プロが見たこの映画
ファッションのプロが語る「バグってる系恋愛映画『パンチドランク・ラブ』」
遅刻してきた相手を何時間まで待つことができるか?
私は7、8年前の元旦に1時間半タリーズで時間を潰したことがある。もちろん人を待っていた。その間、遅刻しているはずの友人2名は片や爆笑ヒットパレード、片や半身浴に興じていたが、こうして今エピソードトークのネタになっているのでまあ良い経験だった。
何が言いたいかというと、私が無心で人を待っていた1時間半で観ることができる映画が世の中にはたくさんあって、その中でも大好きな作品が『パンチドランク・ラブ』だ。
PTAことポール・トーマス・アンダーソン監督の長編映画4作目にあたる。
恋愛映画というジャンルはその中でさらに細かく細分化されるものだと思っていて、例えば青春まっすぐキラキラ系や不倫に浮気のドロドロ系、さよなら悲しいボロ泣き系などがある。(全て個人の意見です)
『パンチドランク・ラブ』はジャンルでいうと”常軌を逸した狂気的恋愛映画”で、分かりやすく言うとバグってる系恋愛映画だ。なので某映画レビューサイトを覗くと高評価の人と低評価の人でばっくり意見が分かれているのが特徴だ。私は前者の人間というわけだ。
アダム・サンドラー演じる主人公バリーはブチ切れるとガラスをハンマーで叩き割ったり物を破壊したりする癇癪持ちで7人の姉がいる。バリーは姉から紹介された女性・リナと恋に落ち、リナのためにプリンに付いてくるマイルを貯めてハワイに行こうとする、そんな話だ。文字にすると余計にバグを感じる。
恋愛経験の乏しいバリーは「目ん玉をえぐり出して食べちゃいたい」と、あれ私『悪魔のいけにえ』観てたんだっけ?と錯覚しそうになるおぞましいセリフをうっとり顔でリナに伝えたりするし、ブチ切れシーンもなかなかに荒々しいが、時折挟まれる挿入曲の可愛さが映画のテンションをいい意味でめちゃくちゃにしてくれていて、これがすごくクセになる。
実は恋愛映画には苦手意識があり、今までめちゃくちゃ好きだと思える作品に出会えてこなかったのだが、なるほどこういう形の恋愛映画もあるのか、とバグってる系恋愛映画というジャンルを目の当たりにして、また1つ自分の好きな系統を理解することができた。
書いている本日がバレンタインデーなので、恋愛映画について書こう!と意気込んだものの、髭が山田孝之くらい生えているという条件で人を好きになる私は、まともな恋愛映画に心を奪われるはずもなく、バグってる系恋愛映画に落ち着いたというわけだ。ぜひ、私のように恋愛映画に苦手意識を持つ人にこそ観ていただきたい作品である。
映画ファッションマニア つみき
『パンチドランク・ラブ』(2003)
監督:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン ほか
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