調査レポート

映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.4キャッチコピー編

2025-02-10更新

KIQ REPORTの5周年を記念し、宣伝という観点から2024年の映画を総括する「映画宣伝スペシャル座談会」。お笑い芸人/映画紹介人のジャガモンド斉藤さん映画宣伝ウォッチャーのビニールタッキーさん「ぴあ」編集部の中谷祐介さんの3名に参加いただき、2024年に日本で劇場公開された作品を対象に、①ポスター、②予告編、③キャッチコピー、④イベントの4つをそれぞれの見地から語り合った。全5回。

第4回は、キャッチコピー編! SNS時代において、キャッチコピーという誇張した文言は、一歩間違えれば騙し行為だと判定されかねないかもしれない。いかにして偽装せずに強烈な一言を提示するのか。ハッタリだからこその惹句の魅力を語り合った。

>>>映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.1ポスター編~前編
>>>映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.2ポスター編~後編
>>>映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.3予告編

ハッタリを越えたキャッチコピーのインパクト

──みなさんに2024年に印象に残った映画のキャッチコピーも挙げていただきましたが、いくつか被っていますね。中谷さんとビニールタッキーさんは『ゴジラ×コング 新たなる帝国』(以下、『ゴジコン』)の「一線を越える。常識が変わる。」を挙げられました。

中谷 映画のコピーって、要は釣りだから大袈裟に書くわけじゃないですか。どれだけ大袈裟に言っても許される分野で、映画の実際の内容と伴ってなくてもいい。そう思って『ゴジコン』を観に行ったら、本当に一線を越えてたっていう(笑)。こっちの頭のネジも飛んだなっていう点で、このコピーはちょっと忘れがたかった。 キャッチコピーに関しては、2024年はこれが言えればもう十分と思えるほどちょっとインパクトがありました。

ビニールタッキー: 僕も全く同じ意見です(笑)。映画のキャッチコピーとか惹句というのは、ハッタリで全然いいと思うんですよ。馬鹿でかいこと言って、そういうケレン味が楽しいものでもあるので。 この映画は、大袈裟っぽいキャッチコピーが本当の内容だったのでおったまげた(笑)。本当に一線も越えてるし、常識も変わる。

斉藤: 僕は、『ゴジコン』はキャッチコピー枠じゃなくて、予告編枠で入れたんですが、予告の中でゴジラとコングがこっちに向かって走ってくるところが、初めて見たとき、強烈だったじゃないですか。こんなこと起こりうるのかと本編を観たら、それ以上のことがやっぱめっちゃ起きてた(笑)。予告編でここ大事なシーンっぽいのに、映しちゃっていいのかな?とか思ったんですけど、杞憂でした。コングがシャワー浴びたり、歯医者さん行ったり、もうとにかく記憶に残るシーンばかりで。どの部門かに確実に『ゴジコン』は入れなきゃと思わせる映画で最高でした。

──マ・ドンソク主演の人気アクションシリーズ第4弾『犯罪都市 PUNISHMENT』のキャッチコピー「拳 vs IT犯罪」も斉藤さん、ビニールタッキーさんがともに挙げられました。

斉藤: 僕はマブリー(編集部注:マ・ドンソクの愛称)の『犯罪都市』シリーズが大好きで楽しみにしていたんですが、本当に「拳 vs IT犯罪」の通りの話だった(笑)。まず日本語として、言葉として、あり得ない組み合わせじゃないですか。「拳」と「IT」ってぶつかれないじゃんみたいな(笑)。でも、本編を見たら、本当にITとかインターネットとかよくわかってないマ・ドンソク演じる刑事が、でもどうにかしてこの巨悪を倒さなきゃいけないと、いたるところを走り回ってぶん殴りまくる映画だったので、コピーとして、日本語として意味わかんないんだけど、映画自体もその意味わかんなさはそのままだった。刑事のアナログ人間なところも表してて最高だったし、キャッチコピーのフォントのデカさもすごい僕は気持ちよかった。

