業界人インタビュー

【FRONTIER】「人の本質が問われる時代にー」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~後編~

2023-06-30更新

ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー
小池賢太郎さんスペシャルインタビュー【後編】

映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。

前回に引き続き、ジョーカーフィルムズ株式会社代表取締役兼映画プロデューサー小池賢太郎さんのスペシャルインタビューをご紹介。

後編では、小池氏が考える、今の時代に求められる作品について、そしてこれからの時代どういう作品でどう闘おうとしているのかを聞いた。

【FRONTIER】「ピンチは挑戦の好機」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~前編~

メジャーブランドとは違う、もう1つのブランドを

KIQ:コロナ禍を経て、今お客さんが求めているものは何だと思いますか?

小池:今それが一番わからなくて困っている時期なんです。コロナ禍という時代背景も踏まえて、みんなに悲しいことがたくさんあって、自分自身が明日への希望を持ちたいと、元気に前向きに頑張れる物語が今必要だと思い、映画を企画してお客さんに届けたくても、なぜか、コロナ期間中からホラーやサスペンスがヒットするという現実もあり、しかも僕も観て面白いと思ってしまうので、結局は、感覚的に自分のこともよく分かってないですから。予想できないことが次々と起こる現代に、みんなが求めているものを当てるのは、難しいと感じています。

KIQ:確かに人の気持ちは読み切れないですね。

小池:わからないですよね。でも思えば、『まともじゃないのは君も一緒』もそういう視点から面白いと感じたのを思い出しました。基本的に、皆が普通ではないから、人それぞれの思考で良いんだよってなった時から、だいたい人は人のことがわからなくなってしまうんですよね。それで言うと『アンダーカレント』(2023年10月6日公開)の映画は、「人をわかるってどういうことですか?」というテーマも面白いです。良質な人間ドラマであり、繊細に人を描く作品です。今、多くの人に観てもらうには、難しい時期になっているのは感じますが、この映画は、今の時代にぜひ観て欲しい映画です。人の本当を分りたいのか、分からなくていいのか?とても人間の本質が興味深いですから。

KIQ:でも、人それぞれで良いし、いろいろな思考があって良いって言いながら、一応他の人や世の中のことも気になっていて、自分の考えにそこまで自信を持っているわけでもないようにも感じられます。みんな何となく不安も持っているような。

小池:それもそうですよね。実は皆が良いって言っているもの、担保できるもの、安心できるものに惹かれるというところですよね。映画でも例外なく、そういうものがこよなく大ヒットしていきますし。人が良いっていうものになびく傾向は、昔よりもますます加速している感じさえしますよね

KIQ: 一方、映画ファンっていっても大衆映画を主に観るライトユーザーもいれば、少し考えさせる部分があるような映画でないと物足りなく感じるコアなファンもいますよね。そのどっちを取るのかっていうのもすごく難しいと思うんです。

小池:おっしゃるとおりです。まさにそうですよね。僕も大衆映画も大好きですけど、考えさせられるコアな映画も好きなので。クリエイティブとしてそこのバランスをとるのは、いつも難しいと感じています。ライトユーザーとコアファンを両方とる映画製作は、難しいですよね。違う世界を作ったほうが良いかもしれませんね。例えば、メジャーブランドとは違うブランドを作って、どっちが優れているとかじゃなくて、そもそもターゲットも違いますし、求めているものが違うから戦略も異なる2つのカテゴリーのブランドとしてあっても良いのかなって思います。

KIQ:確かにそうですね。

小池:過去に、ライトユーザーが観てもコアファンが観てもおもしろいと思うものに製作として、挑戦したことがあります。『まともじゃないのは君も一緒』がそうです。プロットラインはすごくわかりやすくて、2人が喧嘩しあって、言いたいことをいって。笑えるコメディで。本当に軽快で楽しめる大衆映画ですが、脚本でしっかり登場人物の繊細な内面が描かれているから、心理的に考えさせられるところが多い映画でもあるんです。

KIQ:そこに気付く人は気付くっていう。

小池:そう期待しました。両方のファンに観て欲しかったんです。限られた予算で、どのような作りならば、たくさんの人に観てもらえるか、おもしろいと言ってもらえるかっていうところの挑戦はしなければいけないかなと思います。最高なのは、すごく良い映画ですって喜ばれて、事業としても成功する。これが理想だと思います。甘いかもしれないですが、今の厳しいマーケット状況では、事業費をリクープすることでヒットって呼んで良いと思うのです。だからまずは、何としてもそこを目指してチャレンジしたいですね。

KIQ:そうやって考えていくと、本質的な問題は、例えば“マリオ”とか“ワイルド・スピード”と、小池さんが作ってるような映画って、同じ棚に入れちゃいけないように思いますね。同じ劇場の中で劇場を取り合ってはいけない。そこは何かやりようがないか、業界全体として考えたいところですね。

小池:ありがとうございます。勿論、王道は王道であるべき存在だと思うんですけど、「それ以外」でのヒットが減っている。その状況が何とかなれば良いですよね。その為には、無邪気に映画ファンが増えてくれることが一番大事なことだと切に思っています今は新しいコンテンツを入れて早めに回していく時代。とにかくコンテンツとしての消費が早過ぎるのかもしれません。当然ですが、売れるものがより一層売れる時代なので、数多ある作品にとって厳しい時代と言えます。でも一方で近い将来、AIの進化、普及に伴い、人そのものの本質が問われる時代がやって来ます。そのための準備を僕たちは、もの作りにおいてもより意識する必要があるかもしれません唯一、人の本質は、人さえ理解できないことが多いのですから

【FRONTIER】「ピンチは挑戦の好機」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~前編~

 

 

【Information】

『アンダーカレント』 10月6日(金)公開
主演・真木よう子×監督・今泉力哉×熱狂的人気を誇る伝説的コミックの実写映画化。
誰しも、人には言えない大切な<嘘>を秘めている。おだやかな日常に漂う<心の奥底(アンダーカレント)>に触れたとき、差し込む一筋の光とはー。

監督:今泉力哉 音楽:細野晴臣
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ
配給:KADOKAWA
https://undercurrent-movie.com/

 

『こいびとのみつけかた』 10月27日(金)公開
『まともじゃないのは君も一緒』監督 前田弘二× 脚本 高田亮が贈る〈おかしな二人の物語〉第二弾。
世の中に馴染めない、ちょっぴりエキセントリックな2人が繰り広げる、〈可笑しくピュア〉なラブストーリー。

監督:前田弘二  脚本:高田亮
出演:倉悠貴 芋生悠
企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ
http://koimitsu.com/

 

【Back number】
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