業界人インタビュー

【ENDROLL】「波乱の走り出し」合同会社Bon 本橋真由美さん ~前編~

2024-01-12更新

この業界、とにかく面白い人が多い。

そんな気づきから、映画・エンタメ業界で働く人とその成りに焦点を当てたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
業界の最前線で働く方にインタビューを行い、現在業界で働いている人はもちろんのこと、この業界を目指している人にも刺激を与えていきたいと思う!

 

今回は、ポスターやチラシなど映画宣伝ビジュアルを制作している合同会社Bonの本橋真由美さんにインタビュー。Bonさんは、『市子』『ケイコ 目を澄ませて』『余命10年』など、数多くの記憶に残るデザインを手掛けてきたデザイン会社である。

前編では、本橋さんがデザインに興味を持ったきっかけや、Bonさんに転職するまでの歩みについて伺った内容をお届けする。すると、驚くべきエピソードが次々と発覚し、多くの困難を乗り越えてきた本橋さんの人生が見えてきたー。

 

★【ENDROLL】「トレンドはドラマ売り」合同会社Bon 本橋真由美さん ~後編~

 

社会人1ヶ月目でクビ!?

本橋さんの社会人デビューは、長年愛読していたカルチャー誌を手掛ける会社のデザイナーだった。しかし、入社してまもなく衝撃的な出来事が起こる…!

KIQ:Bonさんにはどのくらいいらっしゃるんですか。

本橋:2015年の立ち上げの頃からいるので、今年で8年目ですかね。

KIQ:8年目になるんですね。そもそもこの業界に入ったきっかけは?

本橋:どこから話せばよいか迷うのですが…、実は大学を卒業してから1回ちょっとしくじっていて…。

KIQ:え、何があったんですか…?

本橋:学生の頃にずっと好きで読んでいたカルチャー誌があったんですが、そこがデザイナーを募集しているのを偶然見つけて、履歴書を送ったら通ったので、大学卒業後は一旦そこに勤めたんです。それで最初はアルバイトとして働いていたのですが、なぜか1ヶ月目でクビを言い渡されてしまって…。

KIQ:えっ!?

本橋:しかも結構癖のある辞め方をさせられたんですよね。入って2週間ぐらい経った時に「君、来月の最初の2週間休んでもらっていい?」って言われて。理由を聞いてもよくわからない言い訳をされたんですが(苦笑)、とりあえず了承したら「車の免許合宿ってあるじゃん?あれ、ちょうど2週間だよね?免許持ってないんだったら行ってきなよ!社会人になって2週間とか休めることないよー」ってなぜか免許合宿を勧められて(笑)

KIQ:どういうことですか?(笑)

本橋:意味がわからないですよね、でも勧められたのでとりあえず免許合宿には申し込んだんですが(笑)、合宿行く直前のちょうど入社して1カ月くらい経った時に「君のこと見てたけど、うちはちょっと違うかな。明日から来なくていいよ」って突然言われて!

KIQ:えー!!

本橋:今思うと、完全に実力不足ではあったと思うので、どうやら見切りをつけられたっぽくて…。

KIQ:いや、1ヶ月で見極めるのは早すぎますよね。

本橋:本当にそうですよね!しかも去り際に「明日からやることがあってよかったね」って言われたんですよ!確かに免許は取りにいくけれど!!

KIQ:それ、ひどすぎますね…。

本橋:なんてひどい会社だ!!って本当にむかついて!給料もその場で渡されたんですけど、1カ月働いて交通費込で6万円とかだったので、こんなはした金はさっさと使ってしまおうと思って、その日の帰りにメガネ屋さんに寄って3万円弱ぐらいの少し良いメガネを買いました(笑)あれは本当に悔しかったです…。

今度は会社が倒産!

思いがけず再び就職活動をしなければならなくなったことで、結果的にそれが映画業界に足を踏み入れるきっかけとなった本橋さんだったが、またもや不運なことに直面する…。

KIQ:その後はどうされたんですか?

本橋:しょうがないのでまた就職活動を始めました。その中で大手映画会社の子会社のデザイン会社の募集を見つけて、それまで特段映画好きというわけではなかったんですけど、なんか面白そうと思って入社したのがこの業界に入るきっかけですかね。

KIQ:そこがBonさんの前に勤めていた会社ですか?

本橋:いえ、実はそこも経営不振などが原因で入社して半年ぐらい経ったときに潰れたんですよ。

KIQ:えー!

本橋:なのでまた1回会社を辞めるんですけど(笑)、その後もなんとか引き続き映画関係のデザインの仕事を続けて、2015年に 今の上司の島田とBonを立ち上げるところから携わっているという感じです。だから、始めからちょいちょいつまずいているんですよね(笑)そんなスタートだったんで、こんなに長く続けられるとは思っていなかったです。

KIQ:私だったらきっと社会不信になっています…。そもそもデザインに興味を持ったきっかけは何だったんですか?

本橋:中学生の時に進路の授業で将来なりたい職業を書かないといけない時に、何も思い浮かばなくてすごい焦ってしまったんです…。漠然と事務とかOLさんみたいな仕事はちょっと性格的に合わないんじゃないのかなって思うところがあったので、何か興味があることに進んだ方がいいかもなと思いつつも、何をしていいかわからなくて…。そうしたら友達が「絵とか好きだよね?美大に行って、イラストレーターになれば?」ってアドバイスをくれて。それで、絵を描くことを仕事にできるのか、じゃ美大に行こう!って。

KIQ:ご友人の勧めがきっかけだったんですね。

本橋:はい。それでイラストレーターになるために美大のデザイン科に進学はするのですが、とはいえ絵がうまい人ってゴロゴロいるし、ちょっと難しいかもなと思ったことなどもあり、結果的にはデザイナーになる道を選びました。

 

後編では、映画のポスターデザインがどのように作られるのかや、求められるデザインの変化について伺った内容をお届けする。

★【ENDROLL】「トレンドはドラマ売り」合同会社Bon 本橋真由美さん ~後編~

 

 

【Information】


みなに幸あれ』(2024年1月19日)
看護学生の孫(古川琴音)は、久しりに田舎に住む祖父母の元を訪れ、家族と幸せな時間を過ごす。
しかし、祖父母の家で「何か」がいるような違和感を覚える。そして、人間の存在自体を揺るがす根源的な恐怖が迫ってくるー。
総合プロデュースは日本ホラー映画の重鎮、清水崇。

原案・監督:下津優太
総合プロデュース:清水崇
出演: 古川琴音、松⼤航也 他
(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会

 


サイレントラブ』(2024年1月26日)
『ミッドナイトスワン』の内田英治監督による最新作。
声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼(山田涼介)は、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏(浜辺美波)と出会う。
ピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。蒼の不器用な優しさが、美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく。

原案・脚本・監督:内田英治
出演:山田涼介、浜辺美波、野村周平 他
(C)2024「サイレントラブ」製作委員会

 

【Back number】
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