ビニールタッキー: ポスター面でもあれはすごかったですね、確かに。

中谷 シリーズものだからこそ、観客への信頼があるからこそ、まさに成り立っているコピーですよね。ファンとマ・ドンソクの間で築き上げてきた信頼関係の上に成り立っているという意味では、ちょっと『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』のティザーでの話(参照:ポスター編前編)とも通じるかもしれない。みんなそんなことが起こるわけないとどこかで思いながら見に行って、でも納得するみたいな。

ビニールタッキー: 僕も『犯罪都市』シリーズのファンで、日本公開前から今度はITカジノを捜査する話だと漏れ聞こえてきたときに、でもITを駆使して戦うんじゃなくて、どうあれたぶん拳で解決するんだろうなとファンとしては思うわけですよ。そこでこのポスターとこのキャッチコピーが来たもんですから、やっぱりそうなんだって安心しましたね(笑)。

キャッチコピー不要!?問いかけ型タイトル

──斉藤さんは、統合失調症の症状が現れた姉を家に閉じこめた家族をその弟自ら20年間にわたって記録した『どうすればよかったか?』を入れられました。現在、拡大上映されているドキュメンタリーですが、このキャッチコピーはどういうところがよかったですか。

斉藤: これは、「言いたくない家族のこと」というキャッチコピーがついていますが、いや、タイトル自体が何よりもキャッチコピーになっているように思えました。こういうタイプってあんまり見たことない気がして。大体キャッチコピーって、映画の本編のちょっと補足だったりするじゃないですか。でもこの映画は、本当に「どうすればよかったか?」のみでいけるというか、この一言がタイトルもキャッチコピーもどっちも担っちゃっている。キャッチコピーが不要とも言えるぐらいの領域に行ってて、これはちょっと秀逸だったという意味で入れさせていただきました。

<イベント編に続く>

★ジャガモンド斉藤さんが選んだキャッチコピー
『マミー』:「母は無実だと思う」
『どうすればよかったか?』
『犯罪都市 PUNISHMENT 』:「拳vsIT犯罪」
『デッドプール&ウルヴァリン』:「ズッ友だよ❤」
『帰ってきた あぶない刑事』:「無茶しないと、滅びるぜ」

★ビニールタッキーさんが選んだキャッチコピー
『恋するプリテンダー』:「恋プリ旋風 日本上陸」
『犯罪都市 PUNISHMENT 』:「拳 vs IT犯罪」
『ゴジラ×コング 新たなる帝国』:「一線を越える。常識が変わる。」

★中谷祐介さんが選んだキャッチコピー
『ジガルタンダ・ダブルX』:「お前が芸術(シネマ)を選ぶのではない。芸術(シネマ)がお前を選ぶのだ、マイボーイ」
『マミー』:「母は、無実だと思う。」
『ゴジラxコング 新たなる帝国』:「一線を越える。常識が変わる」

【PROFILE】
ジャガモンド斉藤
お笑いコンビ『ジャガモンド』のツッコミ担当。年間約300本鑑賞する映画好き。テレビではテレビ埼玉の情報番組「マチコミ」にて映画紹介コーナーを担当。『ジャガモンド斉藤の映画宣伝にアレコレつっこむラジオ 』( K-MIX ) に出演中。YouTubeで『シネマンション』に出演中。

ビニールタッキー
映画宣伝ウォッチャー。ブログ「第9惑星ビニル」の管理人。海外の映画が日本で公開される際に発生する“おもしろ宣伝”を観察・収集する。トークイベント「この映画宣伝がすごい!」を毎年開催。

中谷祐介
スマートフォンアプリ&WEB「ぴあ」編集部所属。映画ジャンルのインタビュー、記事執筆、情報取材などを担当。Youtube番組「ぴあ映画コンパス」を配信中。好きな食べ物はかまぼこ。

【関連記事】
映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.1ポスター編~前編
映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.2ポスター編~後編
映画宣伝スペシャル座談会 2024年版 Vol.3予告編

不明なエラーが発生しました

映画ファンってどんな人? ~ライフスタイルで映画ファンを7分析~
閉じる

ログイン

アカウントをお持ちでない方は新規登録

パスワードを忘れた方はこちら

閉じる