プロが見たこの映画
宣伝ディレクターが語る「なぜ、自分は命を削ってまで映画の宣伝をしているのか?『ハケンアニメ!』を見て考えた。」
映画宣伝に携わっているのでよく「映画好きなんですね?」って聞かれるが、もちろん映画は好きだが、それは普通に映画が好きのレベルを脱してない、というか映画好きを名乗れるレベルでもない。だって詳しいかと言われれば詳しくないし、見まくっているかと言われれば全然見ていない。
宣伝の仕事が好きだからである。
とにかく「宣伝」が好きで辞められない。ある種、中毒だとも思っている。
映画宣伝の仕事っていうのは、終わりがない。
誰かに映画の存在を伝える、誰かに映画に対して興味を持ってもらうための全てを請け負っているのだから、例えば、街中で見知らぬ人にチラシを配るのだって宣伝。映画が公開するまで、とにかく不安で至ることをする。
ましてや、多くの人が情報を得るマスメディアという存在がなくなり、個々が自分の興味・嗜好で情報を収集・発信できるようになり、なんならSNSを通じて1対1のコミュニケーションも取れるようになった今、「宣伝」という業務は、無限に広がった。
すなわち、燃え尽きてくたばる(眠る)まで永遠と仕事は続くのである。(もちろん、それはずっと続くわけではなく、宣伝の立ち上げだったり、イベントだったり、公開直前だったり、とタイミングはある。じゃないと、言葉通り、本当にくたばってしまう。)
そして、その業務の8割は辛かったり、大変だったりすることが多い。
では、なぜ、そこまでするのか?
個人的な理由としては、思い描いた形で「作品」が伝わり、広がっていく事の快感を求めているのだと思う。すなわち、目には見えないけど、ある種、「コミュニケーション」と言う作品を作り上げているに等しい。イメージしてプランした「流れ」を構築していく。もっとアカデミックに言うとしたら「世論」を作っていくクリエーションに近い。
これは、形がない分とても難しい。そして、こうやりたいと思って、実現できることではない。
「世の中の空気」を読みながら、宣伝している作品をその空気の中に紛れ込ませて爆発させるような、戦略を練らなければいけない。
もちろん「世の中の空気」を読むのなんてなかなか難しいし、空気ってのは、ちょっとしたことで瞬間的に変わってしまう。いわば博打みたいな側面もあり、張ったタイミングと内容でメガヒットにも結びつく。その快感にハマってしまっている中毒者でもある。もちろん博打と言っても、負けないように過去の経験、そしてデータ分析、調査等々、なるべく多くの情報を入手して、でも最後には「賭ける」と言う部分が必ず出てくる。
「宣伝」という仕事は、ある種、「こうなるといいな」と思い、妄想したものを形にしていく、クリエーションの仕事なんだと思う。
そんな中、宣伝を担当している、
映画「ハケンアニメ!」が5月20日(土)から劇場公開する。
アニメ業界でしのぎを削るものたちを描いた作品で、とにかく胸熱で、アニメ好きでなくても業界関係者じゃなくても誰も「共感」する事間違いない作品だ。実際、一般試写でも嘘偽りない数字で驚愕の満足度が出ている。
この映画を見て、とにかく熱くなった。自分が肯定されているような気持ちになったし、もっともっともっと、自分を信じて進んでいこうという気持ちにさせてくれた。
これはアニメ業界と近しい映画業界に身を置いているから、尚更そう感じるのか?
否。
数多く実施した一般試写で鑑賞してくれたお客様の反応がそれを物語っている。この映画は、老若男女、業界や職種関係なく、誰もが「共感」する何かがある。
それは、私が、自分とその生活のほとんどを費やしている仕事との関わりをあらためて考えさせられた通り、誰もが「今の自分」を見つめるきっかけを与えてくれる「魔法のような作品」だからだと思う。
そしてそれは、前述の宣伝がクリエーションだと感じたのと同じように、世の中にあるすべての「仕事」はクリエーションであるからだと思う。
「こうやって営業の売り上げを伸ばそう」
「こうやってお客さんの気持ちを掴もう」
「こういう野菜を育てよう」
「こういうチームにしていこう」
「こういう家庭にしよう」
「こんな週末を過ごそう」
などなど、むしろ、生きることってとてもクリエイティブの集合体なのだと感じている。
みんな生きている上で、自分がやりたい、やるべきことをイメージしてそれを実現しようとして毎日生きている。
いわば、誰もがなんらかの「もの作り」(目には見えないものも含めて)をしているのだ。
だから本作で描かれる、アニメを作るものたちの「想い」は、実際にアニメ作りをしている人以外にも、とてつもなく共感できるのだと思う。
そんな本作が、遂に明日、劇場公開を迎える。
私の映画宣伝における師が以前、ヒットする映画の3つの条件を教えてくれた。
(1)映画が面白い
(2)チームが一丸となっている
(3)運
映画「ハケンアニメ!」に関しては、(1)と(2)は確実にクリアしていると思う。
そして師曰く、(3)の「運」は、(1)と(2)がちゃんとできていれば、自然に引き寄せられてくると言っていた。
映画の公開まであと一日と迫った今、私は今、とてつもなく大きな波が来ているような気分になっている。この感覚があっていて、「運」もしっかりと引き寄せているのか、明日からの興行で答え合わせが始まる。
あー、ドキドキするー!!!!
宣伝ディレクター ダビデ
『ハケンアニメ!』
5月20日(金)より全国公開
監督:吉野耕平
キャスト:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑ほか
配給:東映
(C)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
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