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【最新配信エンタ】『ゼイ・クローン・タイローン ~俺たちクローン?~』あなたの命はかけがえのない、世界でたったひとつのもの…ではない!?ゆるいようで意外に社会派な一本!

2023-07-26更新

世の中は真実と嘘にまみれている。嘘のような真実だっていくらでもある。だからこそ、陰謀論は力を得る。信じがたいことだけれど、本当だったら大変だ――そのような思いが一度芽生えると、与太話はもっともらしく蠱惑的な推理に変わる。本作『ゼイ・クローン・タイローン/俺たちクローン?』もまた、陰謀論的で不気味な事態の原因に迫っていくミステリーだ。ただし本当に陰謀はあるし、ミステリー、SF、クライム、など色んなジャンルがごちゃまぜになりつつどこか気の抜けたコメディになっている。


主人公は、幼い弟を亡くした過去のあるヤクの売人フォンテーン。彼は金をちょろまかしているポン引きのスリックから妥当な金額をぶんどる、もとい返してもらった直後、何と恨みを買っていた別の売人にスリックの目の前で射殺される(ここまでで映画は15分も経っていない)。しかし、フォンテーンはいつも通り自宅で目を覚ます。ロクでもない夢だったなと思っていると、スリックが亡霊を見るような目で彼に接してくる。昨日、本当にフォンテーンは殺されていたのだ! フォンテーンがスリックと、スリックお抱えの売春婦ヨーヨーを連れて調査に乗り出すと、どうやら町の地下には謎の研究所があり、そこでフォンテーンらのクローンが作られていることが判明し…。

本作は素人探偵ものの要素もあって、『アンダー・ザ・シルバーレイク』のようにどこに向かうのかよく分からない不思議なストーリーになっている。ところがキャストのほとんどは黒人、しかも主人公らはヤクの売人、ポン引き、売春婦と黒人のマイナスなステレオタイプを反映したキャラクターで、黒人をターゲットにしたブラックスプロイテーション映画のような作りになっている。変な映画にもかかわらずキャストは意外に豪華で、『スター・ウォーズ』シークエル3部作のジョン・ボイエガがフォンテーンを、最近MCU組になり『マーベルズ』にも出演するテヨナ・パリスがヨーヨーを、そしてご存じジェイミー・フォックスがスリックを演じている。特にフォックスのKY演技は絶品だ。敵の白人ニクソンを演じているのは、やはりご存じキーファー・サザーランド。

基本的にはオフビートなコメディで、映画ネタ、それこそ『スター・ウォーズ』に関するジョークなどが随所に散りばめられている。映画に精通している方ほど楽しめるだろう。しかし次第にゆるい雰囲気はなくなり、だんだんと黒人差別の問題に切り込む社会派(ソーシャル)スリラー的様相を呈してくる。恐らく、同ジャンルを掲げているジョーダン・ピール監督の作品(特に『ゲット・アウト』と『アス』)に影響を受けているのではないだろうか。最近ピール作品以外にもこのような作品が増えてきており、ホラー・スリラー好きにも新鮮な味わいを提供してくれている。どんな奇想天外なオチが待っているのか予想しながら、翻弄されると良いだろう。一旦ストーリーがまとまりかけたところで本作のタイトルを思い出すのを忘れずに。そうすれば、最後にもう一度驚けるはずだ。

 

日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー 屋我 平一朗

 


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【ストーリー】
ジョン・ボイエガ、テヨナ・パリス、アカデミー賞受賞のジェイミー・フォックスが出演する、B級ムード漂うSF犯罪コメディ。この町に広がっているのは陰謀論なんかじゃない、ホンモノの陰謀だ!【キャスト】
ジョン・ボイエガ、テヨナ・パリス、ジェイミー・フォックス、キーファー・サザーランド 他【スタッフ】
監督:ジュエル・テイラー
脚本:ジュエル・テイラー、トニー・レッテンマイヤー

 

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