プロが見たこの映画
宣伝のプロが語る「信長は独裁者か?」
“自分では自分のことがわかない”
というのはよくあることですが、どうも忘れがちです。
正月をゆっくり過ごし、「ああ日本人でよかったぁ」などと感慨に浸りながら、ひとたび「あなたの宗教は?」と聞かれると、「無宗教です。」と答える方はご自分がわかっていない。正月の本質は「神人共食」、つまり神と人間が一緒に食事をするという、天皇陛下もよくやられますが、日本古来の宗教行為なのです。
「いや私は正月だけでなく、クリスマスも祝うし、ハロウィンで狂うけど。」という方もいますが、神があまりに身近過ぎて気が付かないだけなのです。16世紀、日本を訪れたスペイン、ポルトガルの宣教師たちがあれほどがんばったのに、キリスト教が広がらず、マカオやフィリピン、中南米の国々のように植民地にならなかったのは、遠藤周作の「沈黙」じゃないですが、多くの日本人の心には全くブレない日本の神様がいることを表しています。今でもそうだと思います。
征服されなかったのには、もう一つ理由があって、戦国時代の日本は銃の保有数がダントツの世界No.1でした。
凄くないですか?インカ・アステカ文明をたった数年で屈服させた絶頂期のスペインやポルトガルなどの世界帝国よりも多いのです。その数50万挺、ジパングは世界の支配者フェリペ2世などもうかつに手を出せない、どえらい軍事大国だったことがわかります。この状況を作り出したのが、織田信長でした。
彼は坊さんを権力から排除し宗教改革を行い、市場を開放して流通経済を発達させ、戦乱の日本を統一に導いた、言ってみれば、たった一人で日本を中世から近世に変えてしまった人なのです。
唯一の悩みが信長の兵隊ったらめちゃくちゃ弱いってことで、律儀な弟分・徳川家康の兵隊がめっぽう強いのに助けられて、なんとか「天下布武」なんてかっこつけてますが、寺を敵に回して恨みを買い、四方八方から囲まれてどうしようもない。そこで目を付けたのが鉄砲の力だった。「鉄砲なら兵隊の強いも弱いもない」とばかりに量産を急ぎ、戦況を一気に変えてしまったというわけです。でも、こんなに何でも出来ちゃう信長って本当に独裁だったのか?というのは興味のあるところですね。
映画『レジェンド&バタフライ』では妻(濃姫)の存在に注目していますが、これは秀吉が妻(おね)に助言を求めたように断然ありうる話だと思ってます。少し前の時代になりますが、源頼朝の妻(政子)も幕府の危機を救った超やり手ですし、日本という国は記録に残っていないだけで女性の発言力って結構あるのだと思います。しかも、この信長の妻って、半ば商人から謀略で大名まで成り上がった斎藤道三の娘ですからね。只者ではない可能性が高いです。天下のうつけ者が突然、世界のスペイン王も一目置く、隙のない征服者になったのは、導く存在がいたからだとしても不思議はありません。
自分では自分のことはわからないものです。『レジェンド&バタフライ』と「どうする家康」を観る際、思い出していただければと思います。
宣伝プロデューサー 石山成人
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