調査レポート
【映画祭・映画賞まとめ】Vol.1 ~各国のアカデミー賞・世界三大映画祭~
映画業界では、年間を通して世界中で多くの映画祭が開催され、また、多くの映画賞も発表されます。
KIQ REPORTの調査でも、映画賞・映画祭の受賞結果を参考にする人は57%、映画鑑賞頻度の高いヘビー層(月に1本以上劇場で映画鑑賞する人)では73%の人が参考にしていると回答しました。やはり映画業界人として避けて通ることはできない映画祭・映画賞の数々。
でも、世界各国にも日本国内にも多くの映画祭・映画賞があり、どれが何かわからなくなってしまうことはありませんか?
そこでKIQ REPORTでは、映画祭や映画賞についてまとめました。
第1回目は、各国のアカデミー賞と世界三大映画祭を紹介します!
★【映画祭・映画賞まとめ】Vol.2 ~日本の映画祭・映画賞~
★【映画祭・映画賞まとめ】Vol.3 ~ファンタ系・インディペンデント映画祭~
★【映画祭・映画賞まとめ】Vol.4 ~アカデミー賞徹底解説~
世界各国の“アカデミー賞”
毎年ノミネート発表から大きな注目を集めるのがアメリカのアカデミー賞。KIQ REPORT調査でも映画ファンの認知度は72%、鑑賞意欲に影響すると回答する人が50%以上を占める、最も影響力のある映画賞のひとつです。
しかしアカデミー賞はあくまでもアメリカ映画への賞。その規模や歴史、また近年は多様性を求める声ゆえにアメリカ映画以外の作品も多く候補入りすることが増えましたが、基本的にはアメリカ映画の賞です。
なので、2020年の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』など、そういった一国の映画賞で、その国以外の映画が認められるということは、やはりとても素晴らしいことです。
さて、アカデミー賞はアメリカの映画賞ですが、当然世界各国の映画業界それぞれに、それぞれの国の映画を表彰する映画賞があります。よく「〇〇のアカデミー賞」と紹介されたりしますが、その一例を紹介ましょう。
日本→日本アカデミー賞
韓国→大鐘賞
イギリス→英国アカデミー賞
フランス→セザール賞
スペイン→ゴヤ賞
ドイツ→ドイツ映画賞
イタリア→ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞
フランスといえばカンヌ、イタリアといえばヴェネチア、という印象が強いですが、こういったお国の映画賞も別途存在しています。
世界の三大映画祭と日本の関わり
映画祭は映画賞とは異なります。映画祭は映画の上映をメインとし、映画祭によっては賞の授与や講演会などのイベントが行われることも。特に国際映画製作者連盟が公認する国際映画祭はそれぞれ歴史や規模も大きく、世界各国の著名人(俳優・監督)が審査員を務めることも多いです。
その中でも特に「世界三大映画祭」と呼ばれるカンヌ、ヴェネツィア、ベルリンはニュースでもよく聞き、注目度も高い映画祭です。映画宣伝でも大きな訴求要素とされることが多いですね。
この3つの映画祭について、日本映画の主な受賞作品も見ながら紹介します。
カンヌ国際映画祭
1946年から、毎年5月頃開催。三大映画祭の中でも特に注目度の高い映画祭。大規模な映画のマーケットも開かれることもあり、産業的にも重要。最高賞はグランプリではなく「パルム・ドール」で、グランプリは「グランプリ」で賞があります。
※主な日本の受賞作
パルム・ドール:『地獄門』(衣笠貞之助監督)、『影武者』(黒澤明監督)、『万引き家族』(是枝裕和監督)
グランプリ:『死の棘』(小栗康平監督)、『殯の森』(河瀬直美監督)
監督賞:大島渚『愛の亡霊』
男優賞:柳楽優弥『誰も知らない』
ヴェネツィア国際映画祭
1932年から、毎年8月〜9月頃開催。三大映画祭の中では最も歴史の長い映画祭。最高賞は「金獅子賞」。近年は『ノマドランド』、『ジョーカー』、『シェイプ・オブ・ウォーター』など、アカデミー賞に絡む作品が受賞することが多く、アカデミー賞の前哨戦としても注目されています。
