プロが見たこの映画
ファッションのプロが語る「映画は映像でみるファッション誌」
元アパレル店員の私は、映画をファッション誌のように鑑賞してきた。
そして、アパレル業界には想像以上に映画好きがいて、皆同じように「『バッファロー’66』のヴィンセント・ギャロのスタイリングがかっこいい」や「『トレインスポッティング』のユアン・マクレガーがイケてるからコンバースとスキニーを履いてる」など、映画から影響を受けて服を着ている人達が多いのだ。
アパレル業界の映画LOVERと話していると必ずと言っていいほど名前が挙がるのが、ジム・ジャームッシュ監督とウォン・カーウァイ監督の作品。どちらも語り尽くしたいので今回はジム・ジャームッシュ監督にスポットを当てることにする。
ジム・ジャームッシュ監督といえばお洒落映画の金字塔だが、ポスタービジュアルだけでも目にしたことがある方も多そうな『ミステリー・トレイン』(1989年公開)は最高にファッションを学べる映画だと思う。
この作品は3部作で構成されており、第1部の「FAR FROM YOKOHAMA」で文字通り横浜からメンフィスへ訪れる日本人カップルが描かれている。この2人がポスタービジュアルにも使用されている永瀬正敏演じるジュンと工藤夕貴演じるミツコ。そして、服好きを唸らせるスタイリングや描写がそこかしこに散りばめられている。
メンフィスに訪れた理由はこのカップルが「エルヴィス・プレスリー」の大ファンだからであり、ジュンはリーゼントで足元はラバーソール、緑色のジャケットにインナーはボーダーモチーフの開襟シャツ。そして耳にはタバコを挟んでいるわけで。これはもう「最高」の一言に尽きるのだ。
このジュンのスタイリングがどれだけの服好きに影響を与えたかというと、映画からインスピレーションを受けてコレクションを発表している「DAIRIKU」というブランドがあるのだが、今期22SS(2022年春夏)のコレクションはまさに本作『ミステリー・トレイン』を取り上げているほどの影響力。
そして、私が初めてこの作品を観た時に付き合っていたあの人は、ライターではなくzippoを使い始めたり、耳にタバコを挟み始めたりした(あれはめちゃくちゃダサかったが)。私が好んでジャケットを着ているのは紛れもなく『ミステリー・トレイン』の影響であり、”服好き“が”映画好き”になるきっかけにもなっている。
ストーリーや音楽だけでなく、登場人物の服にも注力して作品を鑑賞するのをオススメする。きっと自分の好きなスタイルが見つかるはずだ。
映画ファッションマニア つみき
『ミステリー・トレイン』(1989)
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:永瀬正敏、工藤夕貴、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスほか
配給:フランス映画社
(C)Mystery Train, INC. 1989
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