業界人インタビュー

【FRONTIER】「ピンチは挑戦の好機」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~前編~

2023-06-23更新

ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー
小池賢太郎さんスペシャルインタビュー【前編】

映画業界の最前線で活躍する人々にインタビューする特別企画「FRONTIER 最前線」。

今回は、『キセキ —あの日のソビト—』や『愛唄 —約束のナクヒト—』『まともじゃないのは君も一緒』などを制作してきた映画製作会社、ジョーカーフィルムズ株式会社の代表取締役で映画プロデューサーの小池賢太郎さんに話を伺った。

前編では、大手レコード会社から、制作プロダクション白組での映画制作を経て、ジョーカーフィルムズを創立した小池氏が映画制作の上で大切にしていることを聞いた。また、コロナ禍は映画業界に大打撃を与えたが、果たして小池氏の映画プロデューサーとしての価値観は変化したのだろうか。

【FRONTIER】「人の本質が問われる時代にー」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~後編~

 

映画が作れなかったコロナ禍を好機に

KIQ:小池さんの書く企画書はとても余白があると聞いています。誰かから教わったんですか?

小池:全然、教わったわけではないんですけど、簡単に書いて、おもしろいとイメージしてもらえたら、企画としては良いのかなって。いろいろ説明するんじゃなくて、シンプルに感覚的に「なんか、わかるよね」って思ってもらえたら一番強いかなと思っています。

KIQ:なるほどですね。

小池:映画会社の方にご提案するときに、企画書はわかりやすくするものだと昔言われてきたことがあって。昔はいっぱい書いてたんです。でも限られた時間でプレゼンしようとすると、いっぱい書き過ぎて自分が結局、何だかよくわからなくなっちゃうんですよね(笑)。

KIQ:僕もいっぱい書いちゃうのでわかります(笑)。

小池:しかも提案を受ける側はたくさん企画書を見ているじゃないですか。だからプロがわかるシンプルな形、それが共有できれば良いかなと思ってるんです。最後は、おもしろいかおもしろくないかだと思いますし。

KIQ:アウトプットである宣伝も視野に入れて脚本段階から宣伝プロデューサーに入ってもらっているとお聞きしました。

小池: そうですね。そういうことが多いです。一緒にいろんな話をしながら進めていくので、宣伝的にも制作的にも最初にイメージできるものがあるっていうのは大きいと思うんです。制作プロデューサーとしての領域と、宣伝プロデューサーとしての領域ってあるじゃないですか。見てる方向は一緒だけど役割が違うから、きっと伸びしろになる部分ってあると思うんです。例えば、〇と〇が重なる部分っていうのかな。この重なりの部分が僕は結構重要だと思ってるんです

KIQ:GReeeeNの名曲「キセキ」誕生にまつわる実話を基にした『キセキ〜』も当初から宣伝を見据えて企画を練って行ったのですか?

小池:そうですね。しっかりJINさん(GReeeeNのプロデューサー)も交えて初めからお話をしていきました。普通の映画作りでは、それってなかなかできないというか、企画としてもナーバスでアーティストの根幹に触れるところもあるので、宣伝Pも含めて、本当に難しい部分が多かったと思います。GReeeeNさんの物語を映画化することは、お互い努力したことが多かったです。でも一緒にコミュニケーションをとって、みんなが一枚岩で頑張れるとすごくうまくいくんだなって。『キセキ〜』はいろいろ考えることがあって、やることが普通と違って、感慨深い映画でした。

KIQ:ところで最近は、劇場用映画以外の映像作品を作ったり、映画コミュニティを運営されたり、ジョーカーシアター(配信プラットフォーム)とか、いろいろやってらっしゃいますよね。映画業界の流れとか、イメージしているビジョンってありますか?

小池:いや、それでいうとコロナ禍で本当に何も作れなくなって、全部止まってしまって。そのなかで、僕達が今映画関連でやれることは何だろうって思った時に、「これだ!」と思ったんですよ。それで映画のサロンだったり、ジョーカーシアターを作って作品を流したり、今できることでこの先きっと映画の製作に役に立つと思うものを作りました。

KIQ:ジョーカーシアターでは、ジョーカーフィルムズさんの作品のみを扱っているのですか?

小池:いえ、そこは、自分のところのコンテンツだけじゃなくて、他のプロダクションさんのコンテンツも一緒にやって行けたらと思って立ち上げました。特にメジャーな作品でなくても、僕たちが見てもらいたいものを流していけたら幸せだなと思って。あと、僕たちが新作を発表するたびに前に作った作品も、そこでまた振り返って観てもらえたら嬉しいなと、思いましたし(笑)。

KIQ:小池さんは主に中規模の作品を製作されてますが、この10年、その辺りの映画市場ってどうだったんですか?

小池:もともと『キセキ〜』『愛唄〜』サイズの作品を作る時から、もう興行的にビジネスとして「中規模の映画は厳しい」っていわれていました。そこからさらにコロナ禍のダメージを受けて、より作りづらくなったのではないでしょうか。

KIQ:コロナ禍に映画館で映画をかけられなくなったことで、価値観は変化しましたか?

小池:そうですね。映画館でかけられない以前に作れなかったので、相当大変でした。うちは小さな会社なので、1回制作が止まったら会社がなくなってしまうリスクもあって。価値観的には、このままコロナで映画館に人が来ないと映画を作る意味がなくなってしまうなと思いました。でも幸いなことに配信はすごく調子が良いから。その時は、これからは映画を観るスタイルもかなり大きく変わるだろうなって思いました
当たり前ですが、家で観ればリスクなく安心ですもんね。

 

後編では、小池プロデューサーが考える、「今」のお客さんが求めている映像コンテンツのお話や映画の多様性についてお話を伺う。

【FRONTIER】「人の本質が問われる時代にー」ジョーカーフィルムズ代表取締役/プロデューサー 小池賢太郎さんスペシャルインタビュー~後編~

 

 

【Information】

『アンダーカレント』 10月6日(金)公開
主演・真木よう子×監督・今泉力哉×熱狂的人気を誇る伝説的コミックの実写映画化。
誰しも、人には言えない大切な<嘘>を秘めている。おだやかな日常に漂う<心の奥底(アンダーカレント)>に触れたとき、差し込む一筋の光とはー。

監督:今泉力哉 音楽:細野晴臣
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ
配給:KADOKAWA
https://undercurrent-movie.com/

 

『こいびとのみつけかた』 10月27日(金)公開
『まともじゃないのは君も一緒』監督 前田弘二× 脚本 高田亮が贈る〈おかしな二人の物語〉第二弾。
世の中に馴染めない、ちょっぴりエキセントリックな2人が繰り広げる、〈可笑しくピュア〉なラブストーリー。

監督:前田弘二  脚本:高田亮
出演:倉悠貴 芋生悠
企画・製作・配給:ジョーカーフィルムズ
http://koimitsu.com/

 

【Back number】
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