プロが見たこの映画
映像制作のプロが語る「映画館の近くに住んでみたけれども...」/小松原茂幸(映像ディレクター)
小松原茂幸(映像ディレクター)
未曾有の震災から始まり、政権が変わり、自国でのオリンピック開催が決まり、その擦った揉んだがあり、そして改元で締めるという、まさに激動の2010年代も残す所あと10日となった。こと映画の話となると、自分に贅沢な無駄知識を存分に与えて人生を大いに狂わし、と同時に豊穣にさせてくれた雑誌「映画秘宝」の休刊のお知らせがいきなり飛び込んできて驚いていたところ、一方新しい映画メディア「KIQ REPORT」が誕生したとのこと。
このメディアでは「【映画館に行く】というライフスタイルを持つ人を【映画ファン】と定義付け」るらしい。
果たして自分はどうなのか?と少し考えてみた。
自分は新宿に住んでいる。このエリアにはシネコン・ミニシアター合わせて9つの映画館が存在していて2022年には歌舞伎町ミラノ座跡地に10館目の巨大映画館が誕生する日本でもトップクラスのムービーシアタータウンでもある。この街に居を移して10年、そもそも何故この地に越してきたかというと、いろんな理由があるにはあるが「死ぬまでにしたい10のこと」(そんなリストを作ったことはないけど)の上位に「歩いて映画館に行ける場所に住みたい」というのがあったことは事実である。実際、この地にあるほとんどの映画館から徒歩10分圏内である。
頻度となると週に1度は行っているので年間50回前後、映画館に行っていることになる。この数が多いか少ないかは人によるとこだけど「ライフスタイル」とは正に生活習慣そのもので「映画館に行く」ことは自分にとって生活の一部になっていると言っても過言ではない。気になっていた映画をサッと見に行けるのはもちろんのこと、謎に早く目が覚めた時の「午前10時の映画祭」だったり、飲んだ帰りに寝る前の1本だったり。ありがたいことに毎晩深夜営業を行ってくれている映画館(新宿バルト9)もあるのだ。
周りに話を聞くと最近映画館で映画を観ることが少なくなった(もしくはなくなった)、という声は普通によく聞く。NETFLIXやAmazon Primeなどストリーミングサービスも充実して自宅で簡単に映画を観ることも出来る。「映画館で映画を観る素晴らしさ」をくどくど聞かされることほどめんどくさいものはないから敢えてここでは書かないけど、そもそもこれだけ娯楽の選択肢が増えた今、余暇を過ごすのにそれが全ての人にとって「映画」である必要は全くない。あと大事な点として自分がこの場所に住んでいなかったらこれほど映画館へ足を運んでいたかは、極度のめんどくさがりの自分としては正直わからない。つまり「ライフスタイル/生活習慣」に組み込まれていなければ人は、たとえ好きであったとしても遠のいてしまうのではないか、ということを考えてしまう。
今でこそ映画館で映画を観るハードルは自宅で映画を観るそれと、自分にとっては大して変わりはないけど、この先も「映画」は観続けるとは思うけど「映画館」へ通うか、このメディアが定義する「映画ファン」であり続けられるのかは、全くわからない。
そんなどうでもいいことをグダグダ思いながら「スター・ウォーズ」サーガの終わりを見届けるために(現在12月19日23時。最速前夜祭上映まであと1時間。武者震いしながらキーパンチしている。)今夜も映画館へと足を運ぶことになるんだけれども...。
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