業界人インタビュー

【ENDROLL】「人と向き合う宣伝力。」宣伝プロデューサー井野元直子さん ~後編~NEW

2025-10-29更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから生まれたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
映画・エンタメ業界の最前線で活躍する方々に話を聞き、そのキャリアや想いに迫ります。
現在この業界で働いている方はもちろん、これから業界を目指す人にとっても、刺激となるリアルな声を届けていきます。

今回は、宣伝プロデューサー集団、有限会社キコリで宣伝プロデューサーとして活躍する井野元直子さんのインタビュー後編。

後編では、仕事をする上で大切にしていることや息抜きの仕方など、さらにいろいろなお話を聞きました。

未経験から宣プロへ。小さな会社で学んだ大きな経験

KIQ
宣伝の中にも、パブリシティやタイアップ、広告など、役割がいろいろあると思うんですけど、どういう経緯で宣伝プロデューサー(以下、宣プロ)のお仕事に行き着いたんでしょう?

井野元
最初にアルシネテランに入った時は、パブリシティから始めました。すごく楽しかったし、経験は本当にたくさん積ませてもらいました。アルシネテランは小さな会社だったんですけど、わりと入ってすぐの人にも買い付けに行かせてくれたり、未経験でも宣プロをやらせてもらえたんです。もちろん先輩も付いて。最初は本当に訳がわからなかったけど、先輩に1個ずつ聞きながら、進めていくのがすごくおもしろくて。「こういうことをやってたんだ」と、やっと宣伝の全体が見えてきた感じがしました。ビジュアルひとつにしても、公開までこんなにたくさんの人と向き合って、こういう会話があって、やっとここまで作られるんだというのがあって、その過程がおもしろかったんです。

KIQ
その後、同業種で何度か転職されたんですよね。

井野元
アルシネテランで担当したのは洋画が多かったので、自分の幅を広げるためにも邦画もできないとなと思うところがあって。じゃあ違うジャンルができるようなところに次は行ってみようかなと思って、転職をしました。職種としては、ずっと宣プロのままですね。

KIQ
アルシネテランの次がKADOKAWA、その後にサーティースリーですよね。どうでしたか、やり方など全然違いましたか?

井野元
宣プロってやることのベースは一緒かなと思うんですけど、作品によって、関わる人が全然違ったり、文章の書き方とかノリみたいなものも違うので、その違いは各配給会社でやっぱり個性があるなって思いました。KADOKAWAは出版もあるので原作含めたメディアミックス作品なども多いですが、私が担当していたのはわりとアート系の作品でした。なので、作品との向き合い方はあまり変わらなかったですね。

KIQ
転職のきっかけは、タイミングですか?

井野元
そうですね。私は次を決めずに辞めちゃうんです。辞めてからでないとゆっくり考えられなくて。でも、会社を辞めたあとに声をかけてくださる方がいて。毎回すごく恵まれているなと思っています。

KIQ
いいですね。

井野元
もう疲れた!と思って辞めても、他の作品の宣伝を見ると、「こんな感じでやってるんだ」と気になっちゃう(笑)。そこで、やっぱりもう一回やりたいって思っちゃうんですね。

KIQ
きっと宣プロが天職なんですね。

ご褒美は「星のや」全制覇!

KIQ
これまでのお仕事の中で、充実したなと思えるエピソードはありますか?

井野元
即レスを大事にしなきゃと思い込んでいた時期に、すごく作家性の強い監督の作品を担当したんです。その監督はそれまでの私のやり方と全然時の流れが違って。予告を1つ作るにも「これは何カット使っているんだ?」と電話がかかってきて、「カット数とか、すみません。考えていませんでした」と言って、怒られるという。メールがくるとビビっているので急いで返信しなきゃみたいになっていた時に「君は返事は早いけど、僕は早い返信は望んでいないから、ちゃんとゆっくり考えて戻しなさい」と丁寧ですが厳しい電話がかかってきて・・・。泣きながら監督とやりとりしたことも。すごく勉強になりましたね。

KIQ
印象的な体験ですね。

井野元
そこでちゃんと向き合ったことで、度胸がついたなと感じますね。

KIQ
はじめにもおっしゃっていましたが、宣プロって仕事も多岐に渡るし、関わる人も多いし、大変なお仕事ですよね。でも、井野元さんはイライラしたりしなさそうです。

井野元
いや、なってますよ!でも世の中で働いている皆さんもそうだと思いますが、一緒に仕事をしている人とか取引先とかに感じ悪い態度をされるとすごく嫌になるじゃないですか。だから、忙しくてどんなにイライラしていても、話しかけられたらちゃんと返そうと心がけています。それは、自分がやられて嫌なこと、大人げないなって若い頃に思っていた経験から気をつけるようになりました。

KIQ
なるほど。ちなみに井野元さんは、どうやって息抜きしているんですか?

井野元
1人で楽しく過ごすのが昔からすごく得意なんです。超インドアで過ごすか、出かけるってなったらやりたかったことを詰めるから両極端なんですけど。今は1作品終わるととりあえず温泉に行って何もしない。「星のや」が好きなんですけど、星のやの温泉を全制覇しようと思ってます。

KIQ
素敵なご褒美です!最後に、映画業界がもっとこうなったらいいなって思うことがあれば教えてください。

井野元
難しいですね…。映画業界って昔のまま変わらない部分も多いじゃないですか。でもそれがいいとも思っていて。たとえば宣伝でも、ライターさんや媒体と話して売り込んだり、リリースを送って、パブの露出とかもちゃんとしっかり確認していくつ出ましたみたいに報告をする。今は完全にシステム化されてるところもあると思うんですけど。そうじゃなくて1個ずつ調べて、露出を数えて、報告を時間かけてやったりしていましたよね。その結果見えてくることもあるから、システム化されていない人が手をかけてできるところが良いところでもあるかなと。

KIQ
はい。

井野元
上手く時代の波に乗っていかないとなってところはあるけど、機械やAIではできないことがまだたくさんあるし大切だと思います。でも、昔より宣伝もやることがすごく増えたから、もうちょっとバランスが必要な部分はありそうですね。

KIQ
そうですね。

井野元
あと個人的には、洋画とかアート系の作品にもまた注目が戻ってきて欲しいなと思います!

★インタビュー前編:「宣伝に“再挑戦”した理由。」

【Information】

『愚か者の身分』絶賛公開中!

【ストーリー】
SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を日々行うタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)。彼らは劣悪な環境で育ち、気が付けば闇バイトを行う組織の手先になっていた。闇ビジネスに手を染めているとはいえ、時にはバカ騒ぎもする二人は、ごく普通の若者であり、いつも一緒だった。タクヤは、闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷(綾野剛)の手を借り、マモルと共にこの世界から抜け出そうとするが──。

【キャスト】
北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、綾野 剛

【スタッフ】
プロデューサー:森井輝
監督:永田琴
脚本:向井康介
原作:西尾 潤「愚か者の身分」(徳間文庫)
製作:映画「愚か者の身分」製作委員会
製作幹事:THE SEVEN
配給:THE SEVEN、ショウゲート
(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
公式サイト:orokamono-movie.jp
オフィシャルX:@orokamono_1024 #映画愚か者の身分

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