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オンライン番組ディレクターが語る 「たったの1週間!?『ジョン・ウィック:チャプター2』時間経過で観る映画」
伝説の殺し屋ジョン・ウィックがスクリーンに帰ってきた『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)。
前作の公開から2年、シリーズ1作目の全世界興行収入やキルカウント(ジョン・ウィックが殺した人数)を優に超えてきた本作は、あの壮絶な復讐劇から、たったの5日後のストーリーが描かれる。
『ビルとテッド』『マトリックス』以来、キアヌにとっても久々のシリーズ映画である『~チャプター2』は、愛車を奪還するシーンから始まる。
ジョン・ウィックの姿をはっきり見せない演出とカーアクションを魅せる脚本。こうきたかと思わせる冒頭は、完全に前作を観ていない人用であるが、ジョン・ウィックがどういう人物なのかをシーンに合わせて説明しているため、続編ものの始まりとして非常に秀逸である。
ちなみに、ここでも彼の恐ろしさを教える例えに、たった1本の鉛筆で、3人の相手を仕留めたというエピソードが登場するので、チャプター1を鑑賞済みのファンはニヤッとするだろう。
ジョン・ウィックのフランチャイズ拡張の鍵は、その時間経過にある。
アメリカの某メディアのインタビューにチャド・スタエルスキ監督は、
「私が追いかけているジョン・ウィックの時間設定って、彼の人生におけるわずか1週間のうちに起こった出来事」( https://twitter.com/getFANDOM/status/1260659435346620416 )と答えている。
監督が言うように、1作目『ジョン・ウィック』から2作目『ジョン・ウィック:チャプター2』の時間経過は5日、3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』に至っては、前作の1時間後を描いているため、シリーズを通して、確かに1週間ほどしかない。
映画という作り物は、大体2~3年に1本くらいのペースで制作される。
私たちが暮らす実時間では『ジョン・ウィック』サーガの製作に、約5年の月日が流れているにもかかわらず、劇中のキアヌは、全く老いを感じさせないアクションを魅せてくれる。無論、作り物なので、様々な角度で観ると「大量殺戮にもほどがある件」「傷口の回復スピード問題」「拾った犬、懐くの早すぎる件」といったツッコミも否めないが、それらも含めて『ジョン・ウィック』の世界を楽しんでいただきたい。
近年、ハリウッドの脚本家ストライキやマーベル作品・スター・ウォーズシリーズの製作ペースの問題など、映画の製作現場におけるニュースをよく見かける。優良コンテンツを寝かせないという前向きな面もあるが、過度な製作は逆に作品の品質を下げ、物語の整合性の面でも矛盾を与えてしまう。
『ジョン・ウィック』シリーズにおいても、ドラマ化やスピンオフ映画など、世界観の拡張が決まっている。本シリーズのなかで「時間経過」は、ひとつのポイントであるが、当然、キアヌも歳を取っていく。彼も監督も「もはや体が動かなくなるまで続けるしかない」と、謎の決意表明をしているが無理だけはしないで、今後もエンターテインメントを届けていってほしい。
シリーズを通して、明確に時間経過を物語ることが魅力の『ジョン・ウィック』。
これほど一気観に相応しい作品もなかなか無いのではないだろうか。
今秋には、4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』も日本公開する。シリーズを観直す際はぜひ、「時間経過」というポイントを押さえて、鑑賞してみてはいかがだろうか。
オンライン番組ディレクター 片山大輔
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年9月22日公開)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、真田広之 ほか
『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ハル・ベリー、ローレンス・フィッシュバーン、マーク・ダカスコス ほか
『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、リッカルド・スカマルチョ ほか
『ジョン・ウィック』(2015)
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ミカエル・ニクビスト、アルフィー・アレン、エイドリアン・パリッキ ほか
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