プロが見たこの映画
宣伝担当が語る「宣伝と民主主義」
「もう、自由に映画のことをメディアに語ったり、取材受けたりはできないんだよね。広報を通さないと。会社の決まりで。」とある大手映画会社に勤務する友達の宣伝マンは、寂しそうに目を伏せながらビールを口に含んだ。
一昔前の宣伝マンは、自分が担当する作品のために、TVやラジオ、雑誌などに出て作品の「ウリ」を語り、この映画は今、見るべきだ!と活躍してきた。
今は、自主規制の如く、控えないといけないルールがある会社もあるのか。。
ネットが出てきて、いち社員の発言がネットに残り、場合によっては切り取られ拡散されると企業のブランドを毀損する恐れがあるからだ。恐るべし、資本主義。
「宣伝と民主主義」、とタイトルだけは決めたところで、さて、何を書こうかと考えた時、ふとこの知人の宣伝マンのことが浮かんだ。
もちろん、自分のような野良宣伝マンは、いまだに自分が出ることで宣伝の一つの掲載記事になるのであれば、今もこうやって文章を書いている。
声を奪われることは、自己肯定感は下がり、なかなか情熱を持ってこの仕事をすることが難しくなっている時代にあなたは、あなたはいったいどうやって宣伝マン人生を全うするつもりでしょうか!!??
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さて、『ヤジと民主主義 劇場拡大版』という映画が12/9(土)ポレポレ東中野と札幌シアターキノで全国順次公開される。
安倍首相の遊説中に、政権批判のヤジを飛ばした市民が警察に排除された問題を扱ったドキュメンタリー映画だ。
北海道放送が制作した。この作品で面白いポイントの一つは、冒頭の2019年7月15日に発生したヤジ排除の様子を自社のカメラで押さえてないことだ。というかTVカメラの配置上、押さえられなかった。だが、映画は成立している。
それは、市民がスマホなどで「何かおかしい」と感じて撮影していたからだ。
もう一つの映画のポイントは、警察が法的根拠のない行為をマスメディアのカメラが回っている目の前で行われたことだ。これは、メディア・ジャーナリズムが無視、過小評価された表れかもしれない。今は、声を奪われないようにするギリギリの瀬戸際なのだ。
政治活動でも通常の仕事でも、不当に「声」を取り上げられてしまう環境、シーン、人間関係があるかもしれない。「声なんて上げずに我慢しておけばいい、迷惑にならないように」という囁きがあなたの耳元で聞こえてきたら、映画の中に出てくる大杉さんの言葉を思い出してみよう。
「声を上げるのは最悪だけど声を上げないで帰るのはもっと最悪だっていうふうに思って」
山崎裕侍監督によれば、「ヤジも一つの表現」だそうだ。
宣伝マンも、声だけでなくさまざまな宣伝で「表現」活動をします。
最後に決定ポスターに選ばれなかった、いわゆるポスターデザインラフの数々をお見せしてこのコラムを締めたいと思います。
これらのラフからもさまざまな声が聞こえてきませんか?
『ヤジと民主主義 劇場拡大版』宣伝担当 アオキ
『ヤジと民主主義 劇場拡大版』
12/9(土)よりポレポレ東中野、札幌シアターキノほか全国順次公開
制作・編集・監督:山﨑裕侍
ⒸHBC/TBS
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