※主な日本の受賞作
金獅子賞:『羅生門』(黒澤明監督)、『HANA-BI』(北野武監督)
監督賞:溝口健二『西鶴一代女』、北野武『座頭市』、黒沢清『スパイの妻』
男優賞:三船敏郎『用心棒』『赤ひげ』
ベルリン国際映画祭
1951年から、毎年2月頃開催。三大映画祭の中では最も後発。開催時期がアカデミー賞と近いこともあり、映画祭の中でもあまり目立たない!? また近年受賞作品がアカデミー賞に絡むカンヌ、ヴェネツィアとは異なり、アート系作品が毎年受賞する独自の色があります。最高賞は「金熊賞」。
※主な日本の受賞作
金熊賞:『武士道残酷物語』(今井正監督)、『千と千尋の神隠し』(宮崎駿)
監督賞:今井正『純愛物語』、黒澤明『隠し砦の三悪人』
女優賞:左幸子『にっぽん昆虫記』『彼女と彼』、田中絹代『サンダカン八番娼館 望郷』
寺島しのぶ『キャタピラー』、黒木華『小さいおうち』
※現在は男優賞、女優賞は廃止され主演俳優賞、助演俳優賞になっています
世界三大映画祭の記録とトリビア
★最高賞受賞記録
パルム・ドール、金獅子賞、金熊賞の最多受賞はそれぞれ2回が最多記録。
パルム・ドールを2回受賞した監督は8人、金熊賞を2回受賞した監督は4人ですが、金獅子賞を2回受賞したのは長い歴史の中でもアン・リーただひとり。
★三大映画祭を制覇した映画人
カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの全てで個人賞を受賞した映画人も少なからず存在します。
ジュリアン・ムーア、ジュリエット・ビノシュ、ショーン・ペン、ジャック・レモンなどがその代表格で、加えて彼らはアカデミー賞も受賞しています。監督ではポール・トーマス・アンダーソンが三大映画祭全てで監督賞を受賞。しかも彼の場合は監督6本目でその偉業を成し遂げました。
★最高賞は嬉しいけれど・・・
カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞すると他の部門は受賞できない決まりになっています。
伝統的に一つの映画に複数の賞を与えないようにしてきたカンヌですが、第44回でコーエン兄弟の『バートン・フィンク』がパルム・ドールに加えて監督賞と男優賞を受賞する事態に。これ以降パルム・ドールを受賞した作品は複数部門受賞できないということが明文化されました。しかし、その後の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』や『エレファント』は例外的にパルム・ドールを含む複数部門を受賞しています。
★映画祭に好かれる監督
映画祭によっては同じ監督の作品が何本もコンペティション部門に入ったり、賞を受賞したりすることもあります。
その最たる例がデンマーク映画の巨匠ラース・フォン・トリアー。彼の作品はこれまで9本、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出されており、パルム・ドール1回、グランプリ1回、女優賞3回を受賞。ちなみにその後カンヌで「ヒトラーに共感する」発言で大バッシング浴び、『メランコリア』を最後に彼の作品はカンヌのコンペティション部門には選ばれていません。
華やかなレッドカーペットでも大きな注目を集める映画祭ですが、こういった記録にも注目してみると面白いことが色々と分かるところが、また面白いところ。
三大映画祭に次いで規模が大きな国際映画祭としてはロカルノ、ワルシャワ、モスクワ、東京などが挙げられます。また、アカデミー賞の前哨戦という意味で重要視されている映画祭としてはトロント国際映画祭、サンダンス映画祭があります。
世界各国の映画賞・映画祭はそれぞれの歴史や受賞作がかなり独特で、上映・受賞する作品はそれぞれの映画賞・映画祭で実に多種多様です。こういった違いに注目して、映画賞・映画祭を比較してみるのも面白いかもしれませんね。
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