業界人インタビュー
【ENDROLL】「現場に保育を、業界に希望を。」in-Cty小夏菜々子さん、濱いつかさん ~後編~NEW
この業界、とにかく面白い人が多い。
そんな気づきから生まれたインタビュー企画「ENDROLL エンドロール ~業界人に聞いてみた」。
映画・エンタメ業界の最前線で活躍する方々に話を聞き、そのキャリアや想いに迫ります。
現在この業界で働いている方はもちろん、これから業界を目指す人にとっても、刺激となるリアルな声を届けていきます。
今回は、芸能業界専門のベビーシッターサービスを提供する、in-Cty合同会社の小夏菜々子さんと濱いつかさんへのインタビュー後編!
業界が抱える課題についてもお話を伺いました。このサービスが“当たり前”として受け入れられ、そして、現場の意識も少しづつ変わっていってほしい―そんな思いを、お二人が率直に語ってくれました。
子どもの存在が、意識改革のきっかけに
KIQ:
現場を見ているお二人にお聞きしたいのですが、撮影現場の労働環境は改善されてきていると聞きますが、実際どう感じられていますか?
小夏:
たしかに10年前に比べると労働時間や体制も改善されましたが、一般企業と比べるとまだまだです。
KIQ:
なるほど。ベビーシッターサービスがあるからといって、お父さん・お母さんの帰宅が深夜でいいってわけではないですもんね。
小夏:
それは本末転倒ですね。今は日本映画制作適正化機構(映適 *映画制作を志す人たちが安心して働ける環境を作るために、映画界が自主的に設立した第三者機関)で労働時間が定められている現場もありますが、早朝やナイター撮影など、業界特有の事情で撮影時間が変則的になることがすごく多い業界じゃないですか。私たちのサービスは、そういうところにマッチすればいいなと思っていて。「子どもを預けられるから24時間働ける」ということではないです。
KIQ:
現場は、男性=お父さんが多いのですか?
濱:
今は半々くらいで、女性が非常に多い組もあります。
小夏:
特にアシスタントは女性が多いかも。だからこそ、彼女たちが5年後、10年後に出産や育児で離職してしまって、キャリアを築いた優秀な人材が抜けてしまうのも課題だと考えています。
濱:
働き方の選択肢が増えれば、働きたい人が業界に残れますよね。若手に希望を持たせるためにも、上の世代が協力して働き方や必要な予算の調整を検討していってほしいですね。
小夏:
現場で子どもを預けられる環境があることが、業界全体の働き方や子育てとの両立を考えるきっかけになって、少しずつでもみんなが声を上げやすくなるといいなと思います。そういうところから私たちも貢献できたらいいなって。
KIQ:
そうですね。
小夏:
現場に行くと「そういうのやってるんだ!?」と皆さん興味を持ってくれて、実際に見たり、利用してくださった方はリピートしてくれるんですよ。
濱:
なにより、やっぱり子どもたちが楽しそうですね。
小夏:
初めて利用するハードルって、やっぱり利用者さんとしても大きくて。使っていいのかな・・・みたいな。男性スタッフの中には、土日もずっとパートナーに子どもを預けっぱなしになっている方もいるじゃないですか。一応私たちからはパートナーの方にも言ってくださいね、パートナーの休息のためにも遠慮なく連れてきてくださいっていう話をするんですけど、やっぱりそこの腰はあんまり軽くはない。
でも、一度利用したら皆さんまた使ってくださるので、そこの意識改革をちょっとずつ、ちょっとずつやっていかなきゃなって感じですね。
目指すのは「保育部」という当たり前
左:濱いつかさん 右:小夏菜々子さん
KIQ:
1年やられてみて、改めて業界の一番の課題というか、こうなっていくといいなと思うことは何でしょうか?
濱:
私たちがやっていることが当たり前になることが一番です。
小夏:
そうですね。映適が入って撮影労働時間が12時間になったとはいえ、普通に考えたらやっぱり12時間って長いんですよ。「子供たちを12時間も現場にいさせていいのか?」っていう意識を全体的に持てるようになって、難しいかもしれないけど、これが10時間になって8時間になれば、通常の働き方になれる。まあその分撮影期間が長くなっちゃうんですけど、そこに予算がしっかりついて、国が補償してくれるようになるといいですね。8時間になると、保育園も送りかお迎え、どちらかはできるようになるんですよね。
濱:
そうそう。
小夏:
子育てと仕事を切り離して考えなくてもよくなればいいですよね。コロナの時期って、すごい勢いで「衛生部」ができて、どの組にもいましたよね。その衛生部と言われる人たちを雇うお金はあったわけで。
KIQ:
本当ですね。
小夏:
それと同じように、現場に俳優部、撮影部と並んで、みんなが困った時に利用できる「保育部」として当たり前になるのが理想ですね。 そして、保育部ができることによって、時間管理もしっかりできるようになって、この業界自体が働きやすくなればいいなって思います。
濱:
そうなることで、この業界で働くのが好きなのに出産や育児が理由で辞めていった人たちも戻って来れる。
小夏:
で、それでもやっぱり戻れない人たちは、うちに入ってもらえれば(笑)。
濱:
一緒に働きましょう(笑)。
小夏:
ニーズに応えるためにも、私たちの課題としてやっぱり人を増やしていくことがあるので。芸能業界でも働けるし、子どもたちと関わって現場にも入れるし。現場に携われる仕事がしたいっていう中で、うちもひとつの候補になればいいなと思います。
濱:
私たちも自分の子をほかに預けて、自分が仕事できないというのは一番ダメなパターンだと思うので、自分たちも同じように働きながらも続けられる環境を、自分たちで作らなきゃいけない。
小夏:
そういう意味でもやっぱり従業員を増やさなきゃいけない。
濱:
現場でしっかりホワイトに働けて、もちろん子どもも育てられる、そういう希望を持つ人にとっての働き場所になれるといいですね。
KIQ:
人が揃えば、それこそもう8時間ごとのシフト制みたいなことも叶いますね。
濱:
午前の部、午後の部みたいな。夕方も入れて3部制にするとかね。
小夏:
そうですよね。 2部制にできるだけでも、保育園の送迎に融通がききますから。
KIQ:
そうですね。
濱:
でも、今動き始めても、実際に変わってくるのは5年、10年後だと思ってます。 それでも先を見据えて動かないと一生変わらないですから。
小夏:
映適も何年もかけてやっとそういう意識が広まってきているので。10年前は私も今日は何時に寝られるんだ、最近いつ休んだっけ、ってなってる時代だったのが、今はマネージャーもシフト制な時代になってきてますし。そんな感じで、ちょっとずつ変わっていけばいいなと。10年後振り返った時に「あの時から動いてよかった」と言えるように、いまから少しずつ改善していきたいと思っています。
濱:
10年後を見据えて頑張ります!
★「撮影現場が託児所に!?」in-Cty小夏菜々子さん、濱いつかさん ~前編~
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