プロが見たこの映画
WEBパブリシストが語る「ハートをつかまれた『アバランチ』の世界観」
2021年のラストシーズンはあるドラマに完全にハマってしまいました。それが綾野剛主演、藤井道人監督の「アバランチ」です。破天荒な謎の集団・アバランチが汚職にまみれた権力者たちの罪を暴き、一般市民に正義を問いかけるというストーリーなのですが、ハラハラするストーリー展開と過激なアクションにどんどん引き込まれていき、ちょっと憂鬱な月曜日が毎週の楽しみになっていました。現在FODやU-NEXTで配信されているので、一気見するのもオススメです。
このドラマ、放送前から異様な雰囲気が漂っていました。情報解禁以降、作品の世界観を表現する「AVALANCHE」「NORIBEN」「PEACE」「BELIEVE」「SYNDICATE」「Lie?」と書かれた6種類の“プロパガンダビジュアル”を展開していたのですが、もうどのビジュアルも秀逸すぎて完全に心を掴まれました。さらに第一話予告も、本編映像と共に一言「もう一度信じてみないか?正義の力ってやつを」と綾野剛の渋いナレーションが入るだけ。物語の内容を伝えず、ドラマの世界観を最大限活かしたクリエイティブ宣伝のおかげで、内容がますます気になってしまい期待が膨らんでいきました。“謎だらけの新月10ドラマ”という演出が見事にハマっていたと思います。
その初回、第一話放送中にも驚くような仕掛けがありました。ドラマの終盤、アバランチは犯人を追い詰めると動画のライブ配信を開始。「あんたの罪がどう裁かれるべきかは、この動画を見ている全ての人間に委ねる。それが俺たちアバランチだ」と綾野剛がかっこよくキメるのですが、この一連のシーンを別アングルから撮った映像が、劇中と同時間に公式YouTubeチャンネルでリアルタイム配信されていたのです。ドラマの世界に現実世界の視聴者を巻き込んでいく、ファンにはたまらない仕掛けでした。残念ながらオンタイムで一話を見ておらず配信を見逃してしまったので、リアルタイムで見ていた人が本当に羨ましいです。せめてアーカイブでも残してもらえるとよかったのですが、放送前から作品に注目して、リアルタイムで放送を視聴していたコアなファンが楽しめる施策だったようです。
それにしても、作品が完成した後ではアイデアが浮かんでも実現不可能なこの施策。ドラマの撮影期間から、ここまでの展開を想定して作り込む企画力は本当にすごいなぁと思います。放送前からビジュアルと映像だけで作品の世界観を最大限訴求し、その世界観に惹かれた視聴者を一話から物語の中に巻き込んでしまう。この一連の展開で、熱量の高いコアなファンをしっかり囲うことができたのではないでしょうか。
最終回は大逆転劇と強いメッセージに圧倒され大満足でしたが、どこか続編を匂わせるような演出も…。映画化の可能性もありそうです。そうなれば、次はどんな仕掛けをしてくるのかも楽しみです。
ちなみに1月13日には藤井道人監督のドラマ版『新聞記者』がNetflixで配信されるので、どんな進化を遂げているのか今からワクワクしています。
WEBパブリシスト Onくん
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