業界人インタビュー

【ENDROLL】「物語は、現場にある。」映像作家 小松原茂幸さん ~前編~NEW

2025-09-05更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

今回は映像作家の小松原茂幸さんにインタビュー!

前編では、小松原さんのキャリアの始まりからドキュメンタリーに至るまでを詳しく聞いてみた。

CM、MV、アニメ ―映像制作の現場を歩んだ日々

KIQ: 普段はどういうお仕事をされているんですか?

小松原: 現在はドキュメンタリーを専門に制作・監督をしています。

KIQ:この業界に入ったのは、どんな経緯だったのでしょう。

小松原: 大阪芸術大学に通っていたのですが、就職活動もせず、気がついたら卒業していて(笑)。「やばいな」と思って映像の仕事を求めて東京に出ました。当時はアルバイト情報誌みたいなもので映像制作の仕事を探して、制作会社に入りました。

KIQ:制作会社が最初だったんですね。

小松原: 初めに勤めた会社は小さなCM制作会社だったんですけど、そこからもう少し大きいところで、おしゃれなものを扱いたいという思いが強くなってきたときに、「MV(ミュージック・ビデオ)を作りたい」ってなって。音楽系のMV制作会社に移りました。

KIQ:なるほど。

小松原: そして、そこでの仕事に少し飽きてきたころ、『マインド・ゲーム』というアニメ映画を観たんですけど、すごい衝撃を受けたんです。話も面白いし、映像がカッコよくて。アニメとかそんなに詳しくなかったんですけど、この映画を作った会社(STUDIO 4℃)に行こう!と思って、次はそこに入りました。

KIQ:すごい経歴ですね! STUDIO 4℃ではどんなお仕事をされていたんですか?

小松原: 制作進行として原画の回収をやっていました。当時はまだ手書きの紙の原画が中心だったので。そこで『ジーニアスパーティー』という7人の監督による短編オムニバス映画を作っていたときには、宣伝の手伝いみたいなこともやりました。

KIQ:本当にいろんなことされていますね。

小松原: 映画の公開に合わせて、クラブを貸し切ってイベントを開いたこともありましたね。ケン・イシイさん(テクノ音楽の第一人者)をゲストDJに迎えたんですけど、彼はSTUDIO 4℃の森本晃司さんと1995年に伝説的なミュージックビデオ「EXTRA」を作ったことでも知られているんです。(https://youtu.be/t6maVVFs0As?si=xENSjnjmSrbqebnX)そのつながりから再び共演してもらいました。パソコンメーカーにも協賛してもらって、会場にはモニターをたくさん並べて、VJ(映像演出)で4℃の映像をガンガン流して。東京でやったんですけど、大阪から「こっちでもやってほしい!」という声が届くほど大盛況で、今振り返っても最高のイベントでしたね。

KIQ:うわー、今でもやってほしいくらいかっこいいですね!

小松原: そのあと、4℃のアニメーターの方が独立するときに声をかけてもらって、ついていく形で独立しました。そこで手がけたのが、アニメ「冬のソナタ」です。韓国での制作だったので、何度も現地に行って打ち合わせをしましたね。向こうの監督に「ぺ・ヨンジュンより男前ですね」なんて言われたりして(笑)。
その後、解散してフリーになり、ディレクターなどをやるようになりました。

そしてドキュメンタリーへ―

KIQ: 今はドキュメンタリー作品を専門に撮られているとのことですが、もともとドキュメンタリーがお好きだったんですか?

小松原: そうですね。もともとドキュメンタリー、ひいては映画が好きでした。実際やってみたら、ドキュメンタリーの作り方も劇映画に似ているところが結構あるんです。ドキュメンタリーは撮っているときは何が起こるかわからないけど、撮り終わった後に膨大な素材を編集して構成していくので。最初にシナリオを作って構成していく劇映画と違って、ドキュメンタリーは後にストーリーを考えなければいけないという違いはありますが。

KIQ: ドキュメンタリーでは、シナリオや構成を決めてから撮ることはないのでしょうか?

小松原: テレビのドキュメンタリー番組ではそういうこともありましたね。個人的にはあんまりドキュメンタリーらしくないなと思っていましたけど(笑)。

KIQ: 被写体が自分自身をカメラの前で“演じて”しまうこともありそうです。

小松原: そうですね・・・なので僕は基本的に“インタビュー”は好きじゃないですね。「この時どう思われました?」みたいに聞くと、やはり相手は構えてしまうので。常に密着して、行動を共にしてカメラを回していると自ずとポロッと本音が出てきたりするんです。

KIQ: なるほど。作品のタイプではどういうものが多いんですか?

小松原: 社会派作品が多いですね。全然そういうタイプじゃないと思われがちですけど(笑)。最近はTBSさんで毎年やっている「TBSドキュメンタリー映画祭」にも携わらせてもらっていて、TBS社員の方が監督される作品を一緒に作っています。

KIQ: 社会派をやるようになったのは、どういうきっかけだったんですか?

小松原: 一番大きかったのは、2019年に森達也さんが、新作ドキュメンタリー(『i-新聞記者ドキュメント-』/東京新聞社会部記者・望月衣塑子を追った社会派ドキュメンタリー)を撮るというので人を探していて、そこで声をかけていただいたことでしたね。

KIQ: そうだったんですね。

小松原: 最近では、TBSで中東担当の記者をされていた須賀川拓さんが監督した『戦場記者』(2022)や、今年の3月に公開された『彼女が選んだ安楽死~たった独りで生きた誇りとともに~』などに関わらせてもらっています。

<後編に続く>

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