いよいよヴェネツィア国際映画祭が始まる。世界三大映画祭の一つであり、近年はアカデミー賞の前哨戦としても、大きな注目を集めている。今年もコンペ部門にはパオロ・ソレンティーノやノア・バームバック、ジム・ジャームッシュ、パク・チャヌクら、世界を代表する鬼才たちの作品が上映される。

ここで毎回お馴染み（？）、私の独断と偏見で今回のヴェネツィア国際映画祭で注目の作品を4本ほどご紹介。毎年のことながら、非常に気になる作品がたくさんあるので、その中でも特に気になる作品をご紹介したい。

第82回ヴェネツィア国際映画祭
公式サイト：https://www.labiennale.org/en/cinema/2025

『THE WIZARD OF THE KREMLIN』
監督：オリヴィエ・アサイヤス
出演：ポール・ダノ、ジュード・ロウ

1990年代初頭、ソ連崩壊後のロシアを舞台に、若き日のウラジミール・プーチンの助言役となったヴァディム・バラノフの視点から描く政治サスペンス。今、色々な意味で話題となっている若き日のプーチンを演じるのはジュード・ロウ。ジュード・ロウ自身は、若き日のプーチンを並々ならぬ覚悟で演じた、とのこと。ソ連崩壊後のロシア政権誕生期の暗部を鋭く描く作品になっているとのこと。国際情勢を揺るがす中心にいるロシアについての作品ということもあって、かなり気になる作品だ。

『A House Of Dynamite』 
監督：キャスリン・ビグロー
出演：イドリス・エルバ、レベッカ・ファーガソン

『デトロイト』以来、8年ぶりのキャスリン・ビグローの新作。『ハート・ロッカー』以降、『ゼロ・ダーク・サーティ』、『デトロイト』と骨太な映画が続いたが本作もかなり骨太な作品になりそう。アメリカに向けて出所不明の核ミサイルが発射され、ホワイトハウスがどう対応するかを描いている。昨今の情勢を考えると、これが起こらないとも限らない、かなりリアリティのある作品になっていそうだ。あら、そういえば元旦那の新作も今年公開ですね・・・

『BUGONIA』
監督：ヨルゴス・ランティモス
出演：ジェシー・プレモンス、エマ・ストーン

韓国製SFコメディのリメイク作品で、監督がヨルゴス・ランティモス。陰謀論を信じる2人の若者が、巨大製薬企業のCEOを「地球を破壊しようとしているエイリアン」と信じて、CEOを誘拐するというコメディ作品だ。出演はジェシー・プレモンスとエマ・ストーン。監督はよほどエマ・ストーンが気に入ったのか、これが4度目のタッグ。特に近年は『哀れなるものたち』など、タッグを組む作品が続いている。相変わらず個性的で癖が強そうな作品になって良そうな感じだ。

『ORPHAN』
監督：ネメシュ・ラースロー
出演：ボイトルヤン・バラバス、グレゴリー・ガデボワ

『サウルの息子』、『サンセット』と監督作がことごとく高評価を獲得するハンガリーの鬼才ネメシュ・ラースローの新作。『サンセット』以来、実に7年ぶりとなる本作はハンガリー動乱後のブダペストを舞台に、12歳の少年の母と父への葛藤を描いた作品。ネメシュ・ラースローの作品は2作品とも鑑賞しているが、非常に臨場感のある映像と、感情を揺さぶる物語が印象的。自身の家族史から発想を得ているとのことで、監督にとっても思い入れのある作品となっているだろう。

コンペ部門では他にもギレルモ・デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』が上映され、コンペ以外でも細田守の新作『果てしなきスカーレット』や、他にもルカ・グァダニーノ、ジュリアン・シュナーベルの新作が上映される。

もちろん全ての作品が気になるところではあるし、一体どの作品が賞を受賞するのかというのももちろん気になるところ。そして願わくば、ここで評価された作品が一本でも多く、10月後半から始まる東京国際映画祭で上映されることを願わずにはいられない・・・

ヒカセン兼業ライター　大西D

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