プロが見たこの映画

宣伝担当が語る「地味なシーンほど胸に来る」

2023-05-09更新

一年前の4月21日、私は京都の真ん中にいました。

京都の真ん中とは、映画『ヴィレッジ』のメインロケ地となった美山(https://miyamanavi.com/)のことで、ここは京都府のほぼ中心に位置するらしいです。

藤井監督が掲げた本作のビジュアルテーマは「霧」ですが、
まさに、このロケ地にはうっすらとした霧がたちこめていて『ヴィレッジ』の世界観そのものでした。
ちなみに、京都駅からは車で1時間半ほどかかります。後半はひたすら山道です。夜は夜霧で前が見えません。道中、鹿に遭遇します。(ちょっと寄り道して世界遺産の仁和寺に行ったのは秘密です。通り道にあったのでたまたまです。ちょっとだけです。本当に。)

冒頭の“一年前”ですが、2022年4月21日は本作のクランクインでした。
クランクインのちょうど一年後に公開日を迎えるとは、ちょっと運命的だなと思ったりしながら、
GWの大作ひしめくなか、絶賛上映中です。兎にも角にも観ていただきたい、ということで、まずは上映劇場をチェックしていただいて……(https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=village

本作はプロジェクト自体がドラマなんじゃないか、ということで「700日のヴィレッジ」というスペシャル映像コンテンツもございますので、コチラももれなくチェックしていただいて……(https://village-movie.jp/movie/

ストーリーは……

夜霧が幻想的な、とある日本の集落・霞門村(かもんむら)。
神秘的な「薪能」の儀式が行われている近くの山には、巨大なゴミの最終処分場がそびえ立つ。
幼い頃より霞門村に住む片山優(横浜流星)は、美しい村にとって異彩を放つこの施設で働いているが、
母親が抱えた借金の支払いに追われ希望のない日々を送っている。
かつて父親がこの村で起こした事件の汚名を背負い、その罪を肩代わりするようにして生きてきた優には、人生の選択肢などなかった。
そんなある日、幼馴染の美咲(黒木華)が東京から戻ったことをきっかけに物語は大きく動き出す――。

ということで、ここからは取り留めもなく書き連ねていきますので予めご了承ください。

チラシなどに“現代日本の縮図”というコピーも記載されていますが、
登場人物と同じ境遇でなくとも、どこか共感できる部分があるのが本作の特徴の一つです。
例えば、霞門村(かもんむら)(ルビ:かもんむら)村長(古田新太)の弟で村を出て刑事になった光吉(中村獅童)は、ゴミ処理施設での不法投棄や、優が隠してきた秘密(ネタバレ)が明らかになったとき、「やっぱり…」という反応を見せます。
村の外にいる人間だからこそ感じていた違和感、それはもっと前から感じていたのではないか。であれば、もっと早く指摘していたら、優(横浜流星)はあのようなラストを迎えずに済んだじゃないか! と突っ込みたくなる一方で、「実は前から…」みたいな、“思っていても黙っていること”って現実でもあったりするよなと思うわけです。
これは観る人の環境や年齢で感じることが変わると思いますが、だからこそ観終わった時にいろんな意見が出るし、それを語ってほしい作品です。

さぁここで、私のヴィレッジ推しシーンを。

本作は、優のラストの表情、優と透(一ノ瀬ワタル)のアクション、能のシーン、などが取り上げられることが多いのですが、私の推しは、“地味”です。
それは、龍太(奥平大兼)が最初に不法投棄の現場に直面した際、戸惑い身動きが取れずにいる龍太へ向ける優の表情です。
すでにその現場を何度も経験している優が、地面をスコップで突きながら、「(やれよ)」という表情で龍太を見るのですが、その表情がなんとも言えず絶妙なのです。
龍太へ“指示している”表情ではあるのですが、それ以上に優の(人生に対しての)“諦めの気持ち”が表れているように見えました。
これは、公開後にあらためて映画館で観たときに、(地味なシーンなのに)なぜかドキッとして脳みそにこびりついた表情です。
藤井監督の演出では1発OKというのはあまりなく、何回か同じシーンを繰り返し撮影することが多いですが、この表情もテイクを重ねたことで生まれてきたものなのかなと思ったり…
大きなスクリーンで観たからこそ、感じ得たことかもしれません。
(ちなみに、もう一つの密かな推しは優の母親を演じた西田尚美さんのダメ親っぷりです)

最後に、本作は能を物語に取り入れるという部分でもチャレンジングな作品だったわけですが、
能の稽古はもちろん、能を舞うシーン関しては、舞台上の音(足音や演奏)が実際に能を見ている環境と同じような聞こえ方になるよう最後の仕上げの細かい部分まで監修が入っています。
こだわりなんてどの作品にもあるし、尽きないものですが、想いを語ると重くなり過ぎるのでほどほどにしておきます。
賑わう映画館で楽しい作品の間に、地味に尖った作品を挟んで観るのもありだと思います。

 

白米と睡眠が友達 リエラ虫

 

 

『ヴィレッジ』(2023)
全国公開中
監督:藤井道人
出演:横浜流星 黒木華 一ノ瀬ワタル 奥平大兼 作間龍斗/ 淵上泰史 戸田昌宏 矢島健一/ 杉本哲太 西田尚美 木野花/ 中村獅童 古田新太
©️2023「ヴィレッジ」製作委員会

 

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