業界人インタビュー

【FRONTIER】「生き残るためにはー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~前編~

2023-05-20更新

全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン)
佐々木伸一会長スペシャルインタビュー【前編】

映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。

今回は、グランドシネマサンシャイン 池袋をはじめ全国で17の劇場を運営する佐々木興業株式会社の会長であり、全国の映画館などでつくる全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)の会長を務める、佐々木伸一(ささきしんいち)氏に話を伺った。

前編では、佐々木会長が感じる映画興行の今と課題、そして映画館の新たな挑戦について聞いてみた。

★【FRONTIER】「語り部文化を伝承するー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~後編~

 

家庭では絶対にできない、体験価値

コロナ禍で動画配信サービスの利用が伸びてきたなかで、佐々木会長が考える映画館の価値とは―。

KIQ:コロナ禍で公開延期が続き、映画業界が一旦縮小するように思えましたが、『シン・ヱヴァンゲリヲン』『鬼滅の刃』『すずめの戸締まり』など、アニメが大ヒットしました。昨今大ヒットしている作品は若者をターゲットにした作品が多いように思っているのですが、どう感じていらっしゃいますか?

佐々木:ご指摘の通り、日本のアニメが映画業界を引っ張っているのは誰が見ても明らかです。その中で『トップガン マーヴェリック』のように、一部の話題作はあるとしても、現状まだ片肺飛行の感は否めません。コロナ前という言い方が的確かどうかわかりませんが、我々の常識から考えると「この洋画の興行収入はこれくらいいくだろう」という予想の半分かそれに満たない数値になっている状況は大きな問題だと思います。

KIQ:一方で、『RRR』のように口コミでヒットする作品もありますよね。

佐々木:『RRR』は口コミで広まった典型的な例で、観るとおもしろいし、何十回と観るのもわかる気がします。狙ってできることではないでしょうが、映画の可能性を感じる事例の1つだと思います。

KIQ:応援上映やODSなど、劇場だからこそできる、劇場を活かしたコンテンツも増えてきた印象があります。

佐々木:グランドシネマサンシャイン 池袋ができてから3年ほど経ちますが、この映画館を作る時、デバイスが多様化するなか、体験価値のあるエッセンスを作らないといけないという問題意識がありました。キュレーターとして生き残る道もあるとは思うんですけど、一定の規模のシネコンを維持するには、体験価値は欠かせません。だから、家庭では絶対にできないIMAXや4DX、劇場の雰囲気作りといったところが出発点となっています。これだけデバイスが多様化するなか、一から作り上げていったので一定のご評価をいただける映画館を作れたという実感はあります。

海外から学んで取り入れた新しい価値の創造

佐々木興業株式会社は、新しい設備の導入に積極的である。それはどのような考えに基づいているのだろうか。

KIQ:4DX SCREEN、IMAX®レーザーなど、いち早く取り入れられましたよね。

佐々木:世界各国に最新の映画館を見に行って、その時世界で最先端の1番良いものを入れようっていうのも一つのテーマです。

KIQ:作品頼みではなく、映画館の魅力で勝負しようということですか??

佐々木:作品頼みであることの本質は変わりません。ただ、その中でも選ばれるために何が必要かということです。家庭での視聴とも対抗しなければいけないし、体験価値をどう高めるかということだと思います。

KIQ:グランドシネマサンシャイン 池袋に初めてお伺いした時に、IMAXシアターの最前列と最後列が特別なシートになっていたのが衝撃的でした。

佐々木:昔の映画興行だと最前列はすごく観づらいので「死に席」といわれていました。語弊はありますが、どうせ「死に席」になるなら席数を減らしてでも多少なりとも観やすい席にしたほうが良いという発想です。最近、他の映画館でも同じような席を入れるところが増えてきているようです。

KIQ:最初に導入されたのはグランドシネマサンシャイン 池袋ですか?

佐々木:恐らくそうですね。

KIQ:新しい価値ですよね!

佐々木:そうですね。発想のきっかけは、韓国に行った時でした。最前列にスツールが置いてあったんです。我々の「1席でも多く」っていう考えでは出てこなかった発想で、これは見習うべきだと感じました。ゆえに、「死に席」をなくそうという発想に繋がってます。韓国はエンタメでは見習うべきことが多いような気がします。それも世界をいろいろ回ってみて気が付いたことです。

後編では、「映画館が生き残るには何が必要か」「これからの宣伝に何を期待しているか」というテーマをお届けする。

★【FRONTIER】「語り部文化を伝承するー。」全興連 /佐々木興業(シネマサンシャイン) 佐々木伸一会長スペシャルインタビュー ~後編~

 

 

【Information】

グランドシネマサンシャイン 池袋

 

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