業界人インタビュー

【FRONTIER】「語り部文化を伝承するー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~後編~

2023-05-22更新

全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン)
佐々木伸一会長スペシャルインタビュー【後編】

映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。

前回に引き続き、全興連、佐々木伸一会長のスペシャルインタビューをご紹介。

後編では、映画館で映画を観ることの価値、これからの宣伝に期待することについて聞いた。

★【FRONTIER】「生き残るためにはー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~前編~

映画館でのファーストウィンドウをどう考えるか

昨今、劇場公開と同時に配信が開始されるという状況も珍しくなくなってきた。佐々木会長はこの状況をどの業界にも通じることとして俯瞰する。

KIQ:配信はサブスクですごく安く観られるので、人によっては映画館の料金は高いという方もいると思います。料金に関しては、どうお考えですか?

佐々木:料金を安くすることは現実的には恐らく不可能です。これだけコストが上がると、単価を下げて維持できるとは思えないですね。ファーストウィンドウで長らくやらせてもらっていましたけど、逆説的にいえば、映画館におけるファーストウィンドウがコンテンツを作る人達にとって魅力的で有り続けることができなくなったら、その段階で全部同時配信とか、映画館を飛ばすということになっていかざるをえません。しかし現実では、アメリカなどの例を見ていても、むしろファーストウインドウの映画館を大事にしようという動きが顕著になってきました。

KIQ:なるほど。

佐々木:何のビジネスでもそうですけど、鮮度の高いところで1番単価を高く取るべきだと思っています。物の価値を高めるためにはそれが1番良いわけですから、そういうものだということを我々は言い続けなくてはいけないし、コンテンツを作る人に無視されないようなマーケットを作っていかなくちゃいけません。ファーストウィンドウで映画を公開できるのは、映画館にとって1番大きなアドバンテージなので。そのために何をするべきかは重要で、ウィンドウ以外に体験価値を高めることは必要になってきます

KIQ:一方で、『タイタニック』のように昔の映画のリバイバル上映も盛況ですね。
※『タイタニック ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』は2023年2月10日から2週間限定で公開。動員61万7632人、興収10億8970万8980円を記録した。

佐々木:そうですね。『タイタニック』はもうどのデバイスでも観られるのに、あれだけお客様が入るってことは共通体験をしたいお客様がいらっしゃるわけですよね。だから、そういうニーズはなくならないだろうし、そういうニーズが高まってくれば、映画館でのファーストウィンドウは必要だっていうことに繋がると思います。一見矛盾しているようだけれど、自分の中では矛盾していないんです。

これからの宣伝に期待すること

佐々木会長の話からは、新しい宣伝手法が必要になる一方で、これまでにあった宣伝にも大切な要素があることがわかる。

KIQ:最近、印象に残った宣伝はありますか?

佐々木:逆の意味で、宣伝に思うところがあります。公開日がなかなか決まらない、公開予定だった作品が突然配信のみになるというケースが出てきたなかで、公開の1年くらい前からインシアタープロモーションを仕込んで雰囲気を醸成していくという宣伝が少なくなったのは残念です。洋画にお客様が入らなくなった大きな原因は、実は長期視点でのマーケティングが決定的に断絶してしまった点にあると思っています。公開直前で大量に宣伝を投下して認知度を上げられても、意欲度まで上げるのは難しいですよね。

KIQ:確かにそうですね。では、これからの宣伝に期待することは何ですか?

佐々木:まさに先ほど言ったことに尽きます。工夫と知恵でやる余地はまだまだあります。地道なことって必要で、昔みたいにテレビスポットを何億円もかけて打って、認知度を高めて大量集客するっていうことではなく、多様化に対応していただければと思います。

KIQ:逆にこれまであったのに、今はなくなってしまったと思うことはありますか?

佐々木:映画を語る文化が減りました。昔は淀川長治さん、小森和子(通称:小森のおばちゃま)さん、おすぎさんとピーコさんなど、マスメディアで解説をしてくれる方がいて、映画ファンの皆さんが映画の文脈を理解するっていう文化がありました。今はその文化がなくなっているので、それをもう一度作っていこうと、映画系のYouTuberを育成するプロジェクトを今僕は個人的なテーマにして、手弁当でやっています。「トーキョーシネマ文化祭」といって、今10チャンネルぐらいのYouTubeチャンネルに参加してもらっています。何にしても、ジャンルの勃興のためには語り部が必要だと思っているので、彼等にも頑張って欲しいです。

★【FRONTIER】「生き残るためにはー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~前編~

 

 

【Information】

グランドシネマサンシャイン 池袋

 

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