プロが見たこの映画
宣伝担当が妄想する「南総里見八犬伝と明治維新の熱い関係」
江戸時代後期。日本ファンタジーの原点が生まれた。
滝沢馬琴による「南総里見八犬伝」である。
馬琴は28年の年月をかけ物語を書き続け、クライマックスに差し掛かった時、なんと失明してしまう。
それでもなお、物語を完遂させた奇跡の執念。
それは<悪が蔓延る現実>に対して、<勧善懲悪=正義が勝つ>物語を描きたい。
大衆にそんな物語を届けたいという彼の想いだったのだと、映画をみて感じた。
今週末、10月25日金曜から公開する映画「八犬伝」は、
そんな彼の生き様と、彼が描いた<虚の世界>、すなわちファンタジーである物語が交錯して描かれており、
両方を十二分に楽しめてしまうのだ。
何が凄いって、物語「八犬伝」<虚>のキャラクターたちの苦難や喜びや闘いと、
馬琴の現実の苦しみや歓喜、そしてクライマックスが見事にシンクロしていくということ。
物作りというのはリアルに、こうやって生み出した人間の<実>と結びついて生まれるんだなと納得した。
ちなみに、馬琴が生きた当時、
財政危機や改革の失敗ゆえの重税や厳しい統治、そして疫病や飢饉によって大衆は苦しんでいた。
さらに幕府は、庶民に対して思想統制を強化し、儒教的な道徳規範が強調され、
庶民文化や芝居、歌舞伎などが新しい表現が厳しく取り締まられた時代でもあった。
そんな時期にもかかわらず、逆に江戸文化は発展を遂げた。
本作にも出てくる葛飾北斎などによる浮世絵や、鶴屋南北による歌舞伎、
そして我らが滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」をはじめとする草双紙(小説)など
庶民文化が花開き、娯楽作品が広く愛された。
馬琴がこだわりまくった<勧善懲悪>に、さぞや大衆は熱狂しただろう。
そしてここからは私の妄想だが、この馬琴による<勧善懲悪>の物語は、
おそらくその後の大政奉還、明治維新にも大きな影響を与えたのではないかと思っております。
「南総里見八犬伝」が完結したのは、1842年。
その時、西郷隆盛14歳、高杉晋作9歳、坂本龍馬は6歳だった(と思われる。Wiki情報より)。
多感な少年たちは、おそらく南総里見八犬伝を読んでいただろう。いや、読んだに決まっている。
そして、心の中に<勧善懲悪>の種を植え、育てていき
自分たちを、そして大衆を苦しめる施政者を悪とみなし、行動をとったのではないだろうか。
もちろん、上にあげた有名志士たちだけではない。
何よりも大きいのは、「八犬伝」がその時代に生きた大衆たちの心に火を灯したことだろう。
大衆の応援がなければ、志士たちも決して行動を起こせなかったはずだから。
結果、江戸幕府は終わり、明治へと進んでいく。
そして、地続きで我々も今の世を生きている。
混乱した時代に文化が花開く。
そしてそんな文化をこよなく愛し、摂取する我々大衆の心に火を灯す。
江戸時代後期の混乱は、なんとなく現代に似ているような気がする。
長期にわたる平和(ボケ)による財政の悪化とそれに伴う重税に苦しむ大衆。
疫病(コロナ)や飢饉(米不足)。
大衆の行動に制限をかけて、統制を取ろうとする施政者。
うん、程度の差はあるかもしれないが、今じゃん、って心底思える。
そんな今に、この「八犬伝」が映画という形となり、大衆の元に届けられているという事実。
大衆は、「八犬伝」をみて何を思うだろうか。
そして、その結果、我々の未来はどうなっていくだろうか?
是非、心に火を灯しに映画館に足を運んでください!
映画「八犬伝」宣伝担当
吉田旅人
世界に誇る日本ファンタジー小説の原点『八犬伝』実写映画化!
迫力の「八犬伝」と奇跡の実話が交錯する前代未聞のエンターテインメント超大作!
江戸時代の人気作家・滝沢馬琴は、友人の絵師・葛飾北斎に、構想中の物語「八犬伝」を語り始める。里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠を持つ八人の剣士が、運命に導かれるよう集結し、壮絶な戦いに挑むという壮大にして奇怪な物語だ。北斎も魅了した物語は人気を集め、異例の長期連載へと突入していくが、クライマックスに差しかかった時、馬琴は失明してしまう。完成が絶望的な中、義理の娘から「手伝わせてほしい」と申し出を受ける──。 失明してもなお書き続けた馬琴が「八犬伝」に込めた想いとはー。
出演:役所広司 内野聖陽 土屋太鳳 / 渡邊圭祐 鈴木 仁 板垣李光人 水上恒司 松岡広大 佳久 創 藤岡真威人 上杉柊平 河合優実 小木茂光 丸山智己 真飛 聖 忍成修吾 塩野瑛久 神尾 佑 / 栗山千明 中村獅童 尾上右近 磯村勇斗 大貫勇輔 立川談春 黒木 華 寺島しのぶ
原作:『八犬伝 上・下』 山田風太郎(角川文庫刊)
監督・脚本:曽利文彦
製作:木下グループ 制作:unfilm 配給:キノフィルムズ
公式X:https://x.com/hakkenden_movie
公式Instagram:@hakkenden_movie
上映劇場:https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=hakkenden
【関連記事】
★宣伝担当が語る「プペル続編」宣伝予習と復習
★宣伝担当が語る「私たちは、本当に「心」を失ったのか?」
★宣伝担当が語る「宣伝と民主主義」
★宣伝担当が語る「これぞ<全部のせ!>高評価と銃声も鳴り止まない!“二郎系映画”を食べるならそりゃ劇場で!!」
COMMENT
コメントをするにはログインが必要です。不明なエラーが発生しました