今回は8月ということで終戦記念日もあるので、少し「戦争」の話をさせてもらいたいのですが、また悲惨で暗い話かと思われるのもなんなので、ちょっと違った角度から…

どうも日本人にとっての戦争というのは、ある種の反省に基づいたセンチメンタリズムで語られることがほとんどだと思います。だって高校の授業で20世紀の世界大戦について学ぶ時間ってほとんどない。3学期のギリギリで複雑で政治的な匂いもある世界大戦なんて、先生もちょっと避けて通りたいのかもしれない。そうなると多くの日本人はテレビや映画のイメージ（つまりセンチメンタリズムです）で戦争を捉えてしまう。「悲惨」「暗い」はその通りですが、それだけで戦争を捉えることはできません。

例えば、インターネットが元は戦争の技術だったのは有名な話ですよね。世界に網の目のように基地局を置いて複数の経由で通信が確保できるシステムです。GPSもなんとなく戦争の匂いのする技術ですが、コンピュータ自体も元はミサイルの弾道計算用でした。携帯電話やデジカメ、光ファイバーなどもそう。なんと我々の仕事のほとんどは、軍事技術で出来上がっているのです。
それどころか、電子レンジや、サランラップ、ティッシュペーパー、トレンチコートや腕時計、缶詰まで、多くの日用品も戦争から生まれたもの。もっと言えば電力≒原子力発電は、広島・長崎に落とされた原子爆弾からうまれたものです。望むと望まざるとにかかわらず、我々の生活と戦争は密接に関わっているのです。

「戦争がいいと言いたいのか？」
いえ、そうではありません。日本人だけでも300万人、全世界では6800万人という戦争の犠牲者（※第二次世界大戦、諸説あり）の上に現代の生活は成り立っているのだという事を、この機会に少し考えてみてもいいのではと思って書いてみました。悲嘆にくれるセンチメンタリズムだけでは思考はそこで停止し、この事実【ファクト】には到達できないでしょう。
年に一回くらい、仕事で使うツールの向こう側に、戦場で戦った我々のお爺ちゃんや、ひいお爺ちゃんの姿を見てもいいじゃないですか。

82年前、日米戦争の発端となった、映画でも有名なハワイのパールハーバー（真珠湾）にある米国の戦争記念館の展示の中で一番目立つのは日本の戦闘機「ゼロ戦」と空母「赤城」です。
奇襲攻撃をされた憎き日本軍を蔑むならわかりますが、米軍はこれを展示のメインとしています。場内の解説を読むと「帝国主義の時代、アジア大陸での利権をめぐって2つの国が戦争に至った」と、どうもイコールな目線で不思議な感じがしますが、「日本の山本提督は海軍の戦いの主役を戦艦から、飛行機と空母へと切り替えた。パールハーバーは、その時代変化を象徴的する戦いだった」と締めくくります。

つまり、ここは米海軍にとっての大きな反省の博物館なんですね。反省と言ってもセンチメンタリズムではありません。多くの米軍の兵器の中でゼロ戦と赤城がメインで展示されているのは、「敵ながらアッパレ」も多少あるでしょうが、何より戦争を変えたエポックに対する冷徹な賛美そのものです。
実際、この地での反省を元に、米海軍はその後飛行機と空母を作りまくって日本軍を圧倒します。逆に日本の方が戦艦・大和なんかにこだわって弱体化していく。勝っても負けても事実【ファクト】を見ていない、というのが現代にいたる日米戦争に対する日本人の姿勢になっています。

感情や空気に流されることなく、事実を見ること。
戦争はあまりに残酷で考えるのも嫌なわけですが、それ故多くのことを含有している人類の歴史です。携帯電話やサランラップだけでなく、その事実【ファクト】から学べることがもっとあるような気がしますね。

P.S.
ちなみに、パールハーバーの戦争記念館では「日本の攻撃による米軍の戦死者は約2400名、民間人の死亡は68名、そのほとんどが友軍誤射によるもの」と書いています。日本海軍は米民間人を攻撃対象にしなかったと敵が証明してくれているのは驚きます。中国だったらこうはいかないでしょうね。

たんす屋（共感シアタースタッフ）

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