業界人インタビュー

【ENDROLL】「宣伝に“再挑戦”した理由。」宣伝プロデューサー井野元直子さん ~前編~NEW

2025-10-24更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから生まれたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
映画・エンタメ業界の最前線で活躍する方々に話を聞き、そのキャリアや想いに迫ります。
現在この業界で働いている方はもちろん、これから業界を目指す人にとっても、刺激となるリアルな声を届けていきます。

今回は、宣伝プロデューサー集団、有限会社キコリで宣伝プロデューサーとして活躍する井野元直子さんにインタビュー。

前編では、井野元さんが映画宣伝の仕事に就いた経緯を中心にうかがいました。

フランス映画好き。服より映画の世界へ。

KIQ
今はどんなお仕事をされているか教えていただけますか?

井野元
今は10月24日から劇場公開の『愚か者の身分』の宣伝をしています。今回は宣伝プロデューサー(以下、宣プロ)2名で業務を分担しているんですけど、私は主に出演者等の事務所周りの窓口、パブリシティ、イベント周りなどを担当しています。宣伝の業務は多岐に渡るし、やろうと思えばどこまでもやれる一方で、手が回らないみたいなこともあるし、ずっとバタバタやっていますね。

KIQ
新卒で映画業界に?

井野元
いえ、ちゃんと始めたのは30歳のときでした。元々映画が好きで、特にフランス映画が好きなんですけど、ファッションとか音楽も素敵ですよね。だから、ファッションと映画、どっちの分野にも行きたいなと思っていました。でも映画業界に入るにはどうしたらいいのかわからなくて、高校を卒業して、アパレル業界に入り販売員をやっていたんです。

KIQ
そうだったんですね!

井野元
はい。そのころは劇場をはしごして映画を観たりしていて。そのうちにやっぱり映画のほうが好きかもと思ったんです。販売員としても限界を感じたところがあって。映画の仕事で何ができるんだろうと思った時に、当時「ぴあ」が出していた映画業界の仕事を細分化して紹介していた本を読んだんです。その中で未経験でもガッツがあればできることはなんだろうと思って、宣伝ならいけるんじゃないかと(笑)。

KIQ
確かにガッツは大事ですね(笑)。

井野元
といっても、どこを選べばいいかわからないし、大手はやっぱり大卒が条件だったり、業界での経験が求められたり、ハードルが高くて。そこで、その頃はDVD、ビデオとかがまだ全盛期だったので、パッケージの宣伝会社に入ったんです。そこに結局3年弱いました。
でも、劇場公開が終わった後のパッケージの宣伝なので、すでにできあがっているものを利用するという流れにちょっと物足りなさを感じて…。もっと手前のところからいろいろとやってみたいなと思って、その後いくつか転職し、映画会社には30歳で就職しました。

OL生活でリセット。そして宣伝に再挑戦。

井野元
パッケージの宣伝会社の後は、一般企業のOLをやりましたね。

KIQ
そうなんですね!

井野元
宣伝に一瞬疲れた時期があって、20代後半はもういわゆるOLとして生きようと。朝スタバを買って、またお昼に同僚の子とスタバを買って、また夕方に役員に「何か買ってきます?」ってスタバに行って、夜は飲みに行くみたいな(笑)。

KIQ
いいですね~。

井野元
満喫しましたね。でも、やっぱり映画会社に入ってみたいという思いはあって、ずっと不完全燃焼というか。ちゃんと地に足をつけて仕事をするとしたら何がいいかなと思った時に、映画の宣伝をやってみたいと思って、映画配給・宣伝会社のアルシネテランに入ったんです。

KIQ
一回外の世界を見て、改めて覚悟ができたんでしょうか。

井野元
宣伝の仕事も、若い頃は覚悟ができなくて、「もう無理!」みたいになったけど、30歳くらいになると肝も据わってきましたね(笑)。

KIQ
自身のOL体験は、宣伝にも役立ちそうです。

井野元
はい。いわゆる“普通”の感覚みたいなものはわりとあるかもしれません。

KIQ
アルシネテランを選んだ理由は?

井野元
いくつか求人を見たんですが、未経験でもOKというのがまず少なかった。アルシネテランは、残念ながら今はもうなくなっちゃったんですけど、『髪結いの亭主』を配給して日本でパトリス・ルコント作品を初めて上映したり、ヨーロッパ系のすごく素敵なミニシアターの作品をたくさん扱っていたんです。中学生頃から、母親が岩波ホールとか、シネスイッチとかによく連れていってくれたので、私はそういう作品が好きで。

KIQ
その頃に観た映画って覚えてますか?

井野元
『かぼちゃ大王』というイタリア映画で、中学生の時に初めて岩波ホールに行きました。母親が内容をまだ深くは理解できなくても子供に見せたい、と思って連れて行ってくれたそうです。アルシネテランに入社して、その『かぼちゃ大王』がアルシネテラン配給だったと知りました。

KIQ
へー!

井野元
アート系のおしゃれな作品だったり、感度が高くて、作家性の濃い作品があったりして、ちょうどそういう映画がすごくブームというかまだ1番熱い時期だったので、自分にぴったりかもというのがありましたね。

後編(10/29UP予定)に続く・・・

【Information】

『愚か者の身分』絶賛公開中!

【ストーリー】
SNSで女性を装い、言葉巧みに身寄りのない男性たち相手に個人情報を引き出し、戸籍売買を日々行うタクヤ(北村匠海)とマモル(林裕太)。彼らは劣悪な環境で育ち、気が付けば闇バイトを行う組織の手先になっていた。闇ビジネスに手を染めているとはいえ、時にはバカ騒ぎもする二人は、ごく普通の若者であり、いつも一緒だった。タクヤは、闇ビジネスの世界に入るきっかけとなった兄貴的存在の梶谷(綾野剛)の手を借り、マモルと共にこの世界から抜け出そうとするが──。

【キャスト】
北村匠海、林裕太、山下美月、矢本悠馬、木南晴夏、綾野 剛

【スタッフ】
プロデューサー:森井輝
監督:永田琴
脚本:向井康介
原作:西尾 潤「愚か者の身分」(徳間文庫)
製作:映画「愚か者の身分」製作委員会
製作幹事:THE SEVEN
配給:THE SEVEN、ショウゲート
(C)2025映画「愚か者の身分」製作委員会
公式サイト:orokamono-movie.jp
オフィシャルX:@orokamono_1024 #映画愚か者の身分

【Back number】

不明なエラーが発生しました

映画ファンってどんな人? ~ライフスタイルで映画ファンを7分析~
閉じる

ログイン

アカウントをお持ちでない方は新規登録

パスワードを忘れた方はこちら

閉じる