどをしているトンデモ政治を解決しなければならないかもしれない。
日本が再生する道は、日本で映画ロケをさせてあげるに尽きる。


『アイアムアヒーロー』(C)映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館

『ジョン・ウィック:チャプター2』の中盤以降のように話が大きくなってきたので、路線修正をすると「トンデモ日本」は決してマイナスな表現ではない。ある意味ブランドのような、ある種の楽しみ方の一つになりつつある。
今秋に公開を控える最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』では、真田広之氏演じるシマヅ率いる大阪コンチネンタルが登場する。寿司屋に続き大阪の街並みがどう描かれているのか。
「トンデモ日本」と親日家で知られるキアヌの戦いに備えよ<パラベラム>。

 

オンライン番組ディレクター 片山大輔

 


ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年9月22日公開)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、真田広之 ほか
(R), TM & (C)2023 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.


『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ハル・ベリー、ローレンス・フィッシュバーン、マーク・ダカスコス ほか
(R), TM & (C) 2019 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.


『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、リッカルド・スカマルチョ ほか
(C)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 

 

 

【このプロの記事を読む】
オンライン番組ディレクターが語る 「たったの1週間!?『ジョン・ウィック:チャプター2』時間経過で観る映画」
オンライン番組ディレクターが語る まさかの実話!?『ジョン・ウィック』インスパイアで観る映画
オンライン番組ディレクターが語る「全画面伏線アリ!伏線回収で観る映画」
オンライン番組ディレクターが語る「マキマがお前を嘲笑う…!? 映画オマージュで観る映画」
オンライン番組ディレクターが語る「アメコミ初心者必見! マーベルとDCコミックスの違い」

【ほかのプロの記事も読む】
韓国ドラマファンが嘆く「私は韓国ドラマを嫌いになりたい」
ファッションのプロが語る「「無関心な知恵より、情熱的な狂気の方がいい」引退宣言のグザヴィエ・ドランに告ぐ」

オンライン番組ディレクターが語る 「たったの1週間!?『ジョン・ウィック:チャプター2』時間経過で観る映画」
文学系女子が語る「知識ゼロでも露伴を楽しめた訳」/『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
ファッションのプロが語る「カップ焼きそばとカスタムロボ」/『佐々木、イン、マイマイン』

不明なエラーが発生しました

映画ファンってどんな人? ~ライフスタイルで映画ファンを7分析~
閉じる

ログイン

アカウントをお持ちでない方は新規登録

パスワードを忘れた方はこちら

閉